第332話 与那国島へひとっ飛び伝説
私=飛べない。
ベルゼブブ=飛べるけど持久力に難あり。お腹へっちゃう。
ということで、外部からの協力を得て開発された……。
なんか銀色の飛翔体アバター!
『急ごしらえだったんで、外見をかっこよくはできなかったけどね!』『余計なテクスチャーを貼ると計算が狂うから、今回はこの外見なんだ。次回までには改善するから!』『でもギリギリまでエメラク=サンの絵を再現できるよう頑張ったよ!』
イギリスのアバターチーム、頑張ってくれました!
向こうはもう真夜中らしくて、これから寝るらしい。
こっちは午前中なので、実証してきます!
銀色飛翔体の裏側には、宇宙さんが防御の護符みたいなのを貼り付けている。
これはAフォンでやってるんだけど、全部インターネッツ上でできちゃうの凄いなあ。
たこやきはね、銀色飛翔体の後ろにカワイイブタのお尻をくっつけてる。
何をしてるの。
「計算上、ここにブタのお尻があっても空気抵抗の邪魔をしないんだ」
「ほへー。そしてブタのお尻の意味は」
「可愛いでしょ」
「た、たこやき~!」
この人、初配信の頃から基本的に変わんないなあ。
こうして私は、与那国島までひとっ飛び配信を開始することになった。
今回の配信は同接パワーも必要だからね。
アバターチームの計算だと、この飛翔体、行って帰ってでギリギリぶっ壊れる計算らしい。
壊れちゃうのか!
『ミス・ハヅキの力があれば大丈夫だよ!』『中の人が強い前提だから、君にしか使えないんだ』『あと、これを作るための計算でうちのスパコンが落ちたから、そうそう作れないよ!』
あひー!
大変な代物だ!
私の与那国島へぶっ飛ぶ配信、そういうことで、イギリス側でも注視してるらしい。
カナンさんの顔を見に行くだけなのに~。
「えーと、じゃあ配信ぬるっと始まりました。こんきらー! 私です」
※『こんきらー!』『こんきらー!』『はづきっちだったのか』『今日は海外行くんでしょ?』『与那国島は国内だぞw 本土より台湾に近いけど』
「そうそう! ということで、ここはイカルガエンタビルの屋上なんですがー」
※『初公開じゃん』『こんな風になってるんだなあ……』
「今から私は飛び立って、与那国島まで突撃します! 東京から与那国島までは……。1900km! マッハ1なら2時間かからないですね」
※『机上の計算w!』『人体が耐えられないでしょw』『はづきっちならあるいは……』『でも時間が長いからなあ』
「はい、そういう問題が出てきまして。なので、ここに秘密の乗り物を用意しました! じゃーん! こちらに実体化させたアバター、銀色の飛翔体です! 日英合作で、向こうのアバターチームは“シルバーバレット”って呼んでましたけど」
※『人が乗り込む弾丸!!』『大昔のロケットじゃんw!!』『原点回帰~』
そうなの!?
「とにかく、ここに私が乗り込みます! 行きますよー。分離!」
スパーン、と私とベルゼブブが分かれた。
※『キター!! センシティブはづきっち!』『闇のはづき!』『もう巷ではベルっちって呼ばれてるよ』
『いつの間に私の名前が漏れてた……?』
※もんじゃ『暴食の大罪を司る魔王と言えばベルゼブブだからね……』『隠す気ゼロだったじゃんw』いももち『そのセンシティブ、抱きしめたい……』おこのみ『はづきっちのあどけない感じでコスがセンシティブってのが堪らんのですよ……』
センシティブ勢が元気になってる!
だけど今回は色々事情があって、上からジャージを羽織れないのだ。
重さとか色々ギリギリの計算だからね。
お土産もAフォンに入るくらいしか持って帰れない。
「じゃあ、アワチューブでセンシティブBANされないよう祈りながら、今日の配信をやっていきます! えーとですね。今回は主導権をベルっちに回してですね。ゆーはぶこんとろーる!」
『ほいほい、あいはぶこんとろーる!』
※『普通なら危険なフラグ!』『闇が光を取り込む……!』『でもどっちもはづきっちだからなあ』『表も裏も無いもんね』
そうです。
私は「ほわー!」と気合を入れた。
そうすると、私の体がピカッと光って……。
ベルゼブブの中に入ってしまった。
『じゃあここからは闇のはづきことベルっちがやっていきますねー。銀色飛翔体に乗り込みます。ここから作業するんで、質問とか色々受け付けますー』
※『ベルっちはもともと魔王なの?』
『いい質問ですねー。私は魔王っていうか、きら星はづきの分身なんだよね。暴食の力を分けた存在っていうか、多分、きら星はづきは配信者としてのはづきと、暴食の大罪としてのはづきがいたわけ。それで、私は暴食側のはづきなんですねえ』
※『なるほどー』『じゃあ本当にはづきっちが分かれただけなんだw』『力は二つ、心は一つ』『こうして受け答えしてても、エッチな格好のはづきっちなだけだもんな』『いつものはづきっちなら恥ずかしがりそうだけど』
『それは多分、私が色欲とか憤怒とか嫉妬とかもちょっとずつ取り入れてるからじゃないかなあ。ただ、嫉妬とかはよく分からない……。私は雰囲気で毎日を生きてる。あと、憤怒はカンナちゃんとのデートを邪魔されたあの時以来感じてない……』
※『電子の海を割ったやつ!!』『あれは凄かった……』『あそこから、東京湾を割る伏線が張られてたんだなあ』
『ねー』
ベルっち、完全に私だなあ!
彼女……というか闇の私は、銀色飛翔体の中にすっぽり収まった。
そして、背中の薄羽を展開する。
これは実体がないっぽくて、ジャージを着てても貫通するし、飛翔体だって貫通して外に飛び出す。
銀色飛翔体だけだと初速が足りないみたいで、そこはベルっちの羽でなんとかする。
『では、カウントダウン開始! 2!』
※『2から始まったw!!』『心の準備をさせろw』『すぐ飛び立つつもりだw』
『1! ゼロ! 発射!!』
ベルっちが羽ばたく。
その瞬間に、銀色飛翔体がものすごい勢いで空に飛び出していった。
ベルっちは初速マッハだもんねー。一瞬しか持たないけど。
で、彼女が勢いを付けたんで、銀色飛翔体も本気になってきた。
内側に刻まれた宇宙さんの護符が輝き、なんかから私を守り始める。
周りの雲がすごい勢いで後ろに流れていく。
びゅんびゅん飛ぶ!
※たこやき『しまった! 飛んでるとブタのお尻が見えないじゃないか……!』
コメントの中で、たこやきが変なところを嘆いているのだった。
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