第238話 はづきっちの闇!?アンチ蠱毒バトル開陳伝説

「お前ら、こんきらー!」


※『こんきらー!』『こんきらー!』『今回の配信予告のあれなんなんだ……?』『アンチ蠱毒(こどく)バトルとは……?』


「えー、私がいつもアンチのコメントを保存して、戦わせて遊んでるという話はよくしてますが」


※『鋼のハートの女はづきっちの逸話なw』『ここのリスナーならみんな知ってる!』『でもどうやって戦わせてるんだ?』


「そうそう。どうやって戦わせてるの? という疑問をよくもらうんですよね。なので今回は、以前までのやり方と今回の新しいやり方をみんなに見せていこうと思います。まずAフォンを用意してですね」


 私のAフォンがふよふよと飛んでくる。

 この子に、アンチコメントをコピペしたものを転送する。


「こうすると……またパソコンに、アンチコメントを戯画化した感じのクリーチャーが出てきます」


『キラボシハヅキハ、オトコニコビテル!!』『ピーッハイシンシャ!!』『ミンナデ、ボイコットシヨウ!!』


「可愛い鳴き声ですねー」


※『こっわ』『はづきっちマジでニコニコしてるじゃん』『敵に回したらあかん』


「このアンチクリーチャーをですね、闘技場に注ぎ込みます。これ、時間制限でだんだん崩れていくんですが……あ、私がプログラミングの練習で中学の時に作ったやつで」


『コビテル! ギャアー』『ピーッ! ヒイー』『ボイコットー!』


 クリーチャーが争い始めた。

 彼らがいられる場所はどんどんなくなっていく。

 だんだん狭くなる空間で、クリーチャーが押しあい、もみ合い、負けたのが消える闘技場に巻き込まれた。


『ウグワーッ!』


「えー、言葉が聞き苦しいので断末魔はミュートしてます。こうして最後に一人生き残ったのをですね」


 マウスでクリックしてドラッグし、Aフォンに送りつける。


『ギャピーッ!』


 生き残りはAフォン上で殿堂入りとしてフォルダ保存してあげようねえ。


※『なんちゅう遊びだw』『マジで蠱毒じゃん!!』『こっわ』


「こうですね、なかなか配信者としてのモラルもあるので、困った発言に感情的に言い返したりはできないんですが、こうやって私は平和的にアンガーマネジメントをしててですねー」


※『確かに怒りは湧いてこないわ……』『アンチに哀れみすら覚える』


「アンチを消すと、なんだか元気が湧いてくるんだよね、こう物理的に」


※もんじゃ『ハッ、ま、まさか暴食の力を制御しきったのは、アンチの力をこうやって食っていたから……!?』『な、なんだってー!!』『大罪の力、闇深なやりかたで解消されていた……!』


「あ、なるほどーっ! ああ、それでですね。今日の本題です。うちの顧問陰陽師がいるんだけど、ちょっと陰陽術を習いまして」


※『陰陽術を習う!!』『さらっと出てくるセリフじゃないぞw』


「ぼたんちゃんが才能があるっていうんで、陰陽術のトレーニング受けてるんですけど、彼女のモチベーションのためだって言われて私も参加して。そしたら宇宙さんが案外筋がいいぞっていうんで教えてくれたんですね。えー、九字を切ります」


 呪文を唱えながら、空中に格子を描く。

 これを、「せつ」と言いながら斜めに切った。


※『空中に光の筋が見えるw』『これが付け焼き刃の陰陽術の姿か……!?』『ゲームと陽キャ関係以外はなんでもできる女』


 そうしたら……。

 別のアンチコピペがバーチャライズして、画面の外に飛び出してきた!

 これがなんかピーピー言いながら、折り紙の人形みたいな形になって部屋を走り回る。


 私は部屋の一角に四枚のお符を貼った。


「これですね、私の髪の毛をザクザクに切ったのをインクに漬けてですね、一晩寝かせたやつで書いたお札。新しい技を覚えたんだよねー」


※もんじゃ『アンチを鬼として実体化させ、さらに自家製の結界に閉じ込めた!?』『はづきっち陰陽師になってるじゃん!!』『しかもマンガとかアニメで見るタイプの陰陽師だw』


「いえ、アンチを鬼にして結界に閉じ込める術しか使えないんですが」


※『なんでそういうのだけ習ったのw』『はづきっちたる所以(ゆえん)だなあ……』


「ぼたんちゃんはもっと凄いのを覚えたので、彼女の配信にみんな期待してて!!」


※ぼたん『はづきちゃんプレッシャー掛けるのやめて!?』『ぼたんちゃんおるやんw』『よう見とる』


 ちなみに後日知ったんだけど、私のこの配信は冒険配信者界の魔法使い系の人たちも見てたらしく。

 今後の配信者界で、アンチコメントに対してはこういった対処をするところが増えたんだって。


 せっかくアンチに対処するなら、楽しくストレス解消しないとね。

 さあ、うちのアンチ蠱毒もいよいよ大詰め。


「これ、一週間で集めたアンチなんですけど、大体250くらいいて」


※『多い多い多いw』『アンチを半畳くらいの空間に250匹ギュウギュウ詰めに!?』


「蠱毒スタート! たたかえー! 生き残るのは一人だけ!」


 私は結界の外側から、ゴボウを突っ込んでアンチをツンツン押す。

 ゴボウで突かれたアンチが、『ウグワーッ!!』と言いながら崩れ落ちていく。

 これを見て、アンチは慌てて戦いを始めた。


 私は少しずつ、ゴボウを結界に押し込んでいく。

 ゴボウに触れるとアンチは消えてしまう。

 逃げながら、スペースを確保するために戦うのですアンチ!


「がんばれがんばれ、がんばれがんばれ」


『ウグワーッ!』『ウグワワーッ!!』『ウグワワワーッ!!』


 アンチがどんどん減っていく。

 ついに、最後の一人になった。


『キラボシハヅキハ、マショウトグル!! キラボシハヅキハ、マショウトグル!!』


「元気なアンチですねー」


※『元気に叫んでるけど、もう二センチ四方くらいの隅っこに収まってる状態じゃないかw』『後ろは結界、左右はゴボウ……!』『アンチは無惨な最期を遂げるのか……』


「じゃあ、勝ち残ったアンチは結界から出してあげます。せつ!」


 私が印を切ったら、お符が力を止めた。

 外にぴょーんと飛び出すアンチ。


『キラボシハヅキハ、マショウトグル!』


「ご飯よー」


 そこで私が呼ぶと、部屋の天井近くを飛んでいたAフォンがスーッと降りてきた。

 画面がピカピカ光って、アンチを吸い込み始める。


『キ、キラ、ボシ、ハヅキハーッ!! マショウ、グル、グルグルウグワーッ』


 アンチがフォルダ保存されながら、Aフォンに吸い込まれていく。

 そうしたら、Aフォンがピョーンと元気に飛び上がった。

 エネルギーを補充した感じ?


※『ど、どういうことだってばよ!』


「これは私が独自に見つけ出したんだけど、選りすぐりのアンチコメントをこうやって保存させると、凄いエネルギーが出てくるっぽいんですねー。これをAフォンにあげると元気になります」


 多分、アンチ活動も人のエネルギーなのだと思う。

 同接のみんなが応援してくれると私が強くなり、アンチエネルギーを蠱毒させて高めると、Aフォンのエネルギーになる。

 戦い合わせている間に、アンチのなんかマイナスな感じのエネルギーは普通のエネルギーになっているのだ。


 悪意よりも、追い詰められまくるから生存本能に特化しちゃうというか。


「これ、みんなもアンチにやられたら実行してみて下さい。今だとAIでアンチコメントを擬人化できるフリーソフトもあるんで、これで戦わせるといいですよ! 崩れる闘技場プログラムはこの配信後に無料で配布します!」


※『うおおおおお』『俺たちも家で手軽に蠱毒ができちゃうってコト……!?』『お手軽に蠱毒のやり方を広めるなw!』


 こうして、蠱毒配信は大好評の中で幕を閉じた。

 その後、私にアンチ活動をしてくる人はなぜか、結構減ったのだった。


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