第391話 地元へ一気に戻るよ伝説
『あなたのハートに……ジオシーカー!』
ザッコから声が聞こえたと思ったら、いきなり私の真横に矢印が出現して、そこへストンとDizさんが生えてきた。
「あひー!? とつぜん!!」
「はづきちゃん!? ……ということは……やった! ゼロシーカー!」
ゼロシーカーというのは、周りの風景を見てからその場所に目星をつけて降り立つゲーム、ジオシーカーにおいて、一発で目的の風景と同じ場所に到着したことを表すんだそうで。
つまり、Dizさんがここを突き止めて、一瞬でやって来たことになるのだ!
ジオシーカー、今は現代魔法の一つになってるけど、もともとはゲームでもあるんだよね。
※『ちょうど二窓してた!』『眷属との戦いが一段落したと思ったら、なんというフットワークw』『だいきち、さらにジオシーカーの腕を上げたな……』
「どうもどうもー。はづきちゃんのリスナーさんたち! あなたのハートにジオシーカー! ライブダンジョン所属、冒険する歌姫、Dizでーす! じゃあ、はづきちゃんを日本に連れて帰りますね~!」
「あー、お世話になります、お世話になります! ありがとうございます~。助かります~!」
『もう足を向けて寝られませんー。よろしくお願いします~』
※『はづきっちとベルっちがペコペコしてるw』『だいきち、さすがベテラン配信者の貫禄と言うかw』『これで日本に戻れて、たくさんご飯が食べられるね!』いももち『色々用意して待ってる!』『タイグルメは堪能しないのか!』
本当にね!
ありがたい。
Dizさんの現代魔法、ゼロシーカー。
その威力で、私達はまた一瞬で日本に戻ってきた。
あっ、ここはライブダンジョン事務所前!!
「一番身バレしないからね。我が家とかに降りたらもう大変だからー」
「あー、確かにー。じゃあじゃあ、私、ここで失礼します。このお礼は後ほど……」
「はいはーい! はづきちゃん、コンサート素敵だったよー。私も負けないからね!」
優しい陽のオーラを感じる……!
さすがライブダンジョン一の清楚系にして癒し系配信者。
「あれっ、はづきちゃん? 本当に一緒に戻ってきたんだ! お疲れ様!」
風街さんもやって来た!
今は迷宮省から離れているとは言っても、元職員。
今回の件ではあちこち飛び回り、いざ事が起こったら歌を歌って全国にバフを届けていた人なのだ。
そうそう。
私の歌の後、強力な冒険配信者の歌声や音楽には他の配信者を強化する効果があることが分かった。
これをバフって言うんだけど、それ以来、歌が売りの配信者は新しい活動をするようになったんだよね。
ちょこちょこ歌枠があちこちで増えてて、これを流しながらの配信はOKということになった。
音楽系配信者の人の宣伝にもなるし、枠を持ってる人の安全も確保されるしね。
※たこやき『いきなりライブダンジョンの歌姫二人とコラボになってしまった。これ、切り抜くのに許可必要そうですねえ……』『切り抜き職人が困ってるw』『今や、はづきっちもイカルガの歌姫だからな!』『新曲待ってます!』
「あひー! 新曲は当分出ません!!」
私は必死に否定した。
ちなみにこの翌日、テンションが上がった作曲家さんが私の新曲を持ち込んできたそうです。
あひー! 私の発言をフラグにするのやめてください!
結局、私は二人とお喋りしながら電車でイカルガビルへ向かい、そこでお別れした。
先輩方は本当にいい人たちだあ。
最近はなんか、率先して前に立つようになったから、こうやって後輩っぽいムーブをするのは新鮮だなあ。
「じゃあ皆さん、ここで配信は終わりです! そろそろバーチャライズを解くのと、普通にご飯を食べるので……。おつきら~!」
※『おつきらー!』『おつきら!』『打ち上げから宇宙決戦、大気圏突入してからの突発コラボ!』『お腹いっぱいの配信だった』『今日も濃かったなー』
ふふふ、この後もフォーガイズとのコラボとか、野中さとなさんのアバターデビューが待ってますよ……!
我ながら生き急いでるんじゃないかってくらい、イベント目白押しなのだ。
最近はダンジョン配信もちょっと減ってきたなあ。
忙しくなってきたもんね。
おっと、ザッコにベストラフィングカンパニーさんから連絡が……。
な、なにぃーっ!
宇宙服はづきのフィギュアを出しませんかだってぇー!?
シアワセヤさんからも同じオファーが!
ま、マネージャーを通してください!
本社に帰った私は、用意されていた超大盛り焼きそばをもりもり食べた。
ルンテさんがすぐ前の席に座り、各メーカーと折衝をし始める。
宇宙服のポーズや表情を色々変えて、カラーやアタッチメントも変更して各社で出していく流れになったらしい。
なんということだ!
眼の前でみるみる仕事が増えていく。
「火の大魔将を片付けましたからねー。英雄であるはづきさんをあちこちで商品化するのは理に適ってると思います。あなたの似姿があるだけで、魔除けの力を発揮するわけだし」
「そこまでだいそれたものでも……。あー、疲れた体に焼きそばが染み渡る……。私の中のベルっちも喜んでおります」
「そうだねえ。ベルゼブブさんの扱いはなかなか困るところですけど。一応は魔の側の存在なので、あまり公で信仰するのも……。あっ、セットでプラモになる計画が進行中でしたっけ? じゃあいいのかあ……。色替えでベルっちフィギュアもOKです、と」
『あひー!? なんか勝手にOK出してない!?』
ベルっちが飛び出してきて抗議をし始めた。
ルンテさんが、ほほほ、と笑いながら受け流している。
強い。
こうして火の大魔将とロケット打ち上げに関わる話は一通りの決着を見た感じ。
私が今後打ち上げられることは多分なくて、でも、配信者なら宇宙に行けるという話が広まった。
宇宙を研究する人達と、配信者の距離がぐんと近づいたね。
南くろすさんも、これからは二つの橋渡しとしてめちゃめちゃ忙しくなりそう。
まあ、その前に今は、教育実習生として忙しいと思うんだけど。
私はがんばれー、と他人事みたいに思いつつ、焼きそばを平らげるのだった。
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