第335話 カンナちゃんのダイエット特訓伝説

 与那国島観光を多いに楽しんだ私。


 カナンさんはうちの父とも遠隔でお喋りし、冬には帰りますよ、と約束をしていた。

 父大喜びだなあ。


 帰りはお土産をAフォンに詰め込み、入りきらなくなった銀色飛翔体を展開して、のんびりと戻ることになった。

 ベルっちがガス欠にならないように、たまに私が彼女の中から出てきて、何か食べさせる。


「ほい、あーん」


『あーん……。クパ餅おいひー。独特の香りがたまらん』


「ねー」


『はづきは飛んでないのに食べてるの? 後でダイエットする量が増えない……?』


「あとはあと、今は今。私は現実を楽しむことにしてるので……」


『はづきがむちむちになる分、私にも回ってくるんだけど』


 ベルっちが文句を言うように!

 難しいお年頃ですねえ。


 こうして半日くらいかけて、東京に戻ってきたのだった。


 1900kmを7時間くらいのろのろ飛んだから、時速270km/hくらいかなあ。

 新幹線より速いのでは。


 そしてイカルガビルに到着したところで、銀色飛翔体が限界を迎え、パタンパタンと開いたかと思うと……。


「あー、崩れてしまった」


『アバターが崩壊してくね。私たちが出たからだ』


 儚い。

 とりあえずの結論としては、与那国島遠かったねーという話なのだ。


 さて、ここからは私が忙しい。

 カンナちゃんにアポを取って、ダイエットについて伝授してもらわねばならないからだ、


 ザッコで連絡したら、その日の夜に返答が来た。


『いいよー。今度コラボ配信で一緒にスポーツする? なうファンタジーのみんなが使ってるジムとかあるんだけど。はづきちゃん今は二人になったりするんだよね? 闇のはづきちゃんも連れてきてよ。会いたいなー』


「ぜひぜひー! ありがとー!!」


 すぐに話しがまとまった!


「カンナちゃんは本当にいい人だなあ。好き好き」


 カンナちゃんプラモをちゅっちゅしたりしていると、ベルっちがふーむと唸った。


「どうしたのベルっち」


『与那国島からね。私とはづきの違いを色々考えてたんだけど。私の中に、はづきが親しい人たちへの愛着が割と薄いんだよね。だからそっちは多分、ハヅキのものなんだと思う』


「ほえー。共有されてないんだ。じゃあ、誰となら親しい感じなの?」


『んー、バングラッド氏とお兄ちゃん?』


「あー」


 バングラッド氏は魔族的な人なので、親和性が高いのかもだし。

 あとは背中に装着して空を飛んだ仲だもんね。

 ベルっちの意識みたいなのが強まったのは、イギリス出張の時からだったのかも。


 兄は謎。


「でもカナンさんとハグしてたじゃん」


『はづきと分離してしばらくは、なんかはづきの感情を共有するみたい。でもあのハグでカナンさんとも仲良しになったから、今は好きよー』


「なるほどねえ」


 私とベルっちの違いなんかを確認し、このことについてルシファーさんやウォンさんとお喋りしたりして時が過ぎた。

 そして……。

 予定を合わせた、カンナちゃんとのコラボ配信の日!


 秘密のスポーツジムへ私たちは集まった!


 なんかよそ行きな格好のカンナちゃんが待ち受けている。

 私もお気に入りのワンピースを着てきた。

 ほぼデートなのだ!


「はづきちゃん久しぶり! いっつも元気だねえ」


「お久しぶり~! カンナちゃんに会えると思ったら嬉しくて嬉しくて……。なので元気なのです」


 二人でいえーい、とハイタッチしておく。


 ここでカンナちゃんがシリアスな顔になった。


「ところで配信で見てたんだけどさ、はづきちゃんが二人に分かれられるようになったって本当?」


「ほんとですほんと。私の力が強くなりすぎたから、分かれやすくなったというのもあるかもー。ベルっちー」


『ほいほい』


 私の横にスーッと出てくるベルっち。

 これを見て、カンナちゃんが目を丸くした。


「ほ、ほ、ほんとだ! 現実でも二人になってる!! ほへー」


 しげしげとベルっちを見つめる。

 周りをくるくる回ったり、ハグしてみたり。


『あひー』


「ああごめんごめん、でも抱き心地は間違いなくはづきちゃんだわ」


「ベルっちは私と違って、そこまで人に感情が無いから大丈夫!」


『いや、なんか超ドキドキしてる。カンナちゃんは別だわこれ』


「ほんとうにぃ!?」


 いかん、ライバル出現!!

 ライバルは私だー!


 ということで。

 私たちは更衣室へ向かい、一緒にお揃いのジャージに着替えたのだった。


「うひょー、はづきちゃんが二人いる!!」


「バーチャライズしてきましたんで、確かに私が二人」


 見分け方は、ベルっちは背中に羽が生えていることでしょうかね。

 その気になればベルっち、角も生やせるけど。


「配信の見分けのために、角があった方がいいかもね」


『そう? じゃあ生やしとく』


 にゅっと巻き角が生えてくるベルっち。

 こうしてみると、悪魔っぽいコスプレをした私だなあ。


「それじゃあ、スポーツする配信をしていきましょ! 二人とも準備はいい? 今日の私はスパルタだよー!!」


「『あひー! お、お手柔らかに……!!』」


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