第395話 ベルっちレッスン伝説
火の大魔将をやっつけたからか、今のところの世の中は小康状態。
いつものペースでダンジョンは発生するけど、なんと2月度の被害はほぼゼロです!
配信者のみんなが頑張ってくれてて、私の出番はないみたい。
ってことで、今月はイベントのゲスト参加と雑談枠メインでお送りしております。
「私はあちこち仕事が多くなってきてですねー。今月はダンジョン配信の暇がなさそう」
※『すごい』『売れっ子!』『はづきっちは世界一有名な配信者になりつつあるからね……!』『昨日の企業案件見た! ダンジョンに巻き込まれても食べられる携帯食』
「あれねー! 携帯食、思ったよりも美味しくてびっくりだったよねえ。お値段はしちゃうけど、万一の備えでちょっと家に備蓄したほうがいいかも……えっ? 昨夜の案件配信でサーバーが落ちてから受注生産に入った?」
※『企業の動きに大きな影響を与える女』『そりゃ、世界中から注文来てるだろうからなw』『はづきっちの企業案件はヤバいぞ……!』『工場を確保してから案件を発注するんだ!』
そんなこんなで、わちゃわちゃ雑談をしているわけです。
で、喋っているだけではなく。
私の手元は常に動いて、ペンタブでイラストを描いている。
※『さといもちゃんのイラストじゃん』『公式絵師がファンアート描くんかw』『常に何か仕事してるなこの子w』
「いやあ、趣味の絵でして。こうやってのんびり雑談だけしてると、手持ち無沙汰になるんで手先だけでも動かしてるわけですねえ」
※『すごい速度でレイヤーを行ったり来たりして線画を修正してる』『ガチじゃん』『口先と指先が分離して動いてるのか!?』『ベルっちが担当してるとか』
「あっ、ベルっちはですね、別の案件の準備のためにずーっと出てます。ルンテさんが今はベルっちにつきっきりでサポートしてくれてますねー。カナンさんは一週間のんびりお休み期間なんで」
カナンさんは、都内のスーパー銭湯めぐりをしているのだ。
エルフの人達を誘って、お風呂の後は一緒に宴会みたいなことをしたり。
地球にいるエルフは自由なのだ……!!
で、ベルっちが行っているのはフォーガイズの人達のイベント準備。
ダンスレッスンとかしてるんですねえ。
私が学校と配信を担当。
お互いに忙しい!
合体すると経験を共有できるのが、これほどありがたいと思ったことはない。
配信が終わった頃にベルっちが帰ってきた。
『はづきー、ちょっとお仕事を詰めすぎたかも!』
「あ、そうかもー。3月はセーブしよう」
『そうしようそうしよう』
そういうことになった。
合体すると、本日の経験が統合され、全身に力と疲れが漲るぞ!
ということでお風呂に入りますね。
「あああ~、疲れが取れる~」
『お夜食欲しいんだけど』
「ダンスはカロリー使うもんねー。じゃあ消化にいいやつを……。にゅうめんを茹でよう」
『やったー!』
一人で会話しているのだ!
Aフォンを使い、お風呂で動画を見ながらエンジョイする。
そうしていると、いきなりメールが来た。
なにっ!
今さっきツブヤキックスに放流したファンアートを、さといもさんが配信のサムネイルに使わせてくれないかだと!?
いいですともいいですとも。
すぐにOKを出した。
マイ・ドーターのお願いなら聞いてあげちゃう。
「それにしても、フォーガイズの人達の仕上がりはなかなかだったねー」
『ははは、私たちのレベルが低いのでみんなすごく見える』
「それはあるー」
『まあ今日はにゅうめん食べて、本番は週末の私たちに任せよう……』
「そうしようそうしよう」
そういうことになった。
パジャマを着て、頭にはタオルを巻いてですね。
じっくり髪をいたわりつつ、お風呂上がりの麦茶を飲んで、にゅうめんを茹で始めるわけです。
そこで父が帰宅。
遅いお帰りでお疲れ様ということで、父の分のにゅうめんも作った。
「仕事で疲れて帰ってきたら、かわいい娘が料理を用意して待っているなんて……。幸せだなあ……」
なんかじーんとしている。
なお、母は私と交代でお風呂。
すぐに戻ってきて、きっとにゅうめんを食べると思う。
「それで、無理してないか? たくさん仕事を抱え込んでいるようで、俺は心配してるんだ」
「あー、そこはほどほどに……。さすがに来月は年度末だし、仕事の量は抑えるつもり」
「そうか……。世の中はお前に期待してると思うが、お前は父さんにとってはたった一人の娘なんだ。いつも心配しているからな。無理はしないでくれよ」
「はーい!」
息子もいると思うんですが、うちの両親、兄に関しては放任主義なんだよね。
自由にさせておくからあんなフリーダムな経営者になってしまった!
あの人こそ、むちゃくちゃをやってると思うんだけどなあ。
「お前がロケットに乗って宇宙に飛び出した時には、もう、心配で胸が張り裂けるかと……! あまりホイホイと宇宙に飛び出したらいけないぞ」
「はぁい! あれはうっかりしてました……」
まあ私も大概むちゃくちゃか!!
父はくたびれて色々ダウナーになってるっぽいので、色々話を聞いてあげたのだった。
うちの家族で唯一の常識人なので、ストレスはきっとすごいでしょう……!
兄が配信者になると言った時、一番反対したのもこの人だったし。
で、半分勘当みたいな状態になって兄が出ていったけど、そんな兄の配信をアーカイブででも一度も見逃さなかったのもこの人なのだ。
子供への愛情が深いー。
「あら、お帰りなさい! 今日は遅かったのねえ。にゅうめん作ってもらったの? 私ももらおうかなー」
るんるんと母が出てきて、お風呂上がりの冷たい麦茶と一緒ににゅうめんを食べ始めた。
この人こそ、子供がどんなルートを希望してもどしんと構えて見守るタイプなんで、普通に考えると普通ではないのかも知れない……。
よし、3月は親孝行期間とし、配信者としてはほどほどくらいにしか動かないことにします。
私はAフォンの予定表にそう書き込むのだった。
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