第393話 アバターお披露目ママ満足伝説
野中さんのイベントの準備も終わり、私は学校から帰ってすぐにスタンバイ。
レンタルスタジオでのオフコラボなのであります。
私が制服姿で「こ、こんにちはー」と入ってくると、初めて見るスタッフさんが不思議そうな顔をした。
「どうしてここに高校生が……?」
「あっ、すみませんすみません。私です」
パッとアバターを被る。
そうしたらスタッフさんが一瞬硬直した後、目と鼻の穴と口をガーッと開いて、「は、は、は、はづきっちー!!」と叫んで腰を抜かした。
もしやお前らなのでは……?
「こ、こんきらー」
「こんきらー!! うおおおおお! 本物!! いや、イベントだから本物が来るのは分かってたんですけど、スミマセン、シツレイをしてしまって……!! どうぞ! はづきっち、どうぞ! きら星はづきさん入りまーす!!」
「う、うわーっ、そんな大声でえ」
スタジオにどよめき走る……!!
今回は十人くらいのスタッフさんを使ってやるイベントで、個人のデビューとしてはかなり大きい規模なんじゃ?
馴染みのあるスタッフさん以外に、七人くらいが初対面で、みんな私を見て興奮している。
なんだなんだ……!
落ち着いてくれ!
「私はどこにでもいる普通のひとなのでそこまで騒ぐほどではありません……」
「このありえない謙遜!」
「自分の偉大さを全く分かってない物言い!」
「ほ、本物のはづきっちだ! 偽物では出せない味!!」
あひー!!
なんだこの人達ー!!
「やあママ。これは仕方がないことだよ。君の人気は世界規模なんだ。石を投げたら君のファンに当たる」
「マイ・サン!」
現在のスレイヤーVさんは大京さんの姿ですねえ。
彼はママ繋がりで、今回はお祝いに駆けつけています。
奥で精神集中していた野中さんも、バタバタ走って駆けつけてきた。
「うわおー! 待ってたよはづきちゃーん!! もうね、緊張して大変なことに……! 本番はいつも緊張するからねえ……ハグさせていただいても」
「あっあっ、どうぞどうぞ」
野中さんが私に抱きついて、なんか目がイッちゃってるんですが。
まあ、すっかり緊張はほぐれたみたい。
「じゃあ段取りどおりにそろそろ……」
スタッフさんが言うと、野中さんが急にキリッとして頷いた。
イベントが始まる~!
生身のまま登場した野中さんが、「実は私にはもう一つの姿が~!」と言いながらくるくるっと回ると、アバターに早変わりする。
おおーっ、私の描いたアバター、画面映えもバッチリ。
これ、おこのみにも手伝ってもらったんだよね。
※『うおおおおおおお』『野中さんかわいい!』『あれ? このタッチどこかで見たことが……!?』
私だ!!
なお、私の最初期のアバターも私製なので、あの頃のと比べてもらうと成長の跡がうかがえると思う。
エメラクさんの画風を学び、レベルアップしたのだ!
今の私のアバターはエメラクさん謹製です。
彼も今や、もの凄い人気絵師になっておられますねえ。
その中でも、精力的に私の新衣装を発表しているのはさすが。
今度フィギュアになる私の宇宙服衣装も、エメラクさんがすごい速度で描き下ろしていたのだった。
なので……。
今や私の絵は、他の配信者さんのために存在するものになっているのだ!
「こんにちはー! 月読さといもでーす!」
おおーっ!
彼女がやってるインターネット、ラジオマンデイをぶっ飛ばせ! から月、声優さんという職業から読、そしてさとなさんの名前と……いも……?
なぜに、いも?
謎だ……。
私が首をひねっていると、なぜか野中さん改め、さといもさんがウインクしてくるのだった。
これ、リスナーさんからするとスクショタイムだ! となるみたいで。
コメントは大いに盛り上がっている。
その後、さといもさんの歌が始まった。
一曲歌い、その次は野中さんの同僚の声優さんがワイプで出てきて、解説役。
ミニゲームが始まる……。
ここで私とスレイヤーVさんが素知らぬ顔で登場するのだ!
まるで通りかかりましたー、みたいな感じで。
「あれっ!? 背景に見覚えのある人が……! あっ、あなたはどこか私と似たタッチのアバター……! スレイヤーVさん!」
「さといもさん、アバターデビューおめでとうございます! 同じママを持つ配信者として、お祝いに参りました!」
「ということは……あなたは、私の兄さん……!?」
「妹よ……!」
なんだこの小芝居!!
私が出づらくなって、画面の端に突っ立っていると、当然のようにリスナーさんが気付く。
※『画面端ではづきっち見切れてるって!』『ピンクのジャージめっちゃ目立つのよw!!』『はづきっちー!!』
「皆さん、目ざとい! そうです! 私とスレイヤーVさんのアバターを作ってくださったママであり、この間も世界を救った英雄! さらに1月度世界トップセールスの歌手である彼女! きら星はづきちゃんに来てもらってます!」
うおおおおーっと爆発するコメント欄。
私はペコペコしながら出てきた。
「あっあっ、どうも、どうも……! きら星はづきと申します。あ、こんきらー!」
※『こんきらー!』『こんきらー!!』『こんきらーっ!』
「皆さん大変元気なご様子で……」
「ママは緊張すると腰が低くなるんだ」
「そうねえ。でもそこがはづきちゃんのいいところだわ」
年上の息子と娘に挟まれてますよ!!
で、そんな私達が参加するミニゲームがスタートするのだった。
もう大変な混乱の予感しかしない!
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