第260話 ビクトリアのご両親来る伝説
新人さんデビューイベントまであと少し……というところで、ビクトリアにとっての一大イベントがやって来た。
何があるかと言うと……。
「ママとパパが来るのよ!」
「なるほどー!」
「リーダー、迎えに行くから付き合って!」
「おかのした」
ということで。
私とビクトリアでお迎えに上がるのだった。
そしてそのために、会社のマイクロバスをビクトリアのマネさんが運転してくれる。
「今回のも動画にするんですよね」
「全部再生数のためだし、そのおかげでママとパパを結界付きの飛行機のファーストクラスで日本観光に呼べるようになったの!」
往復で一千万超えたらしい。
ひえーっ。
だけど、安全には替えられないしビクトリアはそれが出せるくらい頑張って稼いだもんね!
彼女の場合、配信とかよりは企業案件でなりきりおもちゃ系のがたくさん来るのと、FANcubeという投げ銭サイトが大きい。
あとは彼女のチャンネルのメンバーシップとファンクラブ……。
そしてビクトリアはイカルガエンターテイメントで、実はグッズの種類が一番多いのだ……!
私がなんか、やたら多彩なアクスタと抱き枕カバー以外は超大型アイテムしかないだけで、ビクトリアともみじちゃんは細かいのをちょこちょこ出してる。
もみじちゃんはフード関係の案件が多くて、グッズよりはそっちかなー。
ちなみに私は、メンバーもファンクラブもFANcubeもやってないよ!
再生数とスパチャと案件とグッズ販売だけです!
ここは、私と兄のこだわりポイント。
メンバーシップ配信とかやる暇が無いからね……!
はい、空港に到着です。
「行くわよリーダー!」
「おかのした」
飛び出して小走りに駆けていくビクトリア、追いかける私。
空港内は走ってはいけないので、歩調を緩めるビクトリア。
出迎える場所で飛行機の到着を待つ。
「アメリカから日本の空路は凄く安全になったんだよね」
「ええ。空中ダンジョンや機内ダンジョンの発生率が半分になったらしいわ。リーダーのお陰ね」
「はははは、買いかぶりだよー」
「普通にリーダーのお陰なんだってば」
それでも、閉鎖空間がダンジョン化する事故みたいなのは避けられないので、高度に結界化した飛行機とか船を使わないと旅はできない。
なので、旅客機なんかめちゃくちゃ高いのだ。
命知らずなら、今は結界の置き場所になってるエコノミークラスで旅をすることもできるけど、あそこは簡易ダンジョン化しやすいんだよねー。
今はファーストクラスとビジネスクラス以外は全部結界のために使っちゃうのが一般的。
だから一機飛ばすだけで何億っていうお金が吹っ飛ぶのだ。
あ、飛行機が降りてきましたよ。
無事に到着したようで何より……!
で、しばらくしたらなんかフラフラしながら見覚えのあるまんまるいおばさまがやって来た。
後ろには、ひょろっとして背の高いおじさまを連れている。
「ママ! パパ!」
「オー! マイドーター!」
感動の再会だ。
ビクトリアの突撃をガシーンと受け止める、まんまるママ。
パパはとてもニコニコしていたのだけど、私を見て歩み寄ってきた。
「ミス・ハヅキ。娘がいつもお世話になっています。ありがとう」
握手を求めてきた。
おお、慣れた感じの日本語。
「ふぁいんせんきゅー」
私は握手を返した。おお、結構力強い。
専攻してる勉強の関係で、私、英語はちょっとだけ分かる……。
読解は問題ない。
会話は中学生レベル……。
パパさん曰く、毎日ビクトリアの配信や動画を見て、楽しく過ごしているらしい。
彼女の活躍は地元カリフォルニアでも評判なんだとか。
「彼女のマネージメントをしております、イカルガエンターテイメントの……」
マネさんが名刺を差し出した。
おお、ビジネスマンらしきパパさんも名刺のやり取りを……。
「パパは自動車整備工場の主任なのよ」
「なるほどー!」
現場で戦う人だった!
ちなみにママさんは向こうのスーパーでアルバイトしてるそうだ。
「じゃあ観光に案内します。まずは回転寿司に……」
「オー!」
ビクトリアのご両親は歓声を上げるのだった。
ずっと飛行機の中で疲れただろうしね……!
こうして賑やかになったマイクロバスが走り出すのだ。
「えー、本日のプログラムはですね、これが観光のしおりで……」
私が作ったしおりを配る。
プレゼンソフトを駆使して作成したのだ。
イラストは自作。
回転寿司のあと、浅草寺やアメ横なんかを回って、そしてビクトリアにとっての聖地秋葉原と池袋へ……。
完璧。
かなりのハードスケジュールだって言うことを無視すればね!
そして実行!
回転寿司で御夫婦はめちゃくちゃ食べた。
これがアメリカンパワー!
なお、一番食べたのは私。
「オー……! ミス・ハヅキはそんなにたくさん食べられるなんて凄いな! なのにスレンダーなのは秘訣があるのかい? ワイフはご覧の通りとっても魅力的だけど、食べたものがすぐに彼女の柔らかなボディラインに変わってしまうんだ!」
「あら、私だってちゃんと運動はしてるのよ? キッチンに立つ時はいつもお尻を振ってるわ」
仲良し夫婦!
「私の場合はですねー、やってることが多いので」
「うんうん、リーダーと同じことをしたら普通の人なら倒れると思うわ……。彼女、バーチャライズのコス以外はほとんど一人でやっちゃうし、それも凄く早いの。その合間にこういうファンシーなしおりを作っちゃうし、片手間でスウィートハニーなカンナとトークしてるし」
御夫婦が「オー」と感心した。
「それじゃあ、私には無理だわ。すっかり痩せてしまうもの!」
あ、アメリカンジョークだ!
HAHAHAHAHAと盛り上がる私たちなのだった。
そして、流石アメリカンなファミリー。
体力があるらしく、私のハードスケジュール観光をやり遂げてみせた。
終わった後、マネさんがストーンとぶっ倒れたので、こっちが大変だった……!
しばらく休んでね……!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます