第312話 進め、新たなる攻略伝説
私たちが来てから、イギリスの配信者たちも活発化したらしい。
あちこちでイエローキングの勢力を押し返している。
「ということで、今回はその最前線であるシェフィールド攻防戦に参加してクリアしようと思います」
※『こんきらー』『こんきら!』『!?』おこのみ『はづきっちの横にエッチなレザースーツのお姉さんがいる!!』『はづきっちの肩とか二の腕とか胸元とか、指先でつつーっとやってる!』『何者なんだ』もんじゃ『現地の大物配信者、ブラックナイトだ! はづきっちみたいな娘が好みだったのか……』
「あひー! ブラックナイトさん、配信始まってからセクハラするのやめてください~!」
「あーん、残念」
けらけら笑いながら、ブラックナイトさんがちょっと離れた。
そして、興味深そうに私の配信を見ている。
「えっとですね、シェフィールドはこの辺です」
イギリスの地図を配信に映し出す私。
シェフィールドのところに、指先でポン、と点を作った。
「イギリス第五位の人口の工業都市で、ノーベル賞の人をたくさん出してるとこなんですねー。助けないと」
※『はづきっち予習もしっかりしてきてるな』『今回はどういう配信なの?』
「えっとですね。現地の配信者の方々と一緒に頑張って行きます。私がみんなをキャリーしつつ、わーっと強化したいなと」
※『はづきっちのバフかあ』『確かにはづきっちが一人いるだけで、明らかに配信者の戦力が変わるもんな』いももち『はづきちゃんの人徳だねえ! あ、ビクトリア元気?』
「ビクトリアは向こうで配信してます! ロンドントップクラスの配信者、シェリーさんとコラボしてますねー」
向こうで二人で、スクショタイムしてる。
すっかり仲良しになって……。
「それから今回の配信は、全配信者が対空装備を身につけて行うという画期的な感じになっててですねー。あ、私は飛びますが」
『なんだ、もう飛ぶのか? 向こうで戦闘は始まっておるからな! さっさと片付けるぞ!』
バングラッド氏がノシノシやって来た。
この人、今冬デビューだっていうのにデビュー前に露出がめちゃくちゃ多い。
兄としてはそれでいいのかな……?
まあいいか!
「じゃあがったーい!」
『うむ! バングラッドウィーング!!』
バングラッド氏が変形して、大型の翼になった。
私がこれを背中に装着すると、周りの配信者さんたちからおおーっとどよめきが上がる。
「こうして実際に見ていると、明らかに他の配信者となにか違う……」
シェリーさんがしみじみと感想を述べてますねー。
さて、バングラッド氏は背中に、ビクトリアをロックできる箇所を作り出している。
そこにビクトリアが専用装備で固定されれば……。
「完成! イカルガエンタ飛行形態です!」
※『うおおおお!!』『イカルガ最強とナンバー2が魔将をサンドして合体してるのよw』『なんて無体な航空戦力!!』『ビクトリアは足を固定して、腕は掴んでるだけか』『空中で立ち上がる気だ!』
「飛行速度も時速40kmくらいなので、ギリギリ立って戦えますねー。じゃあゴー!」
『行くぞーっ!!』
ぶわーっと飛び上がるバングラッド氏。
「レッツパーティー!」
ビクトリアはもう立ち上がり、両手にラーフを構えてる。
空中は色々なサイズのウェンディゴが飛び回ってるんだけど、これを地上から対空装備の配信者たちが迎え撃つ感じ。
飛んでる相手に武器を当てるの難しいよね。
ならこっちも飛んで敵の只中に突っ込んじゃえばいいのだ!
ということで、私たちは堂々と敵のど真ん中めがけて突き進む。
『!?』『敵! 敵!!』『凍りつけ!!』
英語を覚えたっぽいウェンディゴが叫びながら、ビームを出してくる。
まあ、普通にバングラッド氏には通じないし、ビクトリアも今の同接数だとこれくらいの攻撃はスルーできる。
私はと言うと……。
実は、翼にぶら下げられているだけみたいな感じなので、手足が自由なのだ!
ビームを視認したら、ゴボウでペチッと叩き返す。
このビームは、ウェンディゴの呪詛の視線なので、呪詛返しをすると全部相手にダメージが行くのね。
で、私が叩き返したらウェンディゴが『ウグワーッ』と裂けて消える。
ビクトリアはラーフを連射しながら、的確にウェンディゴを撃ち落とす。
バングラッド氏は、体当たりでウェンディゴを地面に叩き落とす。
落ちてきたら、ウェンディゴは他の配信者さんたちがタコ殴りにする。
完璧な布陣じゃないですか。
地上を、ブラックナイトとホワイトナイトの二人がバイクで爆走してる。
バイクは現代魔法で、黒と白のペガサスになり、空を飛び始めた。
「ハヅキー! 私たちも専用のテクスチャー作ってもらったわ! ぶっつけ本番だけど飛べるものねえ!」
ブラックナイトさんが並んでくる。
そして、ランスを使ってウェンディゴをサクサク刺した。
あのランスの使い方、騎馬戦と言うよりは狩りゲームのランスでは……。
「飛べると、割と敵は怖くなくなりますからねー」
「ハヅキたちより圧倒的にウェンディゴの方が速くない……? なのになんでゆっくり飛びながらあなたたちは無双してるわけ……?」
「そこはコツがですね。あちょっ」
『ウグワーッ!?』
またウェンディゴが視線を送ってきたので、打ち返してやっつけた。
「なるほど、カウンターマジックね! あの視線に反応するのは凄いわ」
「バッティングセンターのピッチングマシーンくらいの速度なんで」
「リーダー! あれって視線だから普通に光の速度よ!?」
ビクトリアに突っ込まれてしまった!
そうかなあ……。
地上戦も盛り上がっている。
シェリーさんは支配しているモンスターたちを呼び出して、彼らに弓矢を射掛けさせている。
おお、一人で軍隊になった!
あれが彼女の強さなんだなあ。
そうこうしていると、いよいよ敵のボスがお出ましになったみたいだった。
空を覆い尽くすくらい大きな影が、どーんと出現する。
影が大きな目を見開くと……。
地上のあちこちが連続で凍りついた。
「うぐわー!」「うわーっ」
配信者の人たちも悲鳴をあげてる。
でも、誰もやられてはいないみたい。
「強烈な視線! だけど……私たちがその真下にいて、受け止めてるから被害が少ないわ!」
ビクトリアはさすがにバングラッド氏の上に伏せている。
その上を覆うように、私たちをバリヤーみたいなのが包んでいるのだ。
「なんだこれ」
『きら星はづきの領域であろうが』
「私の領域!?」
※『新たなる力の覚醒来たな……と言いたいとこだけど』『いつもやってる謎のはづきっち時空みたいなのが可視化されただけじゃね?』『あー、だからはづきっちと戦うと、相手の調子が落ちたんだな』もんじゃ『超小規模で濃密な、はづきっちダンジョンと言えるかもしれない』
「なるほどー、そんなものが……」
『むっ!? ではきら星はづきを上に向ければいいのではないか! そおれ!』
バングラッド氏が裏返った!
私がなんか、視線を全部受ける感じになるんですけど!?
あひー!
シェフィールドを支配するボスデーモンと、ご対面なのだ!
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