第173話 新年一発目雑談配信伝説

「お前ら、こんきらー!」


※『こんきらー』『あけおめこんきらー』『うおっ和服!』『振袖はづきっち!!』『いきなり美女になるなw!』『かわいい』いももち『日本の至宝』


「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」


※『お、おう……』『あけおめことよろ……』『いつものお前らが気圧されている……』『こんな清楚な超美人がどうしてこんな暴食チャンネルに……?』『はづきっちを返せw』おこのみ『かーえーせ! いやこのままでもいい……』『かーえーせ! 同志に同意である』


「私です! わーたーしーでーす! これは母のお下がりの着物で、バブル時代に作られたやつですって。キラッキラ金色と真っ赤で派手でしょー」


※『あれ? 正月にその着物を着てた女の子を見たような……』


「記憶を飛ばしてください! ということで新年最初の雑談配信なんだけどー。着物は自前なのでバーチャライズじゃありません。なのでほら、頭とか手だけバーチャライズでちょっとヘンテコな質感になるでしょ」


※『バーチャライズだと一体感あるもんなあ』『アバター作る予算がない系配信者はAI絵で頭と腕だけ作ってやってるよな』『おうおう、指の数が多かったり顔が大体似てたりするやつな……』


「AIで個性的なアバター作ろうとすると、すっごいパソコンのスペックが必要なんですって。だからあれもお金がないとできないの」


※『ほえー』『絵師にお願いする方が安上がりでは……?』たこやき『いや、実はアバターはかなりの作業量なんで、普通にPC代の数倍が絵師のギャラで飛ぶ』『おぉぉぉぉ……』


 わいわい盛り上がっている。

 新年からみんな元気だなあ。


 私はと言うと、本日1月2日、朝からお餅を食べて大変好調なのだ。

 おせちも美味しい。

 我が家のおせちは大体三が日で全て消化し尽くされる。それくらいみんな食べる。


※もんじゃ『今年のご予定は?』


「予定はですね。いろいろあります。冬休みがすぐ終わっちゃうんで、休みのうちにダンジョン一つ潜るのと……あ、宿題はもう終わっててですね」


※『優等生~』『あのペースで配信してるのになんで宿題いつもすぐ終わってるんだw』


「配信のネタを考えながらついででやるのですぐ終わりますねー。だってこれ学校でやった内容なんで覚えてたら楽勝だし」


※『陽キャと接したり歌って踊る以外なんでもできる女』


「スポーツとかは全般的に苦手かも」


※『そっか、フォーム通りの動きができないのか』『不思議な動きになるんだな』『ゲームも苦手だったよね』『はづきっちも人間だったか……』


 私を何だと思っているのかね。

 こうして、リスナーのみんなの近況を聞きつつ雑談をしていく。


 私はこの後はビクトリアと二人で初売りを冷やかしに行き、アニメショップの福袋を買い、二人で中身をプレゼンしあったりする予定なのだ。

 むふふ、今年のお正月は賑やかだぞ。


 さらにさらに、冬休みの終わり頃にビクトリアが春から通う大学を見に行くので、付き添いをする予定。

 彼女の成績だと結構いい大学になるみたいで、外国の学生さんをたくさん受け入れているところなんだって。

 学園都市とか呼ばれてる。

 かっこいい。


※『はづきっちさ、年末に異世界行ったじゃん』『あれどうなったの?』


「なんもないですねー。迷宮省の人がちょっと聞きに来たけど、私五分ちょっとしかいなかったし」


※『情報収集する暇すら無い速度でクリアしたもんなw』『久々に無体なものを見た』たこやき『公式まとめ動画が5000万再生を突破しました』『やべえwww』『世界中が見てるだろこれww』


 そんなに!!

 むしろあの異世界? についてなら、連れて行かれた人たちにアンケート取った方がいいかもね。


 そこでパッと思いつく。


「えーと、じゃあアンケート取ります! あの日、異世界に連れて行かれた人ー」


 アワチューブのアンケート機能を使って、異世界に連れて行かれた! 連れて行かれてない! というのを作った。

 面白半分で連れて行かれたに票を入れる人がいるかもだけど……。


「おおー2.9%が連れて行かれたんですねー。投票数が8,000票だから、232人くらいがあそこにいた……んなわけあるかー!」


 私が突っ込んだら、コメント欄にたくさんの草が流れた。


※おこのみ『俺、連れて行かれたけどはづきっちが来てくれるって信じてた! そして来たけどカツ丼だった……』


 おこのみ~!

 いたのかあ。

 なんかちょこちょこ、彼は私とニアミスしてる気がするなあ。


 とにかく行動力が高いリスナーだ。


「おこのみ無事だったー?」


※おこのみ『無傷無傷』もんじゃ『はづきっちに会いにわざわざアバターを作っていったら、世界初の異世界召喚に巻き込まれるとは持っている男だ』


 ほんとにね。


※『俺の相方も異世界連れて行かれたけど、死ぬかと思ったって。もう絶対VRしないって言ってた』『怖いよねーあれ』『なんか再現映像あったけど地獄みたいだったって』『そして地獄に降り立った一条の光、カツ丼』


「あれねー」


※たこやき『私が作りました』『お前かw』『お前だったのかw』


「ガワだけだから全然動きやすいし、ガワの中に武器を置いておけるし便利なんだよね! しばらくカツ丼で活動しようかな」


※『やめてw』『俺たちはカツ丼が躍動する様を見たくて配信に来てるんじゃないぞw』いももち『はづきちゃんのお顔を見せて~』


 そんなに言うなら仕方ないなあ……。

 カツ丼は封印することにする……。


「じゃあみんな、今日はここまで! 私はこれからビクトリアと初売りを冷やかして来ます!」


「リーダー、まだフリソデ着てるの? 着替えないとー」


※『ビクトリアの声がした!』『一緒に暮らしてる感、いいですぞ~』『サービス供給が多くて嬉しい嬉しい』『新年から元気をもらったわ』


「じゃあお前ら、おつきらー! 今年も一緒に頑張ろう!」


※『おつきらー』『今年もよろしくー!』『またはづきっちを追いかける一年が始まる!』『ゲリラ配信はほどほどにしてくれなw』


 配信終了!

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