第370話 バーチャル神社にみんな集合伝説
「お前らこんきら~、そしてあけましておめでとうございます」
※『あけおめです~!』『今年も挨拶はこんきらから始まった』『これを聞かないと一年が始まらないよね』『はづきちゃんとベルっちの着物かわいい~』『とてもかわいい』
おおーっ、新年からみんな元気だなあ!
お正月は家でのんびりしてる人が多いから、動画があると暇を潰せるもんね。
皆さんの退屈な時間を解消するお手伝いをしましょう!
「私はですねー。ツブヤキックスで告知した通り、イノシカチョウの三人と一緒にこのバーチャル空間で初詣してきます! ちなみにリアルでは初詣終えたので、私は二度目詣でです」
『甘酒美味しかったよねえ。振り袖でぎゅうぎゅうになってなければもっとカパカパ飲んだ』
※『初詣いいなー』『甘酒飲んだの?』『リアルはづきっちの着物も見てみたい!』
おや……?
コメントの民度がずいぶん高いな……。
もしや普段の配信を見れていないタイプのリスナーさんもたくさんいる……?
イノシカチョウの三人も配信を始めていて、みんな自分のリスナーさんたちに挨拶している。
そしてバーチャル空間にいると、リスナーではない一般通過な人たちの注目も浴びるわけで。
『あっ、イカルガが配信してる!』『二人いるってことははづきっち!?』『双子みたいでかわいい~』『同一人物だけどな』
せっかくなので、みんなへのサービスのためにポーズを取ったりしてみる。
スクショタイムというやつです。
「あのコミュ障だった先輩がすっかり配信者として一人前に……」
「師匠はアバター被っちゃうと覚悟が決まるところあるよね」
「かわいい! かわいい!」
イノシカチョウの誰かさんが、リスナーや一般の人に混じってスクショしまくってるんですけど!
そうこうしていたら、向こうから知っている配信者の一団がやってきた。
なうファンタジーご一行様だ!
「やあはづきちゃん! あけましておめでとうございます」
「八咫烏さんあけましておめでとうございます~!」
黒い紋付袴の八咫烏さん。
なうファンタジー男性配信者の登録者数トップなんだけど、とても気さくな人なのだ。
斑鳩は最近どう? とか、私からは三角関係なんですけど本人全く気付いてないです、とかそういう話をした。
あっ、コメント欄が怒涛のように流れていく!!
みんな、引退した後なのに兄のことに興味あるのねえ。
私は微笑ましく思いながら、バーチャル神社に突撃です。
ここは配信者専用の神社。
あちこちで、見たことがある配信者さんがわいわいとアクティビティを楽しんでいる。
おみくじを引いたり、手水台にいたり、湧いてくる煙を頭に向けて仰いだり、あとは本殿で拝んだりしている。
なんか、仁王像の形の木人があちこちにあって、手合わせしたりできるみたい。
神社……?
お寺では……?
「はづきさんお久しぶり~! あけましておめでとうございます。元気だった?」
「うおー風街さんお久しぶりですあけましておめでとうございます~!」
風街さんは、ライブダンジョン勢と一緒に来てるみたい。
八咫烏さんも巻き込んで、三人+一人で立ち話などする。
「はづきさんって本当に二人になってるんだ!? 今の迷宮省、それでもよしとするあたりはかなり良くなったんだね。私は今はあそこから外れて歌手活動一本かなあ……」
かなり砕けた感じになった風街さんなのだ。
「風街さん、あちこちで歌を聞きますもんねー」
「はづきさんもすぐそうなるよ。絶対。街中であの歌が流れる」
「あひー」
「売れっ子配信者の宿命みたいなものだよね。僕も歌手デビューしてるから、ちょこちょこ自分の歌声が聞こえてくるし」
八咫烏さんも!
『問題は私たちは一人デュエットだから二倍聞こえてくることで』
「ああ~」
お二人が笑いながら頷いた。
とりあえず、心強く偉大な先輩がいらっしゃるということで、今後は色々なアドバイスを求めていこう……。
インペリアルレコードさんはとんでもないくらい曲がダウンロードされて、目の色を変えているという噂だし。
こ、これは一曲でやめさせてくれなそうな雰囲気だぞ……!!
「ウェーイ! はづきちゃんじゃん! おひさ! あけましておめでとうございます!!」
「チャラウェイさーん! あけましておめでとうございます!」
※『今度はチャラウェイがドワーフ引き連れてやってきたぞ!』『大同窓会じゃん!』『バーチャル神社すげー』『あっ、スパイスちゃんにスレイヤーVもいるじゃん!!』『フォーガイズ揃ってる!』
本当に同窓会みたいになってきたなあ!
私はスパイスちゃんとハイタッチし、このとんでもない可愛さなのにおじさんなのか……! と戦慄したりなどした。
配信界では、もみじちゃんと双璧を成す可愛さということで注目されているのだ、このバ美肉おじさんは!
そしてそして、スレイヤーVさん。
彼は自分のアバターのママであり、配信の師匠である私に敬意を表して来る。
「配信で手加減はできるようになりましたか……」
「いやあ、まだまだ力が入りすぎて、盛り上がりどころの演出がなかなか。子どもたちにも厳しい指摘をされているよ」
子どもたちは配信毎日見てるからねえ。
スレイヤーVさんこと、大京嗣也氏が現役だった頃は、ダンジョン踏破がエンタメじゃなくて公共事業みたいになっていたそうで。
だから遊びなんてなしに、全力攻略が基本だったのだ。
時代は変わりましたねえ。
「はづきちゃーん!! そろそろみんなで参拝するよー!」
おっと、ぼたんちゃんのお呼びが掛かった。
お賽銭はやっぱりQRコードだったりするんだろうか?
私は本殿へと向かうことにするのだった。
あっ、同窓会はベルっちに任せた!
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