第221話 店頭に自分のグッズが並んでる伝説
世の中では、ついにここ二十年起きていたのダンジョン発生現象の原因が判明したということで大騒ぎになっている。
それは私の配信で、あの樹木っぽいダンジョンボスが「実はこうだったのだ!」みたいにお喋りしたからだ。
なお、うちのお前らは大変落ち着いており、
※『はづきっちがもうちょっと人の話を聞く子であったら、半年早く判明していただろうな』『然り然り』
なんて言っているのだった。
なんですってー!
私はちゃんと人の話は聞くタイプなんだけどなあ……。
今日は久々にオフなので、自分の部屋でぼーっとしていた。
隣からは、ビクトリアがリスナーさんと雑談配信している音が聞こえる。
ちょっと覗きに行ったら大騒ぎになった。
「リーダー! 話題が全部リーダーのことになっちゃうから今日はダメ!」
「ええ~」
ということで自室でぼーっとするしかない私なのだ。
ツブヤキックスなどを見ていると、『ビクトリアの配信に当たり前みたいな顔して突然はづきっちが出てきたんだけど!!』『やっぱ一緒に住んでるって本当なんだな……』とか流れてくる。
私がちょっと動いただけで話題に……!?
どうなっているんだ。
だが、こうしてぼーっとしていると段々と眠くなる。
今日はこのまま、昼ごはんまでぐうぐう寝てしまってもいいか……。
と思ったら母に呼ばれた。
買い物に行くらしい。
ビクトリアの配信にも母の呼ぶ声が乗ったので、ビクトリアがきら星はづき家にホームステイしているという説が証明された……らしい。
「どこ行くの?」
「夕食の材料を買いに行くのよ。そのついでに、あなたのグッズがあちこちに出ているって言うから見てこようと思って」
「あひー、娘のグッズを見るために娘を連れて行くの!?」
「本人の説明が聞けそうだもの」
母はこう見えて押しが強いので、私はそういう目的の外出に付き合うことになってしまった。
うーん、照れくさい……!
立ち寄った近場の本屋さん。
「ほら、あなたが表紙になってる」
母が嬉しそうにひそひそ声で言ってくる。
あっ、これは写真週刊誌……!
表紙にするからって撮影に呼ばれて、ちょっとだけ写真撮ってもらったんだよね。
忙しかったので数枚だけ。
拘束時間が一時間しか確保できなかったからね。
大変美味しいたい焼きがお礼に待っていたので、私はやる気になってビシッと決めた表情で映っていた。
「あなたはいつも、ほんわかした笑顔が素敵ねえ」
ほんわか!?
私なりにビシーッと決めたつもりなのに!
こ、この写真は加工されている~っ!!
通り過ぎる学生さんたちが、「あ、はづきっちが表紙になってる!」「もうアイドルみたいなもんだもんな」「はづきっちの写真集でないのかな」「出たら絶対に買うわ」とか言ってる。
と、と、とんでもないことを!
そんな話が兄の耳に入ったら、実現しちゃうでしょうが!
私が戦慄している間に、母は写真週刊誌を購入した。
中には、私がたい焼きをパクパク食べている写真とかが激写されている。
なんちゅうところを撮影しているんだ。
他のグラビアがなんかセクシーだったり美人だったりするのに、私だけ食べてるところや、撮られてるのに気付いて慌ててるところとか、思わず笑っちゃったところとかばっかりではないか。
な、なんたる不公平~。
「すごくいい写真じゃない。腕のいいカメラマンさんだったのね」
そうなの!?
母はちょっと読んでニッコニコ。
そしてまたカバンに雑誌を戻してから、次なるお店に向かった。
スーパーに行く前に立ち寄ったのは……ホビーコーナー……!?
その一角に私が足繁く通うアニメショップがあり、完全にイカルガエンターテイメントコーナーとなった場所がある。
おお……私のアクスタ七種にコースターが三種、私がプリントされたTシャツに缶バッジが五種……。
フィギュアの予約が始まっている……。
ちなみにベストラフィングカンパニーさんでは、私のデフォルメフィギュアも同時作成が始まっていた。
発売日は同時期になるとか。
そこまで私を商品化して売れるのか……!?
わ、分からん。
母はニコニコしながら、缶バッジを二つくらい買っていった。
「それどうするの?」
「カバンに付けるの」
「あひー、娘のグッズをカバンに!」
「可愛い娘の活躍が缶バッジになってるんだもの。それにこれが一番どこにでも連れていけるわ」
つ……強い!
ちなみにアクスタと缶バッジは、もみじちゃんが二種類ずつ、ビクトリアが三種類ずつ出ていた。
二人とも着実にメディア進出している。
それからビクトリア、近々バーガーショップとのコラボがあるらしい。
店内アナウンスもやるらしいから、こっちは私が楽しみにしてる。
母はアニメショップが物珍しいらしく、店内を歩き回っている。
その間に私はサササーっと移動して、カンナちゃんの新作アクスタとマグカップを購入した。
フフフ、今日早速これでココアでも淹れて飲もう……。
私はグッズを日常で利用する主義なのだ。
最後に向かったスーパーで、配信者チップスなるお菓子が売っていた。
配信者カードがランダムに封入されているらしい。
これを母は二つ購入。
「お母さん、それ、中身はランダムで……」
「知っているわよ。だけど、もしかしたらあなたが当たるかも知れないじゃない」
「私、配信者チップスの写真は一枚しか提供してないので確率は低いと思うけどなあ……」
そんな私の思いをよそに。
自宅でスリーブを開けた母は、見事に私のカードをゲットしたのだった。
あひー!?
なんかカードがキラキラとラメが入って光ってるんだけど!
えっ!?
SSRなの!?
「やっぱりあなた、どこでも愛されてるのねー。お母さん嬉しくなっちゃった」
そう言った母が、私グッズをまとめて神棚に上げたので、や、やめてー! と抵抗する私なのだった。
ちなみに。
あと一枚はチャラウェイさんだった。
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