第163話 ゲームよりリアルダンジョンが楽伝説
障害物の間を高速で滑空してきた八咫烏さんが、ラーフを撒き散らして敵チームごと撃破する。
『ウグワーッ!?』『ウグワーッ!?』『そんなのシステムにない……ウグワーッ!!』
チャラウェイさんが後ろを警戒してくれている間に、私がパタパタ走って行って堂々と遮蔽を破壊して相手をバッサリ斬る。
『だ、弾丸が反射されウグワーッ!?』『そんなのありかよウグワーッ!!』
順調順調。
あっという間に何チームもやっつけてしまった。
彼らの経歴は、大会で予選落ちした人たちらしい。
各ロビーで大会の華々しい光景が上映されているのを見て嫉妬をたぎらせたら、嫉妬勢に取り込まれて大会をジャック。
ダンジョン化させてしまったということだった。
「ほえー、ゲームでも嫉妬とかあるんですね……」
「あるある。はづきちゃんは一人用ゲームばかりするタイプだろう?」
「ヒェッ、ど、どうしてそれを……」
「ウェイ、分かるよねーっ」
この人たち、エスパーか……!?
「対人関係が発生する以上、絶対に勝者と敗者が出る。こういうゲームがe-sportsとも呼ばれる時代だ。大会参加者はスポーツマンシップに則り、例え敗れても気高くあるべきなんだが……誰だってそれを貫けるわけじゃない。なかなか恐ろしい敵だよ、嫉妬のシン・シリーズは」
プライベートでもFPSをよく遊ぶ八咫烏さん、語る……!
※『はづきっちは常に諦観の境地にいる感じがあるからな』『勝つ前から負けた時のことを考えているw』『ダンジョン相手だと突然吹っ切れるけどな』
「いやいや、だって勝負事って怖いじゃない! 私は勝負とかなしで、平和で一人もくもくとやれるのが好きだなーと……」
※『平和に一人もくもくとダンジョン攻略w』『平和なのははづきっちだけなんだよなあ……』
な、なんですとー。
このやり取りには、八咫烏さんもチャラウェイさんも笑っていた。
そして次のエリアに移動。
今回のダンジョンは、一つの大会が原因で起こったから対象になるゲームシステムも一つ。
相手は空を飛んだりバリアーを張ったりしてくるんで、なんかSFっぽいFPSだったらしい。
なお、空は八咫烏さんが自前で対抗できるし、バリアーは私がレーザーブレードでパリンと割れる。
チャラウェイさんはこのゲームをやり込んでたみたいで、動きが上手い。私たちをサポートしてくれる。
なので私たちは快進撃を続けたのだ。
ははは、圧倒的ではないか我がチームはー。
おっと、フラグフラグ。
慢心したらやられてしまうのが世の常だもんね……。
と思っている矢先に。
『ウグワーッ!? ば、馬鹿な……! 鎮圧が早すぎる……!! VRにまで配信者どもが進出してきていたと言うのかーっ!!』
「その通りさ。僕らはフットワークが軽くてね。君たちデーモンの企みをこれ以上進行させるわけにはいかない。情報を吐いてから倒れてくれると嬉しいんだがね?」
『ふん! 貴様に与える情報などない!! そんなキラキラした身なりでたくさんの声援を受け、自信に満ち溢れたリア充っぽいやつにはな! レヴィアタン様! 我らの無念を晴らし、世界を嫉妬の渦に飲み込んでください!! ウグワーッ!!』
なんかボスっぽいデーモンの人がたくさん喋った後、八咫烏さんのラーフ弾を打ち込まれて消えて行ってしまった。
「ほえー驚いた。敵があんなにたくさん喋るの初めてです」
※『はづきっちは話聞かないからなw』『多分今までの奴らもあれくらい喋ろうとしてたと思うよ……』たこやき『話を聞かないはづきっち切り抜きシリーズ、累計再生数が5000万を超えまして』『すげー』『おめでとう!』
わ、私が話を聞かないですってー!
人聞きの悪い……。
その時々で、ちょっと他のことが気になっているだけなのだ……。
「やはりこの件は、裏で嫉妬のレヴィアタンが直々に動いているみたいだね。なかなか厄介だ。今回はFPSという僕とチャラウェイの得意な戦場だから良かったけれど、別だったらちょっと大変だな」
「あっ、じ、人生ゲームとかテーブルゲームなら得意です」
※『人生ゲーム得意とかあるのかw!』『運が絡むゲームだとはづきっちが無双しそうだなw』『今回はFPSというか一人だけ無双系だったもんなw』
とまあ、ダンジョン攻略のお仕事が終わり。
その後は八咫烏さんとチャラウェイさんに連れられて、本格的にそのFPSを遊んでみたのだった。
私は常に一番最初にキルされたね……!
「ウヒョー、はづきちゃん、ゲームのルールの下だと驚くほど初心者らしい動きになるなあ! 俺もなんか安心しちゃったよ! はづきちゃんも人間だったんだな」
「あひー、わ、私は対戦ゲームすごく弱いんです~!!」
「面白い娘だなあ……」
しみじみと八咫烏さんに言われてしまった。
こうして戻ってきた私。
インキュベーター666を外すと汗びっしょり。
お腹も減ったなあと思っていたところ、そこにビクトリアが控えていた。
「リーダー! これおやつ!」
「おほー! ハンバーガーだあ! ありがたいありがたい……」
「じゃあリーダー、食べながら見ててね。FPSの動きについて私がレクチャーするから」
どうやら私の配信を見てたらしい。
後半戦のあの初心者らしいもぞもぞとした動きを見られたかあ。
鼻息も荒く、新たにインキュベーターを装着するビクトリアなのだった。
「リーダーの汗でぺっとりするー」
「拭いてから被ってー!」
こうして、私はハンバーガーをもぐもぐやりつつ、ビクトリア先生の熱血FPS指導を受けることになったのだった。
次のダンジョン、FPSとは限らないんだけどなあ……。
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