第223話 猛者が集うよ! ツイスター伝説

 始まってしまった。

 イカルガエンターテイメント主催、女性配信者ツイスターゲームトーナメント。


 いきなり募集して開始したのに、めちゃくちゃ大きな企画扱いされている!


 そしてイカルガにたくさんの女性配信者が集まっているのだ!


 ライブダンジョンさんとは、向こうのGW企画と被ってしまって今回はご縁なし。

 なうファンタジーも企業勢だし、急には身動きが取れない人が多かったみたいだけど……。


「こんにちは! なうファンタジーEN所属の蒼穹マリトですぞ!」


 なんか明るい感じの外国の人が来た!!

 えっ、EN!?

 なうファンタジーの!?


「オー! ステイツを救ったバードック(ゴボウ)の女神、ハヅキチャン! お会いできて光栄ですぞー!」


「に、に、日本語上手いですねえ」


 なんか手を取られてぴょんぴょんされてしまった。

 蒼穹マリトさんは、赤毛で焦げ茶の目をした、ちょっとそばかすのある女の人。


 私に接触している姿を見て、遠くのぼたんちゃんが目を釣り上げてなんか言ってる。

 あっ、はぎゅうちゃんに持ち上げられた。


「マリトはですねー。今は日本を拠点に活動していますぞー。日本食、日本の文化、日本のアニメとマンガとラノベとゲームが大好きですぞ!」


「な、なるほどー!!」


 なんと登録者数も45万人という凄い人なのだ。

 ビクトリアとはちょこちょこ接触を取ってたみたいで、今回は彼女の伝手で参加ということになったらしい。


「日本の人たちは色々すぐに動けなかったりですけど、マリトはENですぞ。フットワークがライトですぞー!」


 おお、やる気満々!

 ぴょんぴょん飛び跳ねると、彼女の胸元もゆさゆさ揺れるのだった。


「はづき先輩も似たものを持ってますけどね……!!」


「もみじちゃん、いつの間に……!!」


「オー! モミジチャン! ソーキュート! 配信で見てるままですぞー!」


「あっはい、もみじです!! 初めましてマリトさん! 今日はライバルですよ。どっちがはづき先輩とツイスター配信できるかの権利を掛けて、正々堂々勝負です!」


「オーケー! 武士のケットウというやつですね! マリト了解ですぞー!」


 日米の戦いが勃発するー!!

 ということで。


 私はなんか用意された玉座みたいなのに座って、女子たちのツイスターバトルを眺める事になった。


「なんで体操服衣装なの?」


※『ツイスターゲームだからです』『体操服はづきっちがツイスター!?』『これは我々のハートも熱くなる……!』


 ちなみに!

 この日のために野中さとなさんはアバターを作り、本人が参加している。

 凄いガッツだ……!


 配信者デビューしちゃうんじゃないかあの人。

 野中さんだと分かるような意匠がしっかり出てるし、昨夜急遽アバターお披露目してたし。


「生身でやるとブランドイメージが……って事務所に言われたの! だからアバターを作ってもらったわ! このために稼いでるんだから!!」


 す、凄いやる気だー!!


※『ガチ恋勢こっわ』『すげえパワーだw』『うおおーっ、ツイスターで他の配信者女子をねじ伏せていく……!!』


「うぐわーっ」


 無茶苦茶な態勢になった配信者の女の子が、ぺたっと崩れ落ちた。

 失格です。


 退場の時に一言、自分のチャンネルのアピールタイムがあるので、そこで宣伝して笑顔で去っていく。

 画面下にはアドレスと、ワイプでチャンネルのおすすめ動画がちょっと流れるのだ。

 あー、これはいいイベントだなあ!


※『みんなが幸せになる企画じゃん』『やるなイカルガ……!』


 勝利した野中さんが、うおーっと雄叫びをあげ、その迫力にみんなが拍手をしている。


「凄い情熱……。何が彼女をそこまで掻き立てるんでしょうねー」


※『お前だお前w』『またしても何も知らないはづきっちw』『鈍感力天元突破ですわ』


 何を言っているのかね……?

 そして、次なるみんなの戦いを見る私。


 あーっ、もみじちゃんがぺちゃっと潰れた!

 小柄だと手足が届かなくて大変らしい。


「モミジチャン! 仇は取るですぞー!! 江戸の仇を長崎で取りますぞー! デジマパワー!!」


「マリトさん、それ使い方違うー! でもことわざ知ってるの凄い」


 おお、芽生える友情……!

 もみじちゃんを破ったマリトが準々決勝進出なのだ。


 予選から準々決勝までが三人、準決勝で二人が勝ち上がり。

 そして決勝は私を加えて三人で行われる。


 総勢36人も配信者さんが参加してるのか!

 大きいイベントだなあ。


 のほほんと眺めていたら、大会の休憩タイムに入った。


「じゃあはづきさん、なんかお願いします」


「なんか!?」


 スタッフの人から無茶振りが来た!

 だが、確かに見ているだけの私が何もしないというのはフェアじゃない。


 やりましょう……。


「えー、では最近釣瓶火で練習したバッティングを……」


 バーチャルバッティングマシーンが出現し、私はバーチャルゴボウを手にする。


※『どういうシチュエーションだw』おこのみ『体操着のはづきっちが大きく足を振り上げての一本足打法を!? うおおおなんという太さだ! さらにできるようになったな!!』『いつもはジャージに隠されたり、バトル中で注目が難しいむちっとしたおみ足が……』『ありがたい……寿命が伸びた……』


 長いコメントが流れて行った気がする……。

 妙に私のふとももに注目するリスナー多くない?


 と、ここでスタッフさんがなんか野球っぽいBGMを流してくる。

 マシーンが放ってきたバーチャルボールは猛烈な勢い。


 私はこれを狙いすますと……。


「あちょっ」


 カキーン!!


 スタジオを吹っ飛んでいくバーチャルボール。

 バーチャルゴボウを通じて、手にバーチャルな打撃の感触もある。

 最近のバーチャルは凄いなあ!


 スタジオ壁面に『ホームラン!!』という表示が出て、休憩中の女子たちがうおおおおお、とどよめいた。


※『現役女子高生とは思えないほどの体幹』『全身をフル活用して打ったな!』おこのみ『ナイバッチ!!』たこやき『はづきっちだけ別のゲームしてる』


 その後、私は連続七回ホームランを放ち、場を大いに沸かせたのだった。


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