第337話 水の抵抗を利用せよ!ダブルはづきスイム伝説

 ついにコラボでのダイエット配信も終盤。

 私とベルっちが水の中にどぼんと入った。

 水泳帽を被ってるので、髪の毛は安心!


「おお、浮きそうになる……」


『空だって飛べるんだから水にだって浮くよねー』


 ねー、とお喋りしてたら、隣のコーナーにカンナちゃんも入ってきた。

 うーん!

 競泳用水着に包まれた流線型ボディがかっこいい。

 好き好き。


 私とベルっちが目をハートマークみたいにした。


※『はづきっちたち、本当にお嬢好きねw』『最推しらしいからね』『仲良くしてるの、本当に好き』


 好意的なコメントが!

 うちのコメント欄とは大きく違いますねー。


「それじゃあはづきちゃん、これからわたくし、泳いでみせますわ。同じように泳ぎながら追いかけてきて。今回はゆっくりと何往復もしていく感じですのよ」


「なるほどー」


『やってみますか』


 泳ぎとは言っても、同じプールの中。

 水の抵抗とかなんとか、そんな大したものじゃないでしょ……。


 そう思って泳ぎだす私たちなのだったけど……。


 カンナちゃんはすいすいとお魚のように泳いでいき、これは大変きれいで見とれてしまう。

 私たちはと言うと。


「あれっ、なんか全然進まない!」


『み、水が壁のようだー』


 ぱちゃぱちゃ水面を叩いてるけど進まないですよー!!

 なんということでしょう。

 私もベルっちも平泳ぎの体勢なんだけど、水流が私たちの邪魔をするのだ!


※『あっ、凹凸による強烈な水の抵抗……!』『水着の形も体型を均してくれないもんねー』『その点、お嬢は流線型だからな』『お嬢の名誉のために言うけど、けっして小さいわけではない……』


 コメントが解説してくれる。

 なるほど、そういうことか!!


 私は一旦立ち上がり、ベルっちと作戦会議した。


「これはどうやら、私たちがビキニであることで、胸とかお尻が水の抵抗を受けてめちゃめちゃ速度が落ちてるみたい」


『な、なんということ。ここでも体型が私たちの前に立ちふさがるー』


 ガーン、という顔をするベルっち。

 私も腕組みしてうんうん頷いた。


「つまり……背泳ぎしたらいいんじゃないかな。やったことないけど」


『私たち、平泳ぎとバタ足しかできないもんね』

 

 そこにターンして戻って来るカンナちゃん。


「カンナちゃーん!! ヘルプ! ヘルプミー!」


「はいはい、なんですの?」


 水泳帽に競泳用グラスのカンナちゃん、水着も相まって別人のようなシュッとしたかっこよさだ。

 グラスを上げて、彼女は近づいてきた。


「私たちは大変水の抵抗が大きくて前に進めない」


『抵抗が少ない背泳ぎで行きたいので教えてください』


「だめですわ」


「『な、なんだってー!』」


※『リアクションが完全に揃うの草』『はづきっちは芸人w』『本気でショックを受けてる顔してるもんねw』


「だってそうでしょう? 今回ははづきちゃんのダイエットなんですもの。その習慣を付けてもらうために、あえてはづきちゃんが楽をできないメニューで体脂肪を消費してもらうようにしてるんですのよ?」


「な、なるほどー」


 つまり抵抗が凄く大きい状態で水中を泳ぎ、エネルギーをたくさん使わねばならないということだ。

 くうー、ダイエットは辛いです!


『でもはづき、ダイエットをしないと着れる服が……』


「うん、可愛い服を着るために全力で挑むしかない」


 食べる量を妥協したくはない!

 だけど、可愛い服も着たい!

 そうなったら、運動量を増やすしか無いでしょう。


 そもそも最近の私がふっくらしてきたのは、なんかダンジョンでの運動量が減ったからなんだよね。

 あまり動かなくても攻略できてしまう。


 これは良くなかった!

 私は強くなりすぎたのだ……!!


 なので、今後はしばらくベルっちと分かれ、お互いにかわりばんこでダンジョン攻略をする。

 余った方はサポートに徹して、裏方として一緒にダンジョンを駆け回るのだ。


 全ては運動量のため!

 そして運動した後のご飯はとっても美味しいんだなあ!

 で、で、でも、腹八分目で止めておく……!!


 ううー、意識的腹八分目が辛い。

 泣ける~。


※『はづきっちがうるうるしてる』『泣かないで……』『ダイエットは辛いもんなあ』


 腹八分目が辛いんです。

 ちなみにベルっちもポロポロ泣きながら、私の肩を叩く。

 そう、私たちはひとりじゃない。


 一緒に乗り越えていこう、この腹八分目の壁を……!!


「確かにまあ、暴食の大罪の人が腹八分目はつらいですわよね」


 なんか私たちの心を読んだみたいなカンナちゃん!


「な、なんで私たちの事がわかるの!?」


「付き合いが長いんですもの。はづきちゃんが何で辛そうにしてるかなんて見当が付きますわね」


※『腹八分目wwww』『はづきっちーw!』『あかん笑い止まらん』『さっすが……』『というかお嬢すげえ』『良く分かったよねえ』


 こうして、素晴らしい理解者であるカンナちゃんによって。


 私たちはスパルタでしごかれ、ひいひい言いながらプールを何往復もしたのだった。

 この日、確かに私たちのお尻とか太もも周りがちょっと引き締まった。


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