第300話 終わる学園祭伝説

 結局!

 学園祭では一日中イベントスペースにいたのだった。


 カンナちゃんも来て、もう私のテンションが物凄いことになってぴょんぴょん飛び跳ねながら案内したんだけど……。

 彼女の正体、バレていないよね……?

 私の隠蔽は完璧だったと思いたい。


 彼女はこの後の予定が押しているということで、私のすごろくだけやって帰っていった。

 着実に売れっ子になっているなあ。


 まあまあ、それ以外でもとにかく忙しかった!

 両親の案内をしたり、イカルガの人たちもやって来たから色々教えたり……。


 合間合間でちょっとお菓子とかを食べたくらい。

 フルタイムで活動してたー。


「ごめんね、ごめんね。お客さんが途切れなくて……」


 委員長が本当に申し訳無さそうにしてくる。


「いいんだよー。ダイエット成功してしまった。お腹のお肉がちょっと減った気がする」


「お、お腹のお肉が!」


 なんで青くなるの!?


「わ、私の采配の失敗でチャームポイントが……」


「お腹のお肉はチャームポイントではない」


 とんでもない勘違いをなさっておられる……。

 えっ、というか、どうして私のチャームポイントの話を!?

 委員長は疲れているのでは?


 最後の参加者らしき小さい女の子が来て、私は彼女に目線を合わせてから参加賞を差し出した。


「ありがとー、きらぼしはづきちゃん!」


「どういたしましてー。あなたもこれで、はづきちゃんだよ!」


 私がお礼を言ったら、小さい子の目がまんまるに開いて、口がぽかーんとなった。

 そして、参加賞をぎゅっと胸に抱きしめると、ぴょんぴょん飛び跳ねながらご両親と一緒に出ていくのだ。


「まま! はづきちゃんだった! ほんものだった!! おんなじ! おんなじこえだった!!」


 ははは、子どもは可愛いなあ。


 ばいばーい!と手を振ってくる小さい子に、手を振り返す。

 うんうん、これで仕事は終わりだ。

 あー、学園祭を回れなかった……!


 ……と思ったら。


「実は学園祭終了まで、あと一時間あるんだ」


 委員長が粋なはからいを!

 どうやら、私が学園祭を楽しむために一時間早く終わりの時間を設定してくれていたらしい。


『何、外を見に行くのか! 我も行くぞ!』


 ぴょんぴょんぴょーんと飛び跳ねつつ、バングラッド氏が私の肩に飛び乗ってきた。


「じゃあ、いってきま~す!」


 ということで、学園祭の終わりを楽しむぞ!

 

 アトラクションを楽しむ時間は無いので、出店を巡ることにしたのだった。


 ジャージにきら星はづき風の髪型で、お好み焼きの出店を覗くと……。


「ひぇっ、はづきっち!!」


 そんなに似てる!?

 お好み焼き焼いてた先輩が息を呑んで動作をストップさせたのだった。


「あ、いえいえ、コスプレです、コスプレ……」


「あ、あー、そうですよね、そうですよね」


 なんで敬語なのだろう。

 だけど、お好み焼き一枚にオマケでさらに一枚ついてきたからヨシ!


「終わりの時間だからね。おまけしておきますね……。あっあっ、あの日登録してから、毎回配信見てますんで!! その、斑鳩様が復活したしわだかまりはもう無いっていうか」


 なんかもちょもちょ言ってるけど、オマケをくれるというのはとても優しい人なのだ。


「ありがとうございますー!!」


 私はめちゃめちゃ笑顔でお礼を言ったのだった。


 他に、ジュースを売ってる出店でジュースを買い……。


「ひぇっ、はづきっち!?」


 そこまで似てるかなあ……?

 だけどジュースの他にラムネをおまけしてもらった。

 嬉しい~。


 他に焼きそばとクレープとチキンケバブを買ってきて、飲食スペースで食べることにした。


「ひ、一人であの量を!?」


 なんだか驚かれているな……。

 今の私はお昼抜きだからね。

 めちゃくちゃ食べるよ!


 三口でクレープを食べて、ケバブをむしゃむしゃむしゃっと吸収し、焼きそばにお好み焼きを載せて山盛りにした。


「うわあ凄いことになっちゃったぞ」


 とか言いながら私はもりもり食べるのだ。

 横で、バングラッド氏が小分けになった焼きそばを食べながらラムネを飲んでいる。


『お主は本当によく食べるな!』


「食べるのは美味しいし楽しいし、いいことしかないですからね!」


『なるほど、至言かも知れん』


 二人で15分ほどで食べ物を平らげた。

 なんだか注目されていた気もする……。


 遅い時間になると、外からのお客さんはいなくなっちゃうから、残っているのはこの学校の生徒だけ。

 あちこちから、


「やはり」「あの食欲はやらせではなかった」「凄いもの見ちゃった」「コーラがどんどん消えていった」「あの量がどこに入ってるの?」「おデブ系配信者の飲み方してる」「でもあんなにたくさん食べるのに全然食べ方汚くないんだよね」「うんうん、むしろちょっと上品」


 フードファイター系配信者が流行っているのかな?

 食べこぼしは一切ないけど、私は一応、テーブルの上を常備していたウェットティッシュで拭っておいた。

 よし!


「腹八分目だね」


『どうせ夕食の時には腹が減っているのであろう』


「その通り~」


 バングラッド氏とそんなお喋りをしていたら、なぜか背後が「ざわっ」とかざわついた気がしたのだった。


 校内放送で、学園祭の終わりを告げるアナウンスが響き渡る。

 あちこちから拍手が聞こえてきた。


 今年の学園祭も終わりかあ……。

 準備は長かったけど、あっという間だったなあ……。


 月曜日は学園祭のお片付け期間ということで、授業はなし。

 さっきまでちょっとワイワイ賑やかだった学校の雰囲気が、緩くなっている気がする。


「お疲れ様でーす」


 私がクラスに顔を出したら、なんかみんなその瞬間にピシッとして「お疲れ様でーす!!」とか声を合わせてきた。

 なんだなんだ……!?


 ちゅ、注目されると陰の者である私は緊張してしまうのだが……!!


「先輩、明日のためにうちらは帰りましょ!」


「帰ろ帰ろー!」


「一日お疲れ様。肩もんであげる……」


 ぼたんちゃんに肩をもみもみされながら、私は教室を後にするのだった。

 うんうん、今年も楽しい学園祭だったのではないか……!


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