第331話 はづきっち飛翔計画伝説
ベルゼブブ側に主導権を渡して、空を飛んで与那国島へ!!
私のこの計画をイカルガ側に伝えたら、この辺りの技術関係のメインであるたこやきが『うーん』と唸った。
これは遠隔会議アプリを使っています!
『さすがにはづきっちでも、一人……実際には二人だけど、それで飛んでいくのは辛いと思う。空は寒いし、エネルギーを使うし。時間もそれなりにかかるし。帰りに後悔すると思うよ』
「うっ」
『ううっ』
そう言われると、たじろぐ私とベルゼブブなのだった。
いい考えだと思ったけど、さすがに与那国島は遠いのだ。
台湾まで行く距離だもんねえ。
『だけど、ここで否定ばかりしてたら面白くないね。この案件は宇宙さんとエメラクさんにも流してある。というか、エメラクさんは即座にラフ画を書き上げて来た。あとはイギリスのアバター作成チームも協力してくれる。今通話で返事が来た』
「は、はやーい!! たこやきはできる人だった」
『僕は面白いと思うものに人生BETするタイプだから。はづきっちから面白そうなネタを聞かされたら、どう実現するかの方に力を割いちゃうね』
な、なるほどー。
確かにたこやきはそういう人だ。
こうして、彼が声を掛けたドリームチームが夕方には集結した。
エメラクさんはもう彩色までしてて、ベルゼブブがカプセルみたいなのを被って飛翔する感じのユニットイラストが完成していた。
これを見て、イギリスのアバターチームが歓声をあげる。
で、さっそく作業に取り掛かり始めた。
配信者を高速で飛ばすアバターは開発段階にあったらしいけど、たくさんの同接数によるエネルギーと、中の人の頑丈さが必要だったらしくて。
『ミス・ハヅキはぴったりだよ! 明日にはデータを送るから楽しみにしてて!』
こっちも仕事がはやーい!
『私のほうでも呪的防御を施しておこう。陰陽術によるプログラムは文字だけで完結する。データ量も少なくて済むからね』
宇宙さんも、限定スペースに書き込める符みたいなのを準備するつもりみたい。
なんと頼りになるのか。
『私たちが与那国島でカナンさんと会うためだけなのに』
「うんうん、みんな親切ー」
ねー、と顔を見合わせる私たち。
これを見て、画面の向こうの人々が『はづきっち二人が仲良ししている』とほっこりしていた。
みんなが作業している間、私がやることはなんだろう。
そう、宣伝だね!
「同接数が必要みたいだから、ツブヤキックスで宣伝宣伝!」
『私はPickPockで動画で宣伝しておくね』
私たちは手分けして活躍できるのだ!
ベルゼブブが、Aフォンの前でなんか音楽に合わせてへにょへにょ踊りながら、『空を飛んで与那国島にいきまーす! 配信みてねー』とかやっている。
よく見たら、センシティブきら星はづきの姿のままじゃないですか!
「あひー、ベルっち、服、服ー」
『ベルっちっていう呼び方いいねー。服は……忘れてた。もうネットの海に流れた……』
「あひー」
露出度高め魔王ルックの私の動画が、瞬く間にPickPockを席巻した!
めっちゃくちゃ再生されてる!
短い動画だから繰り返し見られるもんねえ。
感想動画もじゃんじゃん投稿されてる。
なんということでしょう。
私がチャンネルを持ってる各配信サイトでも、待機してる人がたくさん出てきたみたい。
「本放送は明日です、明日! 土曜日のお昼位からスタートです!」
私は思わずリミットを作ってしまった。
きっと、あのドリームチームならなんとかしてくれる……。
晩ごはんを食べて、今日は早めに帰ってきた父にベルゼブブと二人でもりもり肩もみ、指圧などのマッサージなどしていると。
Aフォンがピコピコ反応している。
「あああ~。いい娘に恵まれて本当に幸せだ……。我が人生に一片の悔い無し……」
父が昇天しそうな勢い!
「ベルっち、ちょっとAフォン見てきてー」
『ほいほい』
ベルゼブブが、ピコピコ言ってるAフォンを確認する。
『あひー』
なんか悲鳴を上げてますが。
「どしたの」
「リーダーが二人で会話してるみたいで不思議ねえ」
母と並んでお茶を飲んでいるビクトリアがしみじみ呟いた。
それはそうね。
声同じだもんね。
『Yahhoでニュースになった!』
「なんだってー!」
センシティブ魔王ルック私……もといベルゼブブがとんでもない評判に!
ツブヤキックスには、性的でけしからん!という少数の怒りのツブヤキと、性的で素晴らしい、いいぞもっとやれ、とか、あまりにかわいい、とか、はづきっちの意外な一面推せる~、みたいな大量のツブヤキが溢れていた。
案外女子たちから好意的みたい。
男子たちはいつものお前らだな……。
で、技術者方面からは、「配信者がアバターで飛行し、与那国島まで行くのは貴重なサンプルになる」「イカルガはぜひデータを公開して欲しい」とか大きな話題に!
「大事になってしまった」
『カナンさんのついでに観光するだけのつもりだったのに』
この話を聞いた父が、「カナンちゃんかあ。ついこの間まで家にいたもんなあ。懐かしいなあ……」なんて遠い目をするのだった。
父からすると、私とビクトリアとカナンさんで、娘が増えたみたいな気持ちだったんだろうなあ。
私、むくむくと使命感が湧き上がる。
「よーし、じゃあカナンさんとお父さんで遠隔会話させたげる。楽しみにしてて!」
「本当かい!? だけど無理しないでくれよ。お父さんはお前やカナンちゃんやビクトリアちゃんが元気なだけで嬉しいんだからね」
うーん、善良!
母がこの様子をニコニコしながら見守っているのだった。
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