第294話 陰陽少女?はづきっち伝説
体育館での1on1だけど、ゴールの下で私がぼいーんとぶつかったら、向こうの女の子モンスターが『ウグワーッ』と弾け飛んで消滅したのでノーサイドになりました。
「すごーい! はづきちゃん、体当たりでモンスターをふっ飛ばしたよー! すげー!」
スパイスちゃん!!
年頃の女子を褒める言葉ではない……!
※『はづきっちのぶちかましは超威力なんだな……』『やはりこの程度の相手なら武器すら必要ではない……w』『ゲームならファールだけど、相手がノックアウトされたんでKO勝ちなんよw』
反則勝ちってこと!?
こうして体育館はクリア。
その後、二階に上がっての探索となった。
スパイスちゃんが次々魔法を使う。
やっぱりちゃんと呪文を詠唱して、魔法陣を空に描いて発動する本格的なやつだ!
いやあ、いにしえの魔法って凄いもんですねえ。
現代魔法はAフォンと連動してて、才能がある人はこれを指紋認証とかパスコード認証で呼び出して使えるんだよね。
だけど威力は限定的。
もみじちゃんみたいに場を支配できる規模の現代魔法はなかなかないのだ!
だけど、スパイスちゃんのは本物の魔法なので、効果がなかなかすごい。
「魔導書フレイムル! エクスプロード・ファイアボール!!」
おおーっ、空中に描かれた光の魔法陣からものすっごい火の玉がぶっ飛んでいく。
これが、空中に浮かんだ音楽家の顔の絵に激突して爆発した。
『ウグワーッ!』
ベ、ベートーベーン!
「ベートーベンがやられた」
※『はづきっち、あれブラームスやで』
「えっ、ほんと!? そう言えばヒゲが生えてる……」
音楽家の絵といえばベートーベンというイメージが……。
だけどブラームスの絵はまだまだ負けない。
炎を切り裂いて飛んでくると、口から光線を……。
「音楽で戦わないの!?」
※『はづきっちがツッコミを入れるとは……』『これ、モンスター側がガワだけマネてるんじゃね?』
「みたいですねー。じゃあ私がやってみましょう。私もほら、魔法みたいなものを使えるので……。ここにまたアンチのコメントから生成した式神がですね……」
※『当代随一の式神使い、きら星はづきが!』『呪詛返しの達人!』『時代が時代なら芦屋道満側だよな、絶対w』
「なんですとー!! 私はもっとこう、キラキラ輝く感じの陰陽術使いでですね……」
『もがーっ!!』
「はづきちゃん、ブラームス来てるー!!」
「あ、はいはい! ちょっと待ってね!」
飛んできたブラームスをデコピンで弾き飛ばす。
『ウグワーッ!?』
※『もう素手で勝てるのでは?』『今のはづきっちがフルパワーでやったら学校そのものが壊れるだろw』
「一応この後、地域で利用される予定の建物なので……。よし、式神で結界、このデザイン通りに移動して。はいはい」
式神たちのお尻をつつく。
『ダレガ、キラボシハヅキノイウコトナンカ……ウグワーッ!?』
あんまり動かなかった式神が私の指がツプッと刺さったので、パーンと破裂してしまった。
『ヒイーッ』
素直になった式神が動き出した!
ローアングラー式神と違って、言うことを聞いてもらうのがちょっと大変なのだ。
彼らが結界を作って、ブラームスの絵を閉じ込める。
『もがーっ!?』
発生した見えない壁にぶつかるブラームス。
ここをめがけて、私がピンポイントでバーチャルゴボウを……突っ込む!
逃げ場を失ったブラームスに、ゴボウが炸裂した。
『ウグワーッ!!』
粉々になるブラームスの絵。
「はづきちゃんやっぱりすごーい! スパイスの魔法だと、まだまだ強力なモンスターは仕留めきれないなあ……」
「私のはこう、力押しだからね……!!」
※『力で全てが解決されてしまうからな!』『はづきっちはパワー制御で苦心してるよな』『強くなりすぎたが故の葛藤』
「まあスパイスちゃんが魔法少女なら、私は陰陽少女なので……」
※『陰陽少女wwww』『抜かしおるwww』『呪詛少女では?』
お、お前らー!?
リスナーはすぐに後ろから刺してくるなあ!
まあ否定はしない……。
こうして私たちは音楽室を攻略した。
七不思議を次々にやっつける系のダンジョンなんだけど、多分ここで九つ目の七不思議かな?
七つとは?
哲学かな?
「まあ七不思議が七つ以上あるの、ゲームだとあるあるだよねえー」
「言われてみればそうかも知れない……」
私は大変納得した。
「さて、それじゃあ次の七不思議は……十個目だよね」
「十個目の七不思議……あはははははー」
スパイスちゃんは笑い声もかわいいなあ。
おじさん、恐るべし。
「……おや?」
※『最後の教室ですねえ』『廊下の突き当りに鏡が?』
「この鏡がダンジョンボスだったりするんですかね? どれどれ……」
鏡を覗き込んでみたら……。
その向こうに、私がたくさん見えた。
うわー、あわせ鏡だ!
「ちょっとはづきちゃん! 後ろに鏡が無いのにどうして一枚だけで合せ鏡になるの!?」
「そう言えば確かにー!」
スパイスちゃんは勘がいいなあ。
次の瞬間、鏡の向こうの私がニヤリと笑って、ぐっと両手を伸ばしてきた。
「あちょ!」
私、その手をバーチャルゴボウで叩く。
『ウグワーッ!?』
粉々に砕け散る鏡!
一気に解けるダンジョン化!
もとの廃校舎になってしまった。
※『身も蓋もない動体視力w!!』『咄嗟に致命的な一撃をカウンターで決めるのはさすがに草なんよw』『相手が悪すぎたな……』『魔将の衝撃波出してくるような突進を視認して的確にカウンターで仕留める女だぞ……?』
「いやあ、何が起ころうとしてたんでしょうねえ……」
「いやあー、はづきちゃん凄いなあ……。チャラちゃんとヤタさんが言ってた通りだあ」
スパイスちゃんがまた、かわいい声で笑うのだった。
本当にかわいいなこのおじさん……!
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