第377話 真・打ち上げ体験伝説
ロケットの姿がないなーなんて思っていたら、ちゃんと専用の打ち上げロビーがあるのだった。
そこが実験施設なんだそうで、私が乗り込んで打ち上げてデータを取るんだって。
「ほへー、ロケットですね。あれはどういう感じの名前なんですか」
『プリンセス・トゥインクルスター号よ』
「プリンセストゥインクルスター号!!!!!」
すっごい名前に私は飛び上がった。
そう言えば、ロケットが全身ピンク色で、あちこちにお星さまマークがついてる……。
キラキラ光らないのは、観測の邪魔とか、色々想定外の事故を起こさないためなのかも知れない。
『飛ぶと光るよ!』
「光るんだ!?」
これはとんでもないことになった。
で、私がプリンセストゥインクルスター号に驚愕しているのを見て、スタッフの皆さんがウワーッと大いに沸くのだった。
ね、狙ってたなー!?
そして、開発者だって言う人に軽くレクチャーを受ける。
アメリカの人ばかりじゃなくて、日本の種子島宇宙開発局の人とかがいた。
「きら星はづきさん、本日はよろしくお願いします!」
「あ、はい、よろしくお願いします」
普通のノリの人だー!
ありがたい……。
アメリカンなキャッキャするノリは苦手かも!
かなり通信環境がいい上に、日本から接続してるせいか、種子島の人の声はクリアに聞こえるなあ。
「じゃあ早速一発目打ち上げ体験しちゃいましょうか」
「えっ!!!!!?????」
何を言っているんだこの人は。
私が理解するよりも早く。
気がつくと、ロケットの中にいるんですけど。
ケイトさんと種子島の人が、色々セットしてくれる。
私はシートベルトで二段階に椅子に固定して、終了。
終了?
これで!?
普通の車のベルトをちょっとだけゴージャスにした感じでは?
「モンスターが襲ってきた場合、無駄にベルトでぐるぐる巻きだと動けなくなって迎撃できませんから」
「ああ、そういう」
『私達には無かった発想だよね。まさか宇宙に飛び出して戦う時代が来るなんて思ってなかったもの。さすが、ロボットアニメーションの国だってみんな褒めてた』
褒めてるのかなあ?
アバターロケットは、色々な魔法的技術を使えるので普通のロケットよりも自由が利くらしい。
その代わり、未知の技術の集合体だし、科学技術と魔法技術とアバター技術を組み合わせて、そこに配信者個人のパワーとさらに同接パワーが加わるので、どうなるかがさっぱり分からないんだとか。
今回はその半分の要素、あくまでコントロール可能な、科学と魔法とアバターでどうなるかを検証するということだった。
ふむふむ、わかりやすい。
最初からそう言ってください。
「ちなみにこれはトップクラスの配信者しか耐えられません。最低でも登録者数100万人以上、同接が常に一万人を超える方が前提で、宇宙飛行士クラスの身体能力を持つことが必須で」
「あひー! 無理ゲーじゃないですか!」
『なのではづきちゃんなんだよね。頑張って、グランマ!』
「グランマじゃありませーん!」
私は抗議したけど、ベルトで固定されているので振り返ったりできない。
二人は降りていった。
『ミス・ハヅキ! いいかな? これから君は擬似的に宇宙へ打ち上げられることになる。宇宙は我々が再現したエーテル空間のようになっている。ここで君をロケットからさらに射出するまでがセットだ! 我々の計算だと、上位の配信者はエーテルを呼吸できるようになっているはず……多分。メイビー』
「そこで自信なくなるのやめてぇ」
『じゃあカウントダウンをスタートするよ! 君にしかできないことなんだ! 頼むぞミス・ハヅキ! 3! 2! 1!』
「はやいはやい、カウントダウンはやいって」
無情にゼロが告げられ、ロケットが飛び上がった。
「あひー」
なんかGが掛かってきて、私は悲鳴をあげた。
でもまあ、なんか思ってたよりも耐えられる。
『どう? はづき? あっ、なんか重みが掛かってる』
外でご飯を食べてきたベルっちが合流した。
お腹が膨れる感じがある。
あー、お昼ご飯はにゅうめんでしたか。具だくさんだったのね。
「なんか体重の十倍くらいが掛かってる感じ。まあまあ重い?」
『そっかー。私達が一つになってると全然イケるかもね』
「うんうん」
私とベルっちの会話は、通信機を通して外に聞こえているみたい。
どよめきが返ってくる。
『打ち上げ最中にフランクに会話してる!』
『マーベラス! やっぱりトップ配信者は人間やめてるな!』
「これは彼女だけの特殊ケースだと思いますが……」
『グランマは凄いわ! パパも大概人間やめてるけど、グランマもやめてるのね!』
なんだなんだ!?
私がなにかやっちゃいましたか!?
これ、全然嬉しくないタイプのやっちゃいましたかじゃない?
ロケットの中だと、外の景色が見えなくて、重くなるばかりで退屈だなあ……。
とか思っている私。
ベルっちと適当な談笑をしていたら、フッと体が軽くなった。
「あ、宇宙に出たかな?」
ベルトをパチパチ外して、ロケットの扉を開いた。
重い。
でもまあ、全然開くレベル。
ガラッと開けたら、一面の星空ですよ。
『アーッ! グランマ! 今成層圏抜けたところ! シミュレーションだけど、なんでそれでも開けて平気なの!?』
「あっ、ごめんごめん」
ガラッと扉を閉じた。
すごい抵抗が掛かってたけど、「よいしょ!」と力を込めたら閉まったね。
『オー、ジーザス!!』
『アメイジング!!』
『コング・パワー!!』
最後の人ゴリラって言った!?
それはそうと、ちょっとだけ扉の内で我慢してたらようやく宇宙到達。
『バイタルに異常が全く無い……』
『これがエーテルに満たされた宇宙の効果か……』
『彼女が特殊なだけなのは間違いないが、これを見ていると、人類も生身で宇宙に出られると勘違いしてしまいそうだ……』
なんかざわついている。
そして、あと半分が、『ブラーボー!』『ファンタスティーック!』とか騒いでいるのだ。
ここでケイトさんがまた通信に出た。
『グランマ、ここからは船外活動のシミュレーションよ! 詳しくはタネガシマが教えてくれるから』
『はい、私が代わります』
種子島の人!
よろしくお願いします~!
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