第220話 圧倒的成長! はづき傾聴伝説
『ぐぶぶぶぶぶぶ……。気づいたようだな……。そう、我こそがこのダンジョンを統べるアナザーワールドの尖兵……』
※『なんか勝手に新しい設定を樹が喋りだしたぞ』『明らかにさっきとは言語が違う。Aフォンが異世界語を翻訳してくれてる?』『助かるー』
コメント欄が反応したので、樹木っぽいダンジョンボスはちょっと機嫌が良くなって喋り始めた。
『アナザーワールドにおわすあの御方は、決断されたのだ! 人類を堕落させてダンジョンを発生させ、争わせる第一計画、そして人類の中から強力な尖兵を生み出す第二計画を破棄し、自らの手でこの世界を侵略すると……』
「じゃ、倒しますね……」
私はゴボウを持ってトコトコ近づいていった。
※『ストーップはづきっち、ストーップw!!』『いかん! また全然話を聞かないうちにやっつけてしまうぞ!』『はづきっちは常に最前線で最新の情報に触れているはずなんだが、全く耳を傾けずに最速殲滅するから何も情報を得られないんだ!』迷宮省公式『ちょっと聞いておいてくれませんか……! お願いしますから』
コメント欄がダーッと流れて、それでも歩みを止めない私に、今度は倒れかかってきた。
私の頭にコメント欄がコツーンとぶつかる。
「あひー」
※『鳴いた!』『止まったぞ!』『俺たちの力で話を聞かないはづきっちを止めることができた!』『なんだこの連帯感w』
樹木っぽいダンジョンボスは、ちょっと唖然としていたが……。
まだ喋っていいらしいことに気づき、咳払いした。
『ご清聴に感謝する。つまり、我はその第三計画の尖兵なのだ! 村人たちの恨みのパワーを使い、この世界に顕現することに成功した。これよりアナザーワールドはこちらの世界、ゴボウアースへの侵攻を開始する!』
「地球を変な呼び方してる。なるほど、よくよく聞くとアニメとかみたいな展開なんですねえ」
私はうんうん頷いた。
聞いてみると色々分かることがあるね。
でも私は今のところなんも分からないよ!
「じゃ、倒しますね……」
※『はづきっちがまた動き出したぞ!』『くそーっ、コメント欄によるファーストアタックに成功したが、本体も頑丈だw』『もう止まらんだろうな……』迷宮省公式『あ、情報は記録しましたのでこのまま倒して頂いて結構です』
迷宮省からもお墨付きをもらったぞ。
私はゴボウとバーチャルゴボウの二刀流で樹木っぽいのに接近した。
『ははははは! 情報はこの世界の人間どもに流れたようだな! では迷い込んだ貴様を処理するとしよう! どうやらこの世界には第二計画を単身で撃破したとんでもない奴がいるようだが、そいつが現れる前にお前の力を吸ってパワーアップを……』
※『あれ? こいつが言ってるのって』『はづきっちだよな』『つまり、一番ヤバい相手が初手で来たってこと?』『あっ……』『あっ……(察し)』『なむ』
伸びてくる枝が、鉤爪とかになる。
葉っぱが舞い上がって刃物になり、これがぐるぐる回ってカミソリの竜巻みたいに変わる。
吊り下がっていた死体みたいなのが次々地面に降りて、樹木人間になって襲いかかってくる。
おおーっ!
多芸!!
「かなり攻撃のバリエーション多いですねー。今までのデーモンと全然違いますねー。でもまあやることは一緒なんですよねー。あちょっ」
『ウグワーッ!?』
枝をパカスカ払って、カミソリ竜巻をゴボウで両断して、樹木人間を伸びるバーチャルゴボウでポコポコ叩いて粉砕する。
『えっ!? えっえっえっ!?』
私はサササーっと近寄って、バーチャルゴボウを縮めて胸元に差しておく。
で、両手持ちになったゴボウで「ほいやー!」とダンジョンボスを叩いた。
『ウッ、ウグワーッ!? なんだこの威力はーっ!! わ、我が、我がたった一撃で滅ぶ……!? まさか、まさかお前が第二計画を』
「あちょあちょ!」
ぺちぺちぺちっと叩いたら、『ウグワーッ!!』と叫んで立ち枯れてしまった。
そのままサラサラと風化して崩れて行ってしまう。
※『あーあw』『最後はまた話を聞き流したw』『だが敵の言い分をちゃんと最後まで話させたのははづきっちの成長を感じる……』『俺らの介入があったからだがな……』『いや、きっとはづきっちは自力でもそこにたどり着いたはずだ! 多分』おこのみ『谷間にゴボウ!!』
おっ、私褒められてる?
ありがとうございます、ありがとうございます。
※カンナ『はづきさんが敵の話をちゃんと聞いてあげたと聞いて』『カンナやん!』『カンナちゃんもよう見とる』
「カンナちゃん!! うひょー、テンションが上がって参りました」
私はぴょんぴょん飛び跳ねて喜びを表現した。
これを見てドッと沸くコメント欄。
※『もうダンジョン攻略終わってるのにw』『普通のテンションでダンジョンをクリアしてたんかw』
いやあ、もうね、ダンジョンは平常心でやってますんでね……。
空を覆っていた霧が晴れていく。
日差しがさんさんと差し込み初めて、廃村のあちこちにあった怪しい建物も『ウボアー』とか言いながら消えていった。
ただの静かな、森に呑まれかかっている場所になってしまった。
「お見事です!」
空から陰陽道的ヘリコプター、カラスが降りてくる。
ちょうどダンジョンボスをやっつけたところが、降り立ちやすい場所になったみたい。
迷宮省の人が降りてきて、アタッシュケースを開いた。
そこからAフォンが二つ飛び出してくる。
「なんですこれ?」
「陰陽師が遠隔操作してるんです。これで、この場所をまた農地として造成していきます。しばらくすると、今回の案件を落札した企業が設備を送り込んで来ると思いますよ」
行く時に見た田畑って、そういう感じで作られるのかあ!
色々コンピューター任せになっているっていうのは学校で習ったけど、具体的にどうやって出来上がるのかは初めて見たな。
宇宙さんもこの辺は詳しいかも知れない。
帰ったら聞いてみようっと。
こうして、迷宮省と農林水産省からの案件配信は無事に終わったのだった。
今までにないタイプの大型案件だったなあ。
さて、私はこの他にも、たくさん企業案件を抱えているのだ!
それをコツコツやっていかねば……。
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