第336話 苛烈なり!ジムでのスポーツ伝説

「『あひー』」


※『早速鳴いた!』『うおおおお』『ダブルはづきっちがランニングマシンで悲鳴をあげてる!』


「いつものはづきちゃんの足運びじゃないですものね。あれは省エネが極まったものですわ。だから、はづきちゃんはちゃんとエネルギーを消費する動きで走らないといけませんの。ということで、わたくし、はづきちゃんのフォームを修正しましたわ」


※『以前のはづきさん呼びからちゃん呼びになってる』『二人がさらに仲良しになってよきよき』


 ということで!

 私は今、ダイエット配信をしています!

 コーチのカンナちゃんがスパルタ~!


 私とベルゼブブは、ジャージ姿でひいひい言いながら走っている。

 フォームを矯正されたけど、めちゃくちゃ疲れるぅ!!

 いや、普通はこういうフォームって疲れないためのものなんだけど、どうやら私が自然にやってたあれが、物理法則とか無視して異常に負担が少ない動きだったみたいで。


「人間に真似できない走法でカロリー消費を抑えるのは禁止ですわよー! さあ、走った走った! ランニング15分!」


「『あひー、勘弁してぇ~』」


 ということで!

 私はちょっとだけカロリーを消費しました!!


「あれだけ頑張ってこれだけぇ~!?」


『私たち、普段はどれだけ食べてるの……?』


「二人とも、食べたら栄養はカロリーに変わり、お肉になるということを理解しましたわね。ボーナス期間は終わり。そろそろはづきさんはかわいいお洋服を着れるよう、体に付くお肉の量を制限するべきですわ」


「『はぁーい』」


 なんという説得力!!

 今まで、胸やお尻にお肉が付くのはまあ仕方ないよねーとか思ってたんだけど。

 限度というものがある……!!


 私はきちんとボディコントロールをしていかないといけないのだ。


 ベンチに腰掛けて、ひいひい言ってる私たち。

 スポーツドリンクをぐびぐびと飲んだ。


「飲みすぎると消費した分が戻りますわよー」


 なんということ!


 この世には神も仏もいないのかー!


『魔王ならいるけどね』


「あなたあなた」


※『w』『w』『草』『漫才なのよw』『ご本人様コントw』


 私としては、筋力トレーニングに興味があるんですが……。

 継続したトレーニングはなかなか大変。

 すぐに超省エネモードになっちゃうからなあ。


「カンナちゃん、ちょっと、ちょっとだけやっていい? 筋トレ……」


「……結果は分かっているのですけれど、いいですわよー」


「よっしゃー! どーれ」


 トレーナーの人に教えてもらいながら、バーベルを手に取る。


「じゃあ最初はバーだけで」


「はいっ」


 ひょいひょい。


「あっ、補助なしで20kgをまるで綿毛のように!!」


 驚愕するトレーナーさん。


「ほらね……。これでも半分の力のはづきさんなんですもの」


※『パワアアアアアアwwww』『女子配信者でこんだけのパワーある人なかなかいないよな……』『はづきっちの凄さを数値で見せつけられる配信だぜ』


「で、では今度は……左右に10kgつけて」


「はいっ!」


 ひょいひょい。


「えーっ!? 小柄な女の子1人分くらいの重さですよーっ!? で、では20kgを左右に……」


「あっ、まあまあ重いです」


 さっさっ。


「80kgを子犬でも持ち上げるようなペースで!? あと、ベンチプレスはその速度でやるものじゃありませんよ!? 体壊しちゃう」


「あっはいすみません」


 結局、100kgをベンチプレスでひょいひょいしたところで終わりになった。

 これ以上はリスナーさんの教育に悪くないからだって。

 確かに、真似されると危ない……。


※『CGでは……?』『いやあ、はづきっちでしょ? ありうるよ』『100キロ余裕だとは思わなかったわ……』『やべえよやべえよ』


 ですが!!

 この身体能力は!

 別に痩せに繋がるわけではないのです!!


「はい、はづきさん。あなたのその並外れた身体能力があるからこそ、勝手に最高効率の動きを作り出してしまうわけですわ。本当にねえ、出会ったばかりの頃は普通の女の子だったのに……」


 カンナちゃんの本音が出た!

 まあ、我ながらこのパワーはおかしいなーと思いますね。はい。


「ベルっちのせいだったり?」


『そうじゃないかな? 最初に憤怒の人とやった時にいきなり強くなった気がする。今思うと大罪勢の共鳴だったんだねー。あと、私が明確に分かれ始めたの、はづきが陰陽術を習ってからじゃん?』


「そこかー。いきなり式神使えたから不思議だなーって思ってたら」


『ねー』


※『ゲスト配信で今明かされるはづきっちの秘密!?』『あのパワーにはやはり理由があった』『この真実に迫れるのは俺たちのお嬢しかいないな!』


「そうですわねえ。わたくしも気になって来ましたわ。どうしてはづきさんが今みたいになっているのか……。それはそうとして!」


「『むむっ!?』」


「はづきさんたち、水着は持ってきましたか? ダイエットと言えばプール! プールしかありませんわよ!」


「持ってきてはいるけど……」


『その、ねえ……』


 お着替えタイムなのです。

 スク水だと、色々身バレしそうなので……。


「結果的に、私は夏に着てた、チューブトップビキニ。ピンク色のやつー。で、ベルっちは」


『ファティマさんから借りてきた、真っ赤なビキニです~』


 どよめくコメント欄。


※『うおおおおおお』『センシティブ過ぎるw』『スポーツ用の水着じゃないでしょw』『水の抵抗凄そう』『えっ、水の抵抗ということはつまり……?』


「あえて抵抗の大きなこの水着を着てもらって、プールで泳いで行きますわよー! レッツダイエットですわー!!」


「『あひー』」


 またも悲鳴をあげる私たちなのだった。


「あ、わたくしは競泳用のやつですわ。シルバーにイエローのラインがついたやつ」


※『それはそれでいい……』『お嬢の水着も楽しみ』


「『私たちにもご褒美かも知れない……』」


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