第268話 現場視察及び、はぎゅうちゃんと買い食い伝説
魔将が迫ってきているらしい。
割とゆっくりした移動なのは、ちょこちょこあちこちに立ち寄るたびにその海岸をダンジョン化させ、現地の配信者と戦ったりしてるからだ。
「結構被害出てて洒落にならないらしいですよ師匠。師匠は行かないんですか?」
はぎゅうちゃんとアイスクリームのお店で、塔のように積み重ねたアイスを一緒に食べている私。
ここからは東京湾がすぐ近くに見えるなあー。
「うーん、行ってもいいんだけど、迷宮省からダメって言われてて」
「アヒェー、なんでですか」
「私が行って、魔将とすれ違っちゃったら大変だからじゃないかなあ……」
「あー、予測進路は最終的に東京湾になってますもんね。どこで迎え撃つんです?」
「国際展示場じゃないかな。ちょうどコミックイベントの開催日直後だし、イベント参加のチケットもここに……」
「あっ、午前入場チケット買ったんですか!」
「実はアメリカからインフェルノがサークル参加してるんだよね。ラストバスターズのリーダーとしては本を買いに行かなくちゃ……」
「なるほどぉ」
私たちはあくまで一般人のふりをしているので、配信者ネームは出さないのだ!
それだけで案外気付かれない。
そして、二日目はアーリーチケットを2人分用意してあるんだけどね!
私もはぎゅうちゃんも、もりもりもりっと塔のように積み上がったアイスを食べきった。
「よし、次に行こう」
「おともします」
二人でのしのしと歩き回る、ここは本日お祭り広場みたいになっているお台場。
私たちは魔将撃退のための下見に来たのである!
そうしたらお祭りみたいなことがやっていたので、二人で買い食いしている。
おお、どれもこれも観光地価格だけど、結構美味しい。
生ジュースの屋台で、フルーツを指定してLLサイズで作ってもらった。
「おほー、新鮮なフルーツの味! クエン酸を感じる~」
「師匠がなんと幸せそうな顔ですっぱい系ばかり集めた生ジュースを飲むのか。あたしはバナナミルクのLLですねー」
「おっ、体を作る飲み物! もっとでっかくなるおつもりか」
「身長は176で止まったんですよー。多分。なんかこうですね、師匠と食生活を合わせてたら……肩と胸とお尻と太もも周りがきつくなってきて」
「あー、そこに栄養回るよね……。特に私たちは体を動かしてるから、筋肉も一緒につくので」
「そうそう」
たくさん食べると胸とお尻と太ももに回るという話をしていたら、横にいた女子たちがギョッとしたようだ。
「お腹につかない……!?」「どういうこと…!?」
しまった、興味を持たれた!!
探られてしまうと、私もはぎゅうちゃんもすぐに白状するタイプなので危ない。
「ス、スポーツしてるんです。私は野球とか」
「あ、あたしは格闘技。お相撲やレスリングみたいな」
「なるほどー」「やっぱアスリートはいっぱい食べても太らないのねえ」「でも私、必死にスポーツすんの無理」「分かるー、汗臭くなるしねえ」「今、絶対中学の頃より体動かないもん」
はあはあ。
お隣りにいた女子たちは女子大生らしい。
おしゃれな洋服の上からはキレイにみえるけど、確かに体の線が出過ぎない服を着てらっしゃる……。
ちょっと見える太ももとか二の腕はぷにぷにのぷにだ。
そこに、なんかおしゃれな男性グループがやって来て、私とはぎゅうちゃん、次に女子グループを見た。
「彼女たち、二人で遊びに来てるの?」
「あひー! こっち来たよ!」
「ヒェー! なんでこっちを選ぶんでしょうかね!」
私とはぎゅうちゃんがストレートに悲鳴を上げたので、男性グループがショックを受けた顔をした。
「そ、そんな大きな声で悲鳴をあげなくても」
「あ、すみませんすみません。ひたすら食べ歩き続けるために、グループで一番ご飯を食べる私と彼女で遊びに来たんです」
そう言うと、男性グループがなんか興味を持ったようだった。
「へえ、そうなんだ?」「なるほどねえ」「確かに栄養が蓄えられている」
むむっ、なんだかじろじろ見られている気がする。
「アイスとジュースだけではお腹が膨れてないので、私たちはここで……」
「あ、ちょっと待ってよ彼女たちー!」
うわー、追いかけてくるう。
「よし、ダッシュで逃げよう!」
「うっす!!」
ということで。
私とはぎゅうちゃんは加速した。
人気のある配信者のダッシュなんかあれですよ。
短距離走トップアスリートの最高速度に匹敵しますからね。
一瞬で男性グループをぶっちぎった。
「は、はええええええ!!」「あの娘たち、配信者だわ!」「あ、そりゃ関わられたくないわけだ……」「だな。他にアタックしようぜ」
男性グループ、元いた女子グループへアタックし始めたようだった。
良かった良かった。
現役配信者を口説いたりしてると、何かあった時にダンジョンに巻き込まれるかも知れないからね。
あとは迷宮省に身辺調査をされたりする。
「いやあ、びっくりしましたね師匠」
「したした。ただでさえ水分しか取ってないのに慌てて汗かいちゃって全部カロリー使っちゃったよ」
「じゃあ……行きますか、肉」
「行こう、肉」
二人で顔を見合わせてニヤッと笑った。
お台場近辺の下見なんてそっちのけで、私とはぎゅうちゃんは屋台巡りを楽しんでしまうのだった。
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