第295話 どんどん出来上がる、学園祭伝説
『我も学校というものを見てみたいな。特にこれから学園祭というものが開かれるのであろう。興味がある』
「バングラッド氏は好奇心旺盛だねえ」
『異世界には娯楽が戦いしかなかったが故な』
今はゲームにどっぷりのバングラッド氏。
自らVR空間に赴くこともできるし、ドラゴンなウェスパース氏と二人でオフラインやオンラインでゲームしたりもしてるらしい。
頭突きで空を飛ぶお相撲さん使いのウェスパース氏と、めちゃくちゃ体が大きくて打撃とか投げとかする女子使いのバングラッド氏の実力は一進一退。
『よしプラチナランクだ!』
『我もプラチナぞ!』
とか張り合ってる。
だけど、やっぱりオンラインで世界のつわ者と戦うのが一番楽しいのだとか。
『ゲームは楽しい……。しかし、ゲームだけというのもの健全ではない』
「魔将の人がすごくまともなことを言ってる!!」
『せっかくモノに溢れた世界に住み着いたのだ。様々なものを見聞きせねば勿体ない。だが、我一人では右も左も分からぬ。ということできら星はづき! お主についていくことにした』
「えー。でもバングラッド氏はおっきいから目立つでしょ」
『小さくなれるぞ。それ!』
シュルシュルと音を立てて縮小したバングラッド氏、デフォルメされた二頭身のちっちゃいフィギュアになった。
手のひらサイズだ!
きっと、すらいむろいどでバングラッド氏が商品化されたらこんな感じになるんだろうなあ。
これならばということで、私は彼をリュックに詰め込んだ。
家に持って帰り、翌朝一緒に登校する。
教室の片隅に、完成した素材が積み上がっている。
すごろくのマスだ。
大体25マスくらいで、きら星はづきの軌跡をたどる壮大なすごろくらしい。
シナリオはぼたんちゃんと委員長が書いている。
「どんなのが完成するんだろう……」
「先輩はイラスト班だから進行度合い分かんないですもんね」
もみじちゃんが登校してきたので、お喋りをする。
「うんうん。なぜか私がイラスト全般の監修をしている……。なぜだ」
「先輩、ほぼプロですもん。3Dまで自分で起こせるしアバター自作したりするじゃない。というか現役配信者に活動用アバターを提供してる女子高生なんて先輩以外にいないでしょ」
「そうか……そうかな……そうかも……」
「先輩は自分の凄さというか、ヤバさを理解しなさすぎです!」
めっちゃくちゃ持ち上げてくるじゃん!
リュックからバングラッド氏も飛び出してきて、
『うむうむ! きら星はづきはゲーム以外では強力無比な能力者であるが故な!』
「わあ、バングラッドさん連れてきたんですか!?」
「学校に来たいって言うので」
「人に見られたらどうするんですかあ!」
わいわい騒いでいると目立つので、当然目撃される。
「あっ、なにそれ!? かわいいー!」
机の上でぴょんぴょん飛び跳ねていたバングラッド氏を、クラスメイトがひょいっと掴み上げてしまった。
「あっ」
「あー」
私ともみじちゃんで思わず声をあげる。
『ほう、我がかわいいとな!?』
「喋った! 声もかわいいー!」
今のバングラッド氏、ボイチェンで声を甲高くした感じだもんね。
『ハハハ、面白いことを言う娘だ! では我と一つ勝負をするか?』
「勝負? なになに? なにするの?」
『モンスタータワーバランスバトルで勝負だ!!』
あー、スマホの基本料金無料アプリ!!
「おもしろーい! やろやろ!」
ということで、その女子とバングラッド氏が勝負を始めてしまった。
ちなみにバングラッド氏が使うのは私のスマホ。
この様子が面白いので、クラスメイトがたちまち集まってくる。
委員長までやって来て、
「この喋る人形何!? あなたが持ってきたの!? うーん、これは……お掃除ロボの延長なのかしら……。校則には喋って動く人形を持ってきてはいけないというものは無いし……。タブレットの延長だと考えれば……」
「委員長、これって式神じゃない?」
「式神!? あー、なるほどねえ」
なんで私を見るのだ。
きら星はづきではない私と式神は無関係ですよー。
『うおーっ!! 崩れろーっ』
「あー、負けたあ!!」
おお、現役女子高生を打ち破ったバングラッド氏。
両手を天に突き上げて雄叫びをあげている。
ちんまいSDキャラが、甲高い声で雄々しいことを言ったりのしのし動き回るのがかわいいらしく、みんなが次々勝負を挑んできた。
次々に打ち破るバングラッド氏。
伊達に半年以上ゲーム三昧だったわけじゃない。
なお、もみじちゃんがついにチャレンジャーとして現れて、バングラッド氏をこてんぱんにやっつけてしまった。
『ウグワーッ! 我、まだ道半ば……』
ポテン、と倒れるバングラッド氏。
これもまたかわいかったようで、クラスのみんながキャーッと喜ぶのだった。
その後、クラス一丸となってバングラッド氏の存在を教師から隠し通し……。
バングラッド氏が授業で感心して声を出したら、他のクラスメイトが声真似をしてフォローしてくれたり。
みんな優しいー。
なんでそこまでやるのだろう……?
「本当に気付いてない?」
ぼたんちゃんが大変訝しげなのだった。
そしてやってくる放課後。
椅子や机を、教室の隅にまとめた。
「うわーっ、イノッチと師匠凄いパワー!!」
「イノッチは分かるけど、師匠の馬力本当に凄いよね」
昨年の学園祭以来、一部の女子からは師匠と呼ばれている私なのだ。
でも、パワーそんなに凄いかな……?
机を四つ組み合わせたのを運べるくらいだけど……。
そして積み上げていたマスを展開する。
全部のマスには、仮のテキストが貼られ、イラストが描かれていた。
これを立てて、標識みたいな感じにする予定。
今日は買い出し班が、マスの数ぶんの棒を入手してくることになっているのだ。
どんどんと学園祭の準備が進んでいく。
「コスチュームとかはさ、ジャージにしよう」
委員長がそう言うと、みんながうんうん頷いた。
な、なぜジャージ!?
「はづきっちってジャージだし」
なるほどなあ……。
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