第369話 さらにバーチャル参拝伝説

 帰宅、爆睡、目覚め!

 朝の挨拶を家族とした後、母とおモチを焼いて煮て、既に冷蔵庫に備えてあったお雑煮をレンジで温めて!


 きら星はづきの新年はお雑煮からスタートする……!

 メインディッシュであるお汁粉はね、後で食べますからね。


 むしゃむしゃ食べた後で、本日の予定を確認。


 両親はテレビを見ながらまったりするつもりらしい。

 駅伝やるもんね。


 ビクトリア、カナンさんの二人は配信。

 お正月から!


 イカルガエンターテイメントは、配信者を集めてのイベントをこういう祝日にやるつもりはないみたい。

 お互い家族との時間を大事にしてね、という方針なのだ。


 で、私はと言うと……。


 Aフォンにイノシカチョウからのあけおめメッセージが届いている。

 ちょっと待ってね。

 おもち食べ終わったら返信するから!


「おいしぃ~」


「リーダーはおもち好きねえ」


「はづきは大体なんでも好きだけどね」


 食の量はやや細めのビクトリアと、普通くらいのカナンさん。

 二人を足したよりも食べる私。


 四人前くらいを平らげた。

 さて、あけおめメッセージを返信したら、いよいよ新年配信の準備がスタートだ。


 久方ぶりのバーチャル世界へ……。


「どれどれ……?」


『どーれ』


「うわー、ベルっち、バーチャルの器具が無くても普通に出てくるじゃん」


『そりゃまあ、私ははづきですし。あけましておめでとうございます』


「あけましておめでとうございます」


 私が621ロビーでベルっちと挨拶し合っていたので、すぐにその場にいる人達に見つかってしまった。


『はづきっちおる!!』『二人共いるw!』『あけおめー!』『ことよろー!』


「あけましておめでとうございまーす!」


 私はみんなに手を振りつつ。

 ベルっちに後ろから持ち上げられ、ブイーンと空を飛んで移動するのだった。


 さて、総合ロビーに到着。

 ここにルームを作り、待ち合わせていたのだ。


『はづきっちが飛んでる!』『新年から縁起が良いなあ……』『瑞兆じゃあ』


 注目されてしまうな!

 丼を被って来たら良かったか……?


『はづき、もう誰も丼を被ってないから、今丼姿になったら超目立つんじゃない』


「言われてみれば確かに……」


 丼ブーム、終わってた!

 こうして私は、用意されたルームに到着。


 真っ先にぼたんちゃんともみじちゃんが来ていて、私と同時くらいにはぎゅうちゃんも来た。


 四人+一人で、「『「「「あけましておめでとうございます」」」』」と挨拶する。


「それじゃあ、みんなに配った振り袖なんだけど、着替えちゃって。アバターだから苦しくないと思うし」


「うち、普通の着物でも全然平気だけど……」


「シカコは割と和服が合う体型だからなあ。あたしは全体的にきつい。こう、筋肉で……。師匠みたいにむちむちできつい感覚を知りたい人生だった」


 な、なにぃー。

 私は私で、和服にマッチし辛いから大変なのだ!


 ぼたんちゃんもすらっと足が長いタイプだし、バランス調整が大変みたい。

 だけど!


 バーチャル振り袖なら全てが解決するね!


 さて、私の振り袖は……白とピンクのブタさん柄と、黒とピンクのブタさん柄!

 ブタさんが天使になってるのと、ブタさんが悪魔になってるので分かれてるのね!


『おおー、この着物すごい。体型が分かる物理法則を越えた着物だあ』


「ほんとだ! ベルっちがいると鏡いらずで助かるなあ」


 お互いを見合いながら、ポーズを決めたりする。

 バーチャルは苦しくなくていいね!

 たくさんお腹に食べ物が入りそう。だけどバーチャルはお腹がふくれないというジレンマがあるのだなあ。


「おおーっ、かーわいいー! うちの、真っ赤で鹿と紅葉柄なんだあ」


「シカコはかんざしも可愛いなあ……。いいなあ。あたしのはこう、振り袖のはずなのになぜか戦闘用衣装にも見える……」


 はぎゅうちゃんは紫と青ベース。

 萩の花とイノシシがあしらわれているけど、イノシシの描写が明らかに幻獣とかそういう感じのそれなのだ!

 強そう。


「みんな可愛い……。エメラクさんに頼んだ甲斐があったわ! エメラクさんも張り切って作ってくれたし!」


 そういうぼたんちゃんは、白ベースに色とりどりの牡丹の花が描かれ、そこに止まる蝶が印象的。

 一番着物っぽい。

 だけど、ちょっとはだけた感じで色っぽいのは……?


「私のキャラ的にちょっとお色気かなと。エメラクさんと話し合ってそういう方向で固めたの。なお、肌を隠すモードに変形するわ」


 あっ、着物の乱れが一瞬で直った!

 不思議な機能があるなあ……。


「ちなみにはづきちゃんの振り袖にも同じ機能があるわよ。アクション用おはだけ機能」


「い、いらなーい!」


 それは誰得なんだ~!?


「じゃあ本日の予定について軽く振り返っておくわね」


 はーい、と返事をする私たち。

 眼の前に、ぼたんちゃんが作ったプログラムが発表された。

 なるほど、総合ロビーから行けるところに、配信者の人たちが共同で作ったバーチャル神社があるのね。


 神社そのものがアクティビティになってて、配信者専用と。

 で、決められた季節だけ解放されるんですって。


 お正月はその一つ。


 どうやらイカルガにも神社への招待状が来て、これをぼたんちゃんが担当することになったらしい。


 私たちは忙しくて気付かなかったなあ。


「あたしは知ってたよ。なのでチョーコを手伝ってた」


「なるほどー。はぎゅうちゃんマメだもんねえ」


 そういうことで。

 私たち四人+一人による、お正月参拝配信がスタートするのだ。


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