第404話 何でも教えてあげましょう伝説
無事にデビューイベントを終えたスファトリーさん。
この世界には慣れてなくて、雑談なんかはハードルが高いよねーということで、私が色々プロデュースすることにしたのだった。
そんな裏方作業の模様は動画にしてアップしております。
あんまり配信できない分、これを見て楽しんでおくれー。
「はづき師匠、これはなんじゃ? 質問が入ってくるところなのかや?」
「そうそう、いろいろなのがたくさん出てきて、これはイカルガで設立してるゴボウボックスというやつでね」
「ゴボウ!!」
スファトリーさんが身構える。
なんだなんだ。
「ああ、いや、うちの一族はゴボウが苦手で……」
「そうだったんだー。では私の配信を見たら大変なのでは……?」
「そう言えば、はづき師匠の配信は見ておらんな」
私の配信を回避しながら他の人のを見てたのはすごい。
どういう確率なんだ……!
「それで、ゴボウボックスとやらの質問にわらわが答える配信をすると?」
「そういうことー。こっちの世界の経験が少ないと、自分から話題を振って広げるの大変でしょ。だからリスナーさんからたくさん質問を投げてもらって、これに答えていく感じでー」
私はホイホイホイっと質問を選り分けていった。
おほー、明らかにセクハラみたいなのがあるぞ!
私以外にはこういうのは良くないからね!
というか、あんなカワイイマスコットになんでセクハラみたいな質問ができるんだろう。
訓練されすぎている。
「ありがたいのじゃ! 持つべきものは師匠だのう」
「うんうん。まっかせて」
今回の作業は、スファトリーさんの住まいであるホテルでやっております。
まあまあいい部屋なので、防音がちゃんとしてるんだよね。
上の階にはウォンさんが住んでて、日々配信者の動画を見てダラダラ暮らしている。
「時にスファトリーさん、リスナーネームは決めた?」
「眷属たちにしたのじゃ」
「おー、いいんじゃないですかいいんじゃないですか。じゃあ眷属さんたちに質問もらっちゃいましょー。あと、ここでサムネの作り方を教えますんで」
「ふむふむ」
今回は贅沢に、ルームサービスでお料理を頼む。
カレーにしよう。
「師匠、あえてにおいの強いものを選ぶとは……!」
「カレー試したんだ?」
「試した。美味しかった。この世界の食べ物は危険すぎる」
「ねー」
結局二人でカレーにして、カレーを食べながら配信サムネイルについての話をする。
「ホテルのカレー美味しい」
「常に同じ味で出てくるのじゃ。クオリティが高い!」
「ホテルカレー売ってるから、レトルトで用意してあるんだろうねー。美味しい~」
いかーん!
カレーの話しかしてないじゃん!
「師匠、カレー食べてる時に仕事の話は無理だ」
「そうかも……。食べるのに集中しよう……!」
ってことで食べたよ!
「ほんじゃあ、仕事の話をしていきますけど、イラストは描ける? 描けない? おっけーです。むしろ美味しいです。マスコットだと、いろんな人達がイラスト描いてくれるんで……」
「ふむふむ、なるほど、わらわのアバターなら、むしろ描いてもらう方がいいと」
そうなのだ。
マスコットキャラは保護欲を誘うので、リスナーさんたちも喜んで描いてくれる。
それをバンバン使わせてもらうことで、ファンサービスにもなるんですよねー。
みんなのモチベも上がるし。
「ツブヤキックス廃人になるつもりで、バンバンいいねとかしていいですよー。でも、返信しまくると制限かかるから……」
「師匠が詳しい」
「私も制限掛かったことありますからね!」
何でも教えたげるよ!
その後、練習をした後で始まった質問配信。
「サイクラノーシュよりごきげんよう~! スファトリーじゃー!!」
※『ごきげにょー!』『ごきげんよう~!』『今日もかわいい』
「今日は皆の質問に答えていくのじゃ。まずこちら……」
『スファトリーさんの出身地はサイクラノーシュ……土星だという話ですが、あそこはガス惑星で生物が住めないはずです。どうやって暮らしているのか教えて下さい』
「なるほど、これはじゃな。サイクラノーシュは門なのじゃ。わらわたち一族はその門を通じてこちらの世界にやって来た。この宇宙がエーテルに満たされたからこそ、わらわたちはこのゴボウアースに降り立つことができたということじゃ」
おおーっ、思った以上に細かな返答が!
設定作り込んでるねー。
うちの弟子はすごいかも知れない。
好きなものはゴボウアースのお料理全般、今はゴボウアースの常識を勉強中。
ポジション的には、サイクラノーシュから来た侵略者。
侵略に有利な状況を作るため、人間を知り、人間たちを眷属化して行くために配信をしているのだ!
新しい設定だなあ。
『スファちゃん、なんでダンジョン配信してモンスターとか侵略者と戦うの?』
「それはじゃな、ひとまとめに侵略者と言っても、わらわたちの一族と他の連中は利益相反なのだ。ライバルは少ないほうがいい!」
なるほどー。
納得!
こうして、大変解像度の高い侵略者ロールをしながら、質問配信は好評のうちに終わったのだった。
※『姫、ぶっちゃけるなあ』『でもゴボウアースの民は理解度が高くていいな』『ダンジョンで攻撃しないで正面から行けば良かったのでは?』
スファトリーさんの身内みたいなひとがちょこちょこ出てくるなあ。
でも彼女、凄く個性のある配信者に育っていきそうで、私は楽しみなのです。
「どうじゃった師匠? こんな感じでいいのかや?」
「良かった良かった! 才能あるよスファトリーさん! あ、ウォンさんがスパチャ代わりに中華奢ってくれるって! 屋上のレストラン行こう行こう」
「中華大好きなのじゃー!」
こうして私たちは、配信後の打ち上げに向かうのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます