年度末私のイベントもりもり編

第392話 野中さんアバター伝説

 火の大魔将関連も無事に終わった。

 なんか影が薄い人だったね?

 そういう話を雑談枠でやったら、お前らからめちゃくちゃ突っ込まれたのだった。


 な、なぜだー。


 そして何事もなく一週間くらい過ぎて2月。

 野中さんのアバターを納品したので、お披露目前の最終チェックということになった。


 私が向かったのは、都内にあるレンタルスタジオ。

 野中さん、あくまで個人勢として配信するそうだけど、最終チェックはひと目につかないところでやらないとね。


「ようこそはづきちゃーん!!」


 到着したら、野中さんがビューンと飛んできてハグをかましてきた!


「あひー!? きょ、強烈な歓迎!!」


 体幹パワーでガッチリキャッチしたけど、私でなければ危なかった!

 野中さん、すでにテンションマックスです。


 なんかバッチリメイクも決めててやる気に満ちてません?


「だって、はづきちゃんに久しぶりに直接会えるんだもん! めっちゃおしゃれして来ちゃった」


 どう? どう? とかお高そうなベージュのニットを見せてくる。

 うーん、スタイリッシュ!

 声優さんは顔出しも多いし、個人チャンネルで雑談もしたりするもんね。

 アバターを被らない分、服装にも気を使うのか……。


 大変だあ。

 私にはとてもできないなあ!


「うおー! 世界を救ってすごく遠くに行ってしまったなーという感じがしてたけど、こうやってハグしてみるといつものはづきちゃんだなーと!」


「わ、私は変わりませーん!」


 基本的に私はそのままです……!

 人間はそうそう変わらないものなのです。


「大きな事を成し遂げたり環境が変わっちゃったりすると、人って簡単に変化しちゃうからね。はづきちゃんはあんまり変わってなくて本当に凄いなあ……。そしてかわいい」


「ど、どうもどうも、恐縮です……!」


 やたらナデナデしてくるんですが。

 で、野中さんと一緒にスタジオの機器にゴー!


 スタッフさんがおられる。

 個人チャンネルだけど、機械をいじる関連の人を雇ったりしてるんだそうで。

 なるほどなるほど。


「こ、こちらがきら星はづきさんですか!? あ、あ、よろしくお願いします! 私、はづきさんをツブヤキックスでフォローしてるんですけど。がまラッチョという名前で」


「あっあっ、どうもどうも、きら星はづきをやらせてもらってます……。あ、あ、こ、これ、修正掛けたアバターで」


「あーっ、これはこれはどうもどうも……! 本当にあのきら星はづきさんがアバター作ってるんですね……。えっ!? 一人で配信からアバター作りまで全部やってらっしゃる……?」


「はっ、一人というか分裂できるんですが、ベルっちの方は冒険専門なんで」


 同じ私なんだけど、PC関係は弱めなのよね、ベルっち。

 デーモン要素が強いからかも知れない。


「ベルっちに冒険の方をやってもらって、私が編集とか他のお仕事とかやっててですねー。あ、こことここ修正しまして」


「なるほどです……あっ、これは凄い。細かいところまで気が行き届いて」


「マイ・サンで色々データが得られましたんで」


「あー、スレイヤーVさん!」


「ちょっとー!」


 がまラッチョさんとずっと喋っているので、野中さんが間にぎゅうぎゅう入ってきた。

 うわーっ、狭いところにー!


「はづきちゃん私ともお喋りしよう!」


「あっはい」


「おおーっ、表情が細かくなってる! 私の顔と連動してるし。被ってみていい?」


「どうぞどうぞ……! かなりアバターのクオリティも上がったので! この技術の8割位はマイ・サンの動きから得たフィードバックで」


「元長官が私の兄なのね……。ふ、フクザツな気分だわ」


 ですねえー。

 

 ご用意しました野中さんのアバターは、王道のアイドルっぽいやつ。

 茶色のふわっふわな髪で、やはり昔のアイドルっぽい白とブルーのフクザツなドレス!

 彼女からの強い要望で、羽を付けてございます。


「これではづきちゃんとおそろいだねえ」


「ベルっちの方とお揃いだと思われます」


『私?』


 ベルっちが出てきた。

 そして野中さんに手招きされて、二人で並んでみる。


 あー、なるほどー。

 無意識だったけど、ベルっちを反転させたカラーになってるかも。

 あっ、野中さんが可愛いポーズを決めた!

 ベルっちが真似して鏡写しの可愛いポーズを!


 私よりも似てない?

 似てるよね?


「最高でしょこれ……! はづきちゃんありがとうー! 初配信のゲスト出演もよろしくお願いします……!」


「あっはい、こちらこそ! 後はそういうことはないと思うんですけど、一応アバターはその手にしているマイクとか、実際にはないアイテムでも現実に影響が出るのでモンスターが出ても安全なので」


「な、なるほどー……! 今はスカスカしてるけど」


「同接が増えると実体化します」


「そういうものだったんだ!!」


 だからバーチャルゴボウなんていうものがあるんですねえ。

 私は近日中にある、野中さんのアバター公開イベントに向けての打ち合わせなんかをするのだった。


 なお、彼女のボディタッチは私とベルっち、どっちを標的にすべきなのかずっと迷ってる感じだった。

 お触りはご遠慮くださいー!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る