第240話 ビルから行けるよ地の底ダンジョン伝説

「さっそく博多ラーメンを食べたいのですが」


「はづきっち、それは仕事が終わった後の方が最高に美味しいぜ!」


「えっっっ!? 本当!?」


 新情報だな……。

 でも確かに疲れた体に本場のとんこつは効きそう。


「じゃあダンジョン行きましょうか」


 そういうことになった。


「なんだこの姉ちゃんは? おっそろしく強いのは分かるが覇気っちゅうもんが全くない」


 現場に行ったら、髪の毛ツンツンに尖らせてヒゲをドレッドに編んだサングラスにトゲトゲ肩パットのドワーフの人が八咫烏さんとなんかお喋りしている。

 彼はゴズモックという名前の人で、彼らドワーフ青年団のリーダーらしい。


 青年団!?

 なんか全員、人間で言えば十代から二十代らしいんだけど。


 ちなみにドワーフの寿命は百年くらいですって。


「はづきちゃんはマイペースだからね。だけど、こう見えてもこの国の配信者では最強と言っていいよ」


「ほおー。人は見かけに寄らな過ぎる……」


 ワイワイ言うドワーフを引き連れて、ダンジョンが発生したというビルへ。

 私は、チャラウェイさんとカナンさんとゴズモックさんを連れて潜ることにした。


「ウェイウェイ。地上のではみんなが配信を見てるからさ。ドワーフはああ見えて案外戦闘タイプじゃないんだ。どっちかというと手作業に特化してると言うかな」


「おう! わしのような武闘派はそこそこの数だな。みんな鍛冶や細工物がメインだ」


「見た目に反して繊細な作業を得意とする種族だということは聞いたことがあるな」


 三人の話を聞いて、ほえーとなる私なのだ。

 さあ、そんなところで配信を始めてみよう。


「お前ら、こんきらー! 本日は! 福岡県博多市からお送りしまーす! ……えっ、福岡市!? 博多じゃない? す、すみませえん」


※『こんきらー!』『こんきら!』『いきなり場所間違えてて草なんだ』『九州に出張とはなあ!』『とんこつラーメン食べた?』


「まだなんですー。仕事が終わってから食べるので、ちゃっちゃと片付けるぞ! おー!」


※『はづきっちが燃えている!!』『やる気だ!』『食べ物が掛かると本当に強い』


 私が軽妙にコメント欄と掛け合いを始めたので、ゴズモックさんがびっくりした。


「な、な、なんだ!? いきなり饒舌になったぞい!!」


「ウェイ! あれが配信者のサガってやつだなあ! あ、俺も配信始まってるぜ! ヌルっとな! ヒャッハー!」


 チャラウェイさんの方でも、ノリのいいコメントがどんどん流れていく。

 エルフドワーフの二人はちょっと戸惑ってる感じかな。

 二人とも配信している風景は見たことあるけど、自分たちがコラボメンバーになる……みたいなのは初だと思うし。


※『はづきっちの横にいるのエルフさんじゃん!』『かわいい』『高貴な感じがする~』


「ど、どうもありがとう」


 褒められたことにお礼を言うカナンさん、律儀なのだ。

 ゴズモックさんはすぐにチャラウェイさんのリスナーと馴染んで、みんなでヒャッハー!とか言ってる。

 若さ~。


 カナンさん、人間に換算するとうちの母よりちょっと年下くらいだから仕方ない気はする!

 大人の魅力で攻めていこうね。


 こうして私たちはビルに突入したんだけど……。

 なんとこのビル、中身がまるっきり空洞になっていた!


 そして地下に向かって続く坂道があって、ぽっかりと開いたダンジョンへの入り口が赤く輝いている。


「あひー、なんですこれ!?」


※『火山ダンジョン!?』『福岡の町中にこんなものがー!』『これは大変なことですぞ』


「ウェイ、そいつは俺が説明するぜ。魔将バルログが福岡市に拠点を作ってる。こいつ、本当は阿蘇山を狙ってて、あれを噴火させるつもりだったんだ。だから俺と八咫烏の二人で食い止めて、どうにか福岡県に追い込んだ。これから俺たちは、バルログを仕留めに行こうってわけだ!」


 わかりやすーい!

 つまり、ラーメンを食べるためにお腹を空かせる必要があり、バルログ退治がそれだと!

 なるほどー。


※『チャラウェイと八咫烏の二人掛かりで追い込んだってことは、めちゃくちゃ強いのかバルログ!』『大罪勢ほどではなくね?』もんじゃ『大罪勢は本体が脅威なのではなく、環境を異世界へとテラフォーミングみたいに変化させることが恐ろしいと言われている。恐らくあれは、異世界がこの世界を改造するために送り込んだ刺客とも言えるのだろう』『有識者~』


 詳しいなあもんじゃ!

 まあ彼は考察勢なので、これもあくまで考察なんだろうけど。

 確かに大罪勢は自分がいる周りを、自分の世界に改造してたなあ。


 だとすると私はどうなるのかな?

 私もやってたりするのかなー。


「バルログは強いと聞く。あらゆる炎を操り、自らも炎に転じて災厄を振りまく……。森に現れれば、一夜にしてそこは焼け野原になると言われているわ」


「カナンさんも詳しいなあ!」


「鉱山だと被害は全然少ないがのう!」


「ゴズモックさんは楽天的だなあ」


 坂道を下っていく。

 そうしたら、私たちを出迎えるみたいにモンスターが現れた。


 炎に包まれた骨みたいなので、やっぱり燃え上がる炎の翼がある。


「フレイムスケルトンだぞい! バルログの手下だ!」


「オッケー! 慣れた相手だ! 俺が行くぜえ!! ヒャッハー!!」


 チャラウェイさんがトマホークを放り投げながら、フレイムスケルトンに躍りかかる!

 なんかトマホークにロープがついてて、相手を切り裂きながら引き戻して、振り回したりもできるみたい。


 新しい武器だあ。

 私も負けてないぞ。


「じゃあですね、ここで新しく開発した、アンチ蠱毒式神を敵にぶつけてみます」


※『ダンジョンでアンチを使役する!?』『はづきっちが新たなスタイルに目覚めたぞ!』『趣味は良くないがw!』


 Aフォンが吐き出したアンチのデータを、ポーチから取り出したお符に閉じ込めて……。


「むにゃむにゃ、せつ!」


 ボフン、と音がして、お符に手足が生えた。

 式神だ。

 これが私目掛けて、『キラボシハヅキチョウシニノッテル!』とか言って踊りかかってきたので、私はデコピンでふっ飛ばした。


『ウグワーッ!』


 式神がフレイムスケルトンにぶつかる。


『ウグワーッ!』


 フレイムスケルトンもろとも、坂道をゴロゴロ転げ落ちていった。

 私はアンチ蠱毒式神を幾つか作りながら、フレイムスケルトンに投げつける。


『ウグワッ、ウグワッ、ウグワーッ!!』


 あっ、式神もろとも燃え尽きて消えてしまった。


「式神はちょっと威力弱いですねー」


※『そもそもはづきっちに逆らうし、攻撃方法も式神投擲だしw』『式神の必要性~~!!』


「アンチはあんま強くないからちょっと使い道が難しいですねえ」


※『煽りおるwwwww』『陰陽術を使うよりも本人が殴りかかったほうが遥かに強いからなw』『ゴー、はづきっち!!』


「いっきまーす!」


 私は坂道をトコトコ降りると、群がってきたフレイムスケルトンをポコポコ叩いて殲滅していく。

 向こうも炎をブオーっと吐いてくるので、これはゴボウで撃ち返した。


『ウグワーッ!!』


 ゴボウで打ち返すと、炎がピンク色になってフレイムスケルトンを焼き尽くすのね。


「炎を支配した!? これが、ゴボウアース最強の配信者の戦い方……」


※『いや、俺たちも知らんw』『はづきっちが次に何をするのか、いつもさっぱり分からんw』


 私もノリでやっているから、あんまり分かってないのだ。

 こうしてビル地下、火山ダンジョン攻略がスタートしたのだった。



 

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