第376話 打ち上げ体験をしよう!伝説

「えっ!? 冬休み中に打ち上げ体験を!?」


『そうそう!』


 ケイトさんからザッコで連絡が届いたのだった。

 バーチャル空間で、体感とかを現実にかなり近づけた打ち上げ体験ができるんだとか。


 今は安全性をある程度確保しないと、打ち上げはゴーサイン出ないので、私にもきちんと体験しておいてもらおうということらしかった。

 なるほどなあ、大変ですねえ。


『あと、うちのパパとの配信見ました。はづきちゃんがパパのママなら、私のグランマってことになるのかな? グランマは別でまだ元気にいるんだけど』


 おっと、ケイトさんはおばあちゃんを三人持っている人なんだった!

 スレイヤーVさんちは奥さん二人いるからねえ。


『そういうわけで、バーチャル空間のこのロビーで会いましょう。座標を送ります』


「はいはーい」


 コンピューター関連はまあまあ強い私。

 送られてきた座標情報をAフォンに登録した。


「リーダーは新年からずっとバーチャルにいるわねえ」


「なんかねー。前はバーチャルなんかこりごりだーって言ってたのにねえ」


「縁みたいなものかも知れないな。はづきの動きは私も予測ができないから」


 今日は珍しく家に揃っている、ビクトリアとカナンさん。

 二人に見送られつつ、私はバーチャル空間へ!


 まあ、バーチャルヘルメット被って布団に寝転がるだけなんですが。


 さて、到着しました621ロビー。


『あっ、また当たり前みたいな顔してはづきっちが歩いてる!』『疑似のアバターじゃなく?』『本物な気がする……』


 なんかまた注目されてるな。

 だけど、お正月三が日が終わった後なので、流石に人の数も減ってる。


 話しかけられたりして足止めを食らう前に突破だ!


 私は小走りで移動した。


『あの小走り、はづきっちだ!』『は、速い!! 追いつけない!!』『あれが噂の物理法則を無視した小走り!!』


 無視してはないと思うなあ!

 とりあえず他の人達を振り切って、総合ロビーへ。

 ついでに上にアバターを被った。私よりもちょっとリア充っぽいアバターだ。


 メイクをバリバリに決めて、きらきらの☆付きネイルをつけた、サイドアップのパンクなギャル!

 これはですねー、私のアバターのバリエーションとして考えてたんですけど、なんかリア充オーラが強くて拒絶反応が出たので放置してたら、ベルっちが勝手に完成させてたやつ。


 上に被ると姿が見えないからセーフだな……。

 あっ、か、鏡が!


「ウグワー」


 私は鏡に映されると正体を表す妖怪みたいな悲鳴をあげて、慌てて距離を取る。

 危ない危ない……。


『やっぱりここは鏡を遮る存在が必要でしょ。私も出よう』


「ベルっち!」


 ベルっちは、ビクトリア用に用意していた白ゴスのアバター。

 顔は汎用のモブのを使用!


 よし、これでギャルと白ゴスのコンビだ。

 まさかきら星はづきコンビとは思うまい。


 だけど会話をしたら、魂に刻まれた陰の者オーラが出るかも知れないので、無言移動をしたのだった。


 指定された座標に到着。

 そこは、たくさんの貸しスペースがあるバーチャル駐車場みたいなところだ。


 ここでパスコードを送信して、本人確認して。

 そうしたら、眼の前にエレベーターみたいなのが出てきた。


 ベルっちと二人で乗り込む。

 扉が閉じて、移動を開始した。


 ここで私達は変装を解いたのだった。


「ふいーっ!! 全然バレなかったねえ」


『うんうん、やはり私達は陰とかセンシティブなイメージがあるのかも知れない。陽のパワーを纏ったら完璧な偽装になるね』


「鏡の存在だけは計算外だったけど。あれってちょっとフクザツな演算必要じゃなかったっけ? 趣味で置いてるのかなあ」


『はづきみたいな存在をあぶり出すため?』


「あひー! 退魔の鏡だ!!」


 一人でわちゃわちゃ盛り上がりながら、私達は目的地に到着した。

 エレベーターの扉が開くと、そこはだだっ広い草原。


 中央に、ドドーンと大きなロケットがそびえ立っている。


『グランマー!』


 ケイトさんが駆け寄ってきた。

 あなた、私より二個上ですよね!?

 年上からママとかグランマと呼ばれてしまう女子高生!


 ちなみに、ケイトさんはとても優秀な人で、飛び級でもう大学は卒業。

 今は大学院みたいな感じで、アメリカの大学の研究室でバンバン論文も書いたりしてるらしい。


 専門はまさに、配信とアバター関連。

 お父さんであるスレイヤーVさんの影響だなあ。

 それはそうと。


「グランマではありません」


『パパのママなんだからグランマみたいなものじゃない? 四人目のグランマ』


『すごく押しが強い』


 ベルっちもたじたじだ。

 おっと、ここで私はベルっちに帰還のお願いをした。

 空腹時の栄養補給のためです。


『じゃあ私はこれでー。はづき、後で体験共有よろしくねー』


 彼女が消えた。

 これを見ていたケイトさんが、


『本当にはづきちゃんは二人になったり一人になったりするの? 体験共有って一つになると記憶が統合されるってこと?』


 研究者らしく色々聞いてくるなあ。

 専門分野では無いと思うんですが!


 その後、アメリカのスタッフと日本のスタッフがわーっとやって来て、私と片っ端から握手した。


「こ、こんきらこんきら」


『コンキラー! I'm happy to meet you!!』『本物のはづきっちだ! あなたを打ち上げられることを光栄に思います!』


 もうね、お正月のあけおめと同じくらい挨拶した。

 それくらいたくさんのスタッフがいて、私の打ち上げ体験に協力してくれるのだ。


 代表らしきおじさんが、


『我々の技術の粋を結集し、必ずあなたを無事に宇宙まで送り届けますし、必ずあなたを地球へ帰還させます!』


 力強いお約束をしてくれるのだった!

 カッコイー!

 私こういうシチュエーション大好き!


 打ち上げられるのが私じゃなければな!


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