第346話 もみじちゃん、立つ!伝説
我が家の家族会議!
「いいと思う」「いいと思うわ」「父さんはフクザツな気持ちだ……」
おっ、意見が分かれましたねー。
母曰く、
「だってあなた、何でもやって来たじゃない。だったら今アイドルみたいに歌を売り出したって何も変わらないと思うな。いいんじゃない? 高校卒業までなんだからなんでもやってみたら」
ビクトリアは、
「ステイツとブリテンを救ったリーダーが今更こんなことで怖気づくとも思えないわ。だってやって来たことに比べたら些事じゃない」
父は、
「まだ高校二年生の娘に、芸能界入りさせるのはちょっと……。あそこは魔窟だ。お前みたいな優しくて普通の娘が行くところじゃないんだ」
あーっ。
父のピュアさが眩しい。
そしてお気遣いありがたし。
「なので、半分くらいお父さんの意見を汲んで、アイドル売りはしないことにします。あ、歌は出しますしアバターでPVはやってみようかと……。ベルっちの協力を要請して」
『やるよやるよー。私ははづきよりもこういう恥ずかしみに強いからね』
私よりちょっと暴食以外の大罪パワーが強いベルっち!
ダンスとかは彼女の任せることになるのではないか。
父は芸能界でぶいぶいやるわけではないという事が分かり、ホッと一安心。
「あなた、本当に心配性ね。でも、私がおおらかすぎるのかもだし……。バランスがいいと思うわ」
母がなんかニコニコしている。
父にちょっといいお茶を淹れてくれた。
両親がラブラブしているー。
「いいなあ。もうちょっとしたら私のパパとママも起きる時間だから、電話しようっと」
ビクトリアはちょっとホームシックですかね。
でも、うちの両親を日本のパパママと慕ってくれているのだ。
母はもう、我が家の子供は私とビクトリアの姉妹ですよみたいな顔してるし、父はビクトリアをとても可愛がってるし。
もしかうちの両親は懐がとても深い……?
その可能性がある。
もうすぐカナンさんも帰って来るだろうしなあ。
あ、そうそう。
カナンさん用に、我が家の増築が始まっております。
二階の物置だったところを拡張して、部屋にするの。
そんな感じで、私の周りもちょこちょこ変化が起きつつある。
『ほうほう、先輩が歌デビュー。やっぱり。うちは絶対そうなると睨んでました』
「あひー、もみじちゃんの先読みが……!!」
ザッコで今回の件について、イカルガ歌うまチームのトップであるもみじちゃんに相談。
彼女は音楽会社が私を放ってはおかないだろうと考えていたらしい。
『むしろ思ったよりも遅かったですね。先輩、いっつも飛び回ってるから声を掛けるチャンスが無かったのか、それとも社長が止めてたのか……』
「あー、お兄ちゃんが止めてたのはありそう」
『ですよねえ。社長は先輩のこと一番大事にしてますしー。よーし、じゃあうちが一肌脱ぎましょう! 明日スタジオ来てください! 歌とダンスのレッスン始めましょ!』
「な、なんだってー!」
本格的に先生にお願いすることになるだろうけど、その前にもみじちゃんのテクを一部伝授してくれるという話なのだった!
翌日。
学校が終わり、私はスタジオに向かった。
というか、普通に駅でもみじちゃんと待ち合わせて一緒に電車に乗った。
慣れた道を通って、会社に到着。
私が入ってくると、スタッフの皆さんが、
「はづきちゃんアイドルデビューするんだって!?」「PVメインで露出はなしってことらしいけど、応援してる!」「頑張って!」
みんな事情を知っている……!?
なぜだ。
「そりゃあ、会社の人と一緒に行ったからみんな知ってて当たり前じゃないですかー」
「それもそっかあ」
その一緒に行った当人である主任さん。
私がもみじちゃんからレッスンを受けるということで、この様子を見に来た。
そのハンディカメラはなんですかね?
「ちょっと動画撮影しようと思って。長くなるだろうからスマホじゃなくてカメラを持ってきたんだ。これもコンテンツとして売り出せるよ」
「あひー、たくましい!」
「はづきちゃんはやることなすこと、全てがお客さんの耳目を集めるからね。君は自然体でいてくれるといい。演出や解説はこちらで入れるから」
「あひー」
「はひい、ゆ、有能」
私ともみじちゃんで驚愕するのだ。
そして始まるレッスン。
音楽に合わせて簡単なダンス。
「一応頑張って基礎はやっときましょう! 先輩がこういう決まった動きをするの苦手なの知ってますけど」
「ひいー、やりまあす」
『よーし、二人の経験を後で統合だあ』
ベルっちも出てきた。
二人でもみじちゃんの教えを受け、足運びとかを必死に練習した。
なんという難易度!
「先輩、ちょっと足運び乱れてます! ベル先輩、手つきが盆踊りです! あ、いいですよいいですよ! 合うところは二人ともピタッとシンクロしますよね! 先輩、センスあると思います! いいですよいいですよ! あっ今のところもう一回やりましょう!」
「『あひー』」
スパルタ!!
なお、発声に関しては先生に任せるとして。
「先輩の歌声は割と独自なんで、それを活かす感じがいいと思うんですよねー」
「ヘタウマ的な?」
「いや、全然下手ではないです。もっと不思議な……不思議な……。ハマると耳から離れない、個性的なボーカルだと思いますー」
なるほどわからん。
だけど、企画の主任さんが笑顔でうんうん頷いている。
「やっぱりはづきちゃんにはスター性があるなあ。この輝きを世界に広めたい」
なんてことを仰るの。
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