第258話 ここまで来たのに日帰り伝説
ダンジョンが消えて無くなったので、海水浴場に人が戻ってきた。
そりゃあもう、こんな晴れた夏の日には泳ぎたいもんね。
昼食を終えた私たちは、お蔭でバーチャライズを解けなくなってしまった!
「リーダーちょっとお腹出てる」
「ハヅキもあれだけ食べるとちゃんと形に出るのね」
「あひー、二人ともつつかないで~!」
お腹をつつかれると大変くすぐったい。
ちょっと動いてたら消化が終わり、お腹が減っこむから大丈夫。
ではせっかくなんで遊んで帰ろうということになり、二人一組になってビーチバレーなどやる。
ちなみに、私たちは全員、ビーチバレーのルールを知らない……!
ちょうど来ていた水着のお姉さんに、「あのう、ビーチバレーのやり方知ってます……? 教えてほしくて……」
「ヒエー!! はづきっち!? ビクトリアちゃんもいる!! 後ろは新人さん!? イカルガエンタだああああ。ああああ私でよろしければ幾らでもお教えします……」
おお、親切な人で助かった。
ということで、ビーチバレーのやり方を教わったのだった。
なんか妙に見物客が多い中、私とカナンさん、ビクトリアとファティマさんで組んで試合開始!
サーブ!
ネットにズバーン!
地面をえぐりながら倒れていくネット。
「凄い威力だ」「あんな破壊力のサーブ見たこと無い」「やっぱはづきっちはヤバいな、本当に強いんだ」「始球式で150km/hはマジだったんだな」
どよめきが走る!
「リーダー、あれを受けたら普通に粉々になるんだけど」
「ごめんごめん」
ファティマさんと一緒にネットを立て直しす。
今度は向こうで、ビクトリアがサーブしてきた。
おお、へろへろとボールが飛んでくる。
「うおおお、行くぞ!」
気合も勇ましく、これをカナンさんが跳ね上げた。
あーっ、明後日の方向に飛んでいく!
ということで、習いたての私たちが配信者のパワーに任せた、めちゃくちゃなビーチバレーをやったのだった。
うーん面白かった。
でもこんなに観客がいると不思議な気分ね……。
配信してるみたいなものだ。
ちなみにこの様子はAフォンで録画してて、後日に動画として配信する予定。
いつも応援してくれているお前らにお礼なのだ!
その後、スイカ割りなどやり。
ぐるぐる回しても全く揺らがないファティマさんが強さを見せつけ、カナンさんはその場で倒れ、ビクトリアはへろへろ歩いてこけた。
私? 私は迷いなく進みすぎて、スイカにつまづいて転んだよ。
そしてスイカが割れた!
セーフなのか、アウトなのか……。
ギャラリーは盛り上がってたけど。
二時間ほどそうやって遊び、流石に疲れてきた。
「よく考えたら、ダンジョンを踏破した直後だった」
「リーダー、私そろそろ歩きたくなくなってきたわ。多分疲れてるんじゃないかしら」
「私も立ち上がりたくなくなった」
「私はまだまだいけます」
おお、ファティマさん元気ー。
でも、うち二人の体力が尽きたもんね。
私たちはこれで引き上げることにした。
カナンさんをひょいっと抱き上げて、ビクトリアはファティマさんが背負って、撤退なのだ。
もう水着のまま帰るよ!
現地で用意してくれたマイクロバス、そして空港に向かい……。
水着姿の配信者ということで大変注目されながら、飛行機に乗り込んだ。
機内では爆睡ですよ爆睡。
気絶してるうちに東京に到着していた。
そしてまた水着で空港内を歩いて大変注目されつつ、迎えに来ていたマネージャーさんのマイクロバスに詰め込まれてイカルガエンターテイメントに帰還したのだった。
もう夕方だ……。
弾丸旅行だった。
尾道まで行ったのにダンジョンまで攻略したあと日帰りって。
贅沢でもあり、もったいなくもあり……。
「濃い一日だったなあ」
私の横では、ビクトリアがぐにゃぐにゃな姿勢になって寝てる。
あんまりな姿だったので、しっかり整えて私の膝を枕にしておいた。
よし!
後ろではカナンさんがお行儀よく寝ていて、ファティマさんはなんか鼻歌をうたいながら外を眺めている。
この人本当に体力あるなあ!
で、私はと言うとツブヤキックスをチェック……。
おほー!
水着で空港から空港へ練り歩いた私たちがスクープされてる!
『イカルガの新人!?』『カナンちゃんもいるじゃん! かわいいー!』『このムチムチの娘も新人!? ヌッ!』『凄いプロモーションをやったんだなあ』『めっちゃ注目されてるぞ!』
ほうほう、これは新人さんお披露目は大成功のようですねえ……。
プロモーションと言うか、単純に着替える暇も体力も無かったんで、そのまま飛行機で帰ってきたんだけど。
なんならまだ水着です。
これ、体に水着の跡が付きそうな……。
しばらく走って、イカルガエンタビル。
地下駐車場まで来てしまえばこっちのものなのだ!
ビクトリアとカナンさんを起こして……。
地下一階で熱いシャワーを浴びてから着替えて……。
レクリエーションルームでホッと一息。
自販機のカップラーメンを買ってずるずる食べた。
「リーダーがもう何か食べてる……!」
「あ、私もいただきますね」
「ファティマもよく食べる側だったか」
私はカレーヌードル、ファティマさんはシーフードヌードルを食べた。
「私、ちょっとデビューは不安だったのですが」
食べながら、ファティマさんが呟く。
「今日は皆さんにサポートしていただいたお陰で、ちょっと自信がついてきました。デビューする日が楽しみです」
にっこり笑う。
うーん、これはかわいい。
「ファティマさん、今日のお披露目でたくさんファンを付けたと思うよ。それに、ちょっと私とキャラが近いので、そこら辺も好きな人はいるかも……」
「ハヅキさんとですか? それはなんだか嬉しいです」
うーん、なんだこのかわいい人は。
私は近日中に行われる、カナンさんとファティマさんのデビューイベントは大成功するなと確信するのだった。
「ハヅキが保護者の目になってるわね……。まあ、気持ちは分かるけど」
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