第403話 リスナーは大魔将一族!?伝説
ついに始まった、スファトリーさんのデビューイベント。
すごい速度で計画が進んだね。
マスコット枠というイカルガエンタ初の試みなので、これにはうちの全配信者が協力しているのだ。
スファトリーさんも、すっかり他の配信者たちと顔見知りになった。
なお、バングラッド氏は、
『なんだ! お主もこっちに来たのか! いやはや、イカルガの体制は盤石だな! 更に面白くなるぞ!』
と訳知り顔で豪快に笑い。
ウェスパース氏は、
『なんともはや……。はづき氏の人脈と運命力には舌を巻く他無いわい。まさかこやつらをうちに引き込んでしまうとは。なに? まだ引き込まれてない? そんなもん、時間の問題じゃ』
やっぱり訳知り顔でなんか言ってる!
私が聞いても、二人ともはぐらかすので結局何も分からなかったよ!
初配信日の広報の後、スファトリーさんのチャンネルが開設された。
あっという間に三万人くらい登録者がついたんだけど。
これはすごい。
そして初配信スタート。
私は番組のプロデューサー枠、アシスタントとしてベルっちがちょこちょこ出ていってお手伝いします。
「サイクラノーシュよりごきげんよう! わらわの名はスファトリー! 今日デビューした配信者じゃ! よろしく頼むぞ皆の衆」
※『わらわ系マスコットだ!』『ごきげんよう!』『ごきげにょー』『ピコピコ動いててかわいい』『羽がトンボみたいだ』
おお、好感触。
まあ姿はツブヤキックスで発表してたから、みんな慣れたものだと思うんだけど。
私と並ぶと、スネまでくらいのサイズしかないので小さくてかわいい。
そのかわいさも、存分に画面の向こうにお届けできているようです。
※『いいぞ姫様!』『いつもの凛々しいお姿とは違ってこれもいいな!』『あばたーとやら言う技術だっけ?』『ゴボウアースも侮れんなあ!』
あっ!
なんかスファトリーさんの身内の人もたくさん来てる!!
凄く異世界人っぽいコメントだなあ。
これを見てスファトリーさん、
「中の人に触れるコメントは止めるのじゃ! わらわはこのこじんまりとしたスファトリーであり、中の人などおらぬ!」
※『ですよねー』『どういうことだってばよ』『配信者界にはお約束があってな、中の人には触れない』『なるほどー』
サラッと、コメント欄で地球の人と異世界人が交流しているなあ……。
他では見られない光景だ。
その後、スファトリーさんの自己紹介の際、パネルを持ってベルっちが後ろに現れた。
ワーッとコメントが沸く。
で、ベルっちはニコニコしながら画面に手を振って、パネルをめくった。
「あ、今回のアシスタントはわらわの師匠の分身にやってもらうのじゃ! よろしくなのじゃー」
『よろしくぅ~』
このやり取りを見てると、ベルっちは私よりちょっとだけ陽寄りな気がするね!
スファトリーさんが私の弟子だと判明したら、コメント欄がうおーっとどよめく。
※『はづきっちの正式な弟子!』『はぎゅうちゃんも弟子だったが、あくまで先輩と後輩とかコーチと生徒とかみたいだったもんな』『ビッグな後ろ盾がいる超大型新人だぜ』『それ以外にも色々ビッグだぞ姫様は』
スファトリーさんのご親族が後方腕組みしてますねえ。
あんまりやるとマナー違反になるので、私はスーッとコメント欄に入り込んだ。
『中の人の事情はマナー違反なのでおやめくださあい』
※『はづきっちだ!』『ウグワー! 衝撃が! わ、わかりました』『分からせられとる』『この分からせは羨ましい』さといも『私も分からせに来て~』『さといもちゃんおるやん!!』
いつの間にさといもさんまで!
なお、マスコット枠にはいつものセンシティブ勢がいない。
いや、センシティブ勢として見知った名前の人はいるんだけど、みんな良識的なコメントばかりしてる。
やっぱり可愛さは正義なんだね。
私もマスコットになった方がいいのではないか?
その場合はなんだろう。ブタさんかなあ……。
そんな事を考えていたら、スファトリーさんがベルっちを伴ってダンジョンに突撃するところだった。
「そなたら人間は、ライブカメラが激しく動くと酔ってしまうらしいのう? なので、わらわの視界をジャックする感じの配信はせぬぞ! ベルっち殿に撮影してもらうので見ているのじゃー! それーっ!!」
本日のダンジョンは、町中にある人工スキー場。
そこが丸ごとダンジョン化してしまったので、この変わった形のドームの中を冒険するのだ。
雪の中から、次々に氷のゴーレムみたいなのとか、雪男みたいなのが飛び出してくる。
スファトリーさんはこれに向かってもの凄い速度で飛ぶ。
ジグザグに飛び、触れた端からモンスターを蹴っ飛ばし、殴り飛ばし、大暴れしている。
うーん、フィジカル系!!
魔法とかも使える人なんだけど、空を飛ぶとフィジカル系の方が楽なんですって。
※『姫様、肉弾戦あんなに強かったっけ!?』『明らかにパワーアップしてる!』『これがゴボウアースの……。なるほどなあ』
ご親族もびっくり。
それはですねー、私がマンツーマンでやり方を教えてあります。
スファトリーさんは人間じゃないぶん、素が強い。
なので、その素のパワーを活かす方法を考えたのだ。
それが勢い任せのジグザグ突撃!
魔法は足止めして戦う人のスタイルなのだ!
「どうなのじゃー! 今からそっちに戻るのじゃー! 見える範囲のはあらかたやっつけたのじゃー!」
遠くでぴょんぴょん飛び跳ねるスファトリーさん。
この姿が可愛いので、コメント欄に『あまりにもかわいい』『かわいすぎる』『かわいい~』などの文言が溢れた。
マスコットはやっぱり外見力が強いなあ!
こうして、大盛況のうちにスファトリーさんの初配信は終わった。
後日、オマケ映像として彼女がマスコット姿のままスキーで滑る動画がアップされる予定。
これもかわいいぞ、震えて待て。
「やっぱりお前、裏方もいけるな……」
なんか兄が感心しているのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます