第177話 きら星はづきフィギュア化計画伝説
世間はまた、なんか新しいダンジョンがとか、変なのが出てきたとかいう話で盛り上がっているらしい。
私はというと、先日の配信でたくさんの人のVRマシンが壊れたとかで、これは配信者が先に注意してあげないといかんのではという話を兄からされていた。
普通の人たちを先に行かせたらやっぱりだめだなあ……!
とりあえず、VRする時はポテチを近くに幾つか置いておこう。
その他は、ちょっとした事務作業みたいなのが増えた。
今は日課のメールチェックなどを行っているのだけど……。
イカルガエンターテイメントに送られてくるメールは、私に関係があるやつが転送されてくるんだよね。
「お兄ちゃんから連絡がないっていうことは忙しいんだな……。いつもお疲れ様です」
ぶつぶつ言いながら、ベッドに寝転がってスマホをいじっていると……。
あ、バンダースナッチ株式会社さんだ。
私のグッズを制作、販売してくれている会社。
空前の利益をあげたので、社員全員で沖縄旅行行ったらしい。
いいなあ。
まあ、私も北海道行ったからいいか!
「ほうほう、どれどれ。えーと……ベストラフィングカンパニーさんからフィギュア化の提案が……フィギュアぁ!?」
寝転がりながらスポーンと飛び跳ねてしまった。
ど、どういうことなんだ……。
メールの文章をよく読んでみると、バンダースナッチさんを入り口にして、フィギュアで有名なベストラフィングカンパニーというところから、私のフィギュアを作って販売したいという提案が来たのだという。
「1/8スケール……? 20センチくらいか……。でっか……」
この一年で何故か5センチ近く背が伸びた私である……。
ほどよい食事と運動が成長を促したに違いない。
そんなわけで、詳しい話を聞くために私はイカルガビルに向かったのだった。
電車の中で、インフェルノから今月の私のマンガが送られてきていた。
アメリカでは結構売れてるらしい。
インフェルノはプール付きの家が買えたよ、今度遊びに来たまえ、とか書いていた。
いいなあ、プール付きの家。
ビニールボートでプカプカ浮きながらジュースを飲みつつラノベを読みたい。
そんな妄想をしていたら到着です。
ビルの中では、受付さんが電話応対をしていた。
「やっほーはづきちゃん、あけましておめでとう~」
「あけましておめでとうございますー。私フィギュアになるんですか」
「あ、転送したの見た? 凄いよねえ。もう3Dスキャンで原型作ってあるんだって。斑鳩さんが許可出してるみたいよ」
「あひー、話の進みが早い……! 私の許可とかは……」
「はづきちゃんはフィギュアになるの嫌?」
「いやあ、どっちかというとフィギュアになった自分を見てみたいというか……」
「斑鳩社長もそう言ってた」
むふふ、と笑う受付さんなのだった。
兄に私の動きを読まれている!
この世界で、兄と母だけは私の行動を完全に読んでいる気がする。
こうして大変な情報を得て、ちょっと日にちが過ぎ。
私のフィギュアが立体化したのを見せてもらえる日になった。
兄と一緒に、バンダースナッチさんにやって来る。
「ようこそはづきっち!」
社長さんと社員の皆さんが総出で出迎えてくれた。
そして会議室には、ベストラフィングカンパニーの人がポカーンとして座っている。
「……み、みんなで出迎えに行くとは思いませんでした」
「我が社は全員、きら星はづき激推しなんですよ」
バンダースナッチの社長が誇らしげに言う。
なんか、私のグッズを販売してからすっごい利益が続いているらしい。
あっ、会議室の神棚に私のアクスタが全部並んでる……。
「あっ、こちらがきら星はづきさん!? おお……はじめまして……」
「あっあっ、どうもどうも、きら星はづきと申します……」
ベストラフィングカンパニーの人と私で、ペコペコ頭を下げあった。
そしてこんなこともあろうかと、作っておいた名刺を差し出す……。
ビジネスマンみたいなやり取りじゃないか。
私はできる女かもしれない……。
グフフフフ。
「では早速、フィギュアの原型が出来上がりましたのでご覧いただきたいのですが」
先日のメールで見たのは、3DのCG画像だったみたい。
向こうの人たちが、箱の中からそーっとそれを取り出してくる。
おおーっ。
それが机に置かれた瞬間、どよめきが走る!
それは、割としっかりした太さのゴボウを振り回し、今にも転びそうな姿勢で「あひー」とか言ってそうな私のフィギュアだった。
まだ全身グレーだから、本当に型を作っただけなんだなあ。
凄い躍動感だ……。
「あ、あの、触っていいですか?」
「どうぞどうぞ」
触らせてもらうと、表面とかすべすべだ。
体のジャージも作り込みが凄い。
今のフィギュアってこうなってるのかあ。
「……なんか胸元とか腰回りが大きすぎません?」
「原作に忠実だと思っています。造形師がはづきさんの大ファンですので……」
「な、なんだってー!!」
周りを見ると、みんなが「原作通り」「本人のプロポーション」と頷いていた。
そ、そうか……。
私はこんなに出るとこ出てるのか……!
ぺたぺた触り続けていると、なんか周りがなんとも言えない空気になってきた。
「あ、あの、その辺で」
「あっ、すみません! なんかおこのみの気持ちが分かるなーと思って……」
私はササッと自分の席に戻った。
その後、バンダースナッチさんの社員さんたちがみんなでフィギュアに触っていた。
できが良いよねえ。
「今春発売予定で、価格は22220円を予定しています。税込みです」
「安い」「安い」「安い」「ほしい」
あちこちから声が上がる。
私も一つ欲しいかも……!
「あのう、こ、この商品の告知とかは……」
ベストラフィングカンパニーの人がニヤリと笑った。
「本日行う予定です! それにきら星はづきさんも乗っていただければ」
「あひ、わ、分かりました!」
そういうことになってしまった!
この原型の写真もツブヤキックスで公開されるらしい。
これは大変なことになるぞ……。
今夜はこのために雑談配信で盛り上がらねば……。
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