第394話 さといもさん、お披露目無事終了伝説

 素の身体能力だけを考えると、スレイヤーVさんが圧勝する。

 不条理なゲームにすると、なんか私が圧勝する。

 なので今回は、さといもさんに有利なゲームが選択されたのだ!


 それは……スーパーオクノパーティ!!

 これは多摩川オクノと愉快な仲間たちを描いた、スーパーピコーン!ファイターズシリーズに燦然と輝くパーティゲーム。

 ミニゲームの集合体みたいなやつ。


 基本はすごろくで、特定のコマに止まるとミニゲームが発生する!

 私達はこのゲームに挑んだ。


 なるほど、これだともう、出目が良い私はミニゲームで負け、スレイヤーVさんの身体能力も一部ミニゲームでは通用しない……。

 とてもフェアなバトルなのだ!


 スレイヤーVさんが邪神メイオーを選択、私は村娘ルリア、さといもさんは作品のメインヒロインであるラムハを選んだ。

 ゲームスタート!


 ダイス目のいい私が好調に進み、ピコーン!コインを稼ぐ。

 だけど、あちこちでミニゲーム時空に引きずり込まれ、フルボッコにされるのだ!


「あひー!? ミニゲームはこりごりだー!」


「ママの弱点を的確に突くとは……やるな!」


「そりゃあもう! 私もはづきちゃんとの付き合いは長いですし!」


 一時間ほどわちゃわちゃゲームをした。

 優勝は見事、さといもさん。


 私とスレイヤーVさんが団子になり、僅差で私が二位だった。


 いやあ、パーティゲームって恐ろしいものですねえ。


「これはアバターを被ってやる必要があったのだろうか?」


※『スレイヤーVが禁断の質問を……!!』『野中……いやさといもちゃんはまだバーチャル慣れてないからw』『これからに期待』


 なるほどー!

 それで普通のゲームだったんですねえ。


 そしてイベントはクライマックスの、さといもさんオンステージ!

 私も一曲だけご一緒しました。

 そう、虎になれのやつ。


 私は日々大変忙しく、さすがにダンスの練習は間に合わない……!!

 なので、今回はベルっちにお願いした。


 私が動画編集やら他の仕事やらをやってる間、ダンジョン配信しながらダンス練習してもらったのだ!


 経験値は私とベルっちに共有されてるけど、やはりちゃんと踊ってた人がやるべきだからね……!!


 おうおう、歌って踊っている……。

 自分が二人いると楽ですねえ……。


※『カメラが時々、舞台袖でぼーっと椅子に座ってるはづきっちを映してるんだがw』『映ってるよ!』


 な、なんだとー!!

 私はあわてて営業スマイルを作って手を振った。


「君は忙しいからな。だが学生である以上、学業が本分。無理をせず、いざとなれば大人を頼ってほしい。その分、緊急事態には我々も君を頼らせてもらうからな」


「あ、ありがとうございます~! とても頼もしいお言葉」


 最近ずっとちゃらんぽらんな感じだったけど、やはりスレイヤーVさんは元迷宮省長官なんだなあ。

 だが私、泳ぐのを止めると死ぬマグロみたいな生き方なので……!


「おっと、俺の出番か。行ってきます」


「いってらっしゃーい」


 スレイヤーVさんがステージに立ち、ベルっちが戻ってきた。


『はづきずるいー!』


「むほほ、役割分担というやつですよ」


『後で甘いものを私に食べさせるように!』


「よかろうです。最初のひとくちを与えましょう……」


 これで魔王との交渉は成立。

 私は我が子二人のステージを見守るのだ。


 うおー、私の作ったアバターを被った二人が歌って踊る。

 不思議な光景だ……。


 ママ冥利に尽きる……。


 そして最後は、野中さとなさんの持ち歌でも、有名なヒット曲をみんなで歌ってお別れとなった。

 配信は大盛況!

 同接が二万くらい行ったわね。


 すべて終わったら、野中さんがスコーンとぶっ倒れた。


「つ……疲れたあ……!! アバター被って動くって普段と感じが全然違うんだもの!」


「でしょー。ガワに引っ張られるんですよね。なんていうか……アバターが同接のパワーを受け止めて増幅してるみたいな」


「ああ。アバターとは偶像だ。同接数は人の祈りの数。それを人の身では受け止めきれない。だから、虚像によってこれを包み込み、人を超えた存在へと昇華するのが冒険配信者なんだ」


「「おお~!」」


 私と野中さんで大変感心した。

 スレイヤーVさんが最後に、「……という研究結果を現役長官時代に報告されてね」と続ける。

 おちゃめな人だ!


 でも、そうなんだなあ。

 冒険配信者を応援するというのは、神様に祈るようなもので。

 たくさん祈りを集めた神様が強くなって、人に災いをもたらすダンジョンをやっつけると。


 冒険配信はそういうシステムなのだ。


 で、アバターを被るとそのへんのシステムに組み込まれるんで、野中さんはクタクタになったわけですねえ。


「はづきちゃん、どうやれば疲れなくなる……?」


「基本的に疲れます! なので体を鍛えるしか!」


「やっぱりかあ」


 配信に近道なし、なのだ!

 才能がある人でも、体が弱いと続けられなくて休止とか引退が多いし。


 私もなんだかんだ、体力も腕力もなかったけど、配信続けて鍛えていったらよく分からないことになったし。

 そうそう、同接パワーで身体能力ブーストされるし、日常でも効果あるよね!


 これは普段から私のことを考えている人が多いほど顕著になるみたい。

 面白い……。


「えー、では、私は次の仕事が待っていますので……!」


「うん! はづきちゃんありがとう! お疲れ様ー!!」


「お疲れ様。無理をしないようにな、ママ」


「はーいー! ではでは!」


 ……あれ?

 次の現場でもスレイヤーVさんは一緒なのでは?


 フォーガイズのステージだぞ?

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