第162話 三人コラボのFPS伝説
チャラウェイさんとのコラボだけど、急遽参戦が決まった人がいたので三人で遊ぶ……配信することになった。
「やあ、本格的にコラボは初だね! よろしく!」
「こ、こちらこそー」
なうファンタジートップ配信者の一人、八咫烏さんだ。
ダンジョンハザードの時に戦い方を拝見したんだけど、適確にラーフというスポンジガンで狙い撃つ感じで、堅実だなーと思ったものだった。
チャラウェイさんと仲良しなので、今回招かれたみたい。
「おや、はづきさん、今日の武器はゴボウではない?」
「ホントだ! はづきちゃん、そいつはレーザーブレード!」
「あっ、はい。実はリスナーさんと雑談した時に、どんな武器を使ってほしいか聞いたんです。その中で面白そうだったものを持ってきて……。あ、これも」
「マジックハンド! これはどういう戦い方をするか想像もつかないね。楽しみだ」
「なるほど! 遠近両用ってわけか!!」
ワイワイと盛り上がってしまった。
おお、以前感じていた緊張みたいなのが薄くなっている。
まあ八咫烏さんはチャラウェイさんと一緒に、学園祭にも来てくれてるし。
知らない仲じゃないもんなー。
「じゃあやって行きましょう。今日はよろしくお願いします!」
「よろしくだぜ!」
「よ、よろしくお願いしまーす」
礼儀正しい八咫烏さんの掛け声に応じて、本日のコラボ開始なのだ。
「お前ら、こんきらー。今日はですねー。FPSなゲームがダンジョンになっちゃったステージなんですけど」
※『こんきらー』『こんきらー』『はづきっちがどんどんゲーム文化を身につけていく……』『俺たちの聖地だったインターネットを取り戻してくれえ』『FPSはまたリアルとは違うぞ。気をつけろはづきっち!』
「はぁい。それで、チャラウェイさんと八咫烏さんとコラボでチーム組んでですね。七つのチームがデーモン化しちゃったのを相手にします」
※『3VS21!!』『ゲームだとありえないw』『そっか、配信者は現実の方が強いもんな』『VRなのに現実とはこれいかに』
「そして今回の武器はこれ! みんなから聞いた意見で、レーザーブレードとマジックハンドにしました。見ててねー」
※『うおーはづきっちレーザーブレード久々!』『昔とは腕力も体幹も桁違いだろうからな、楽しみだ』『頑張れはづきっちー!!』
「がんばるー。じゃあダンジョン攻略スタートです」
飛び込んだのは、一見すると外の世界みたいなダンジョン。
これってまるで、私が以前飛び込んだ、どこまでも空に積み上がっているダンジョンみたい。
遠くに別の世界が見えたんだよね。
「こいつは……。アーピックスのステージと違うぜ!」
チャラウェイさんも同じ感想を抱いたようだった。
アーピックスっていうのは、このFPS……ファーストパーソン・シューティングっていう、プレイヤー視点のシューティングアクションゲームの名前ね。
三人でチームを組み、団体戦をやるゲームなのだ。
「恐らく、あの世界とゲームを繋げているんだろう。そして法則はゲーム側に支配されるようだ。つまり、一定以上被弾したらやられるぞ。おいでなすった!」
八咫烏さんが不敵に笑いながら、走っていった。
そうしたら、彼がいたところにタタタタタッと光の銃弾が降り注ぐ。
八咫烏さんは壁を蹴って飛び上がると、いきなりその背中から翼みたいなのが広がった。
一瞬だけ滑空しながら、八咫烏さんは物陰にいたデーモンにラーフを浴びせかけた。
『ウグワーッ!! や、八咫烏!? やっぱうめぇー』
そう言いながら、デーモンが人の姿に戻って倒れた。
あ、これは人に戻して助けられるパターンだ!
「あれが八咫烏のスタイルさ。ラーフのみで戦うシンプルな戦い方だが、身体能力と滑空を使って四次元な動きをする。はづきちゃんがコラボしてきたやつの中でもトップクラスの実力じゃねえかな。おっと! 俺も負けねえけどな! ヒャッハー!!」
チャラウェイさんがクロスボウを連射しながら走っていく。
そして銃弾を避けてゴロゴロ転がりながら、腰につけていたトマホークを投げつけた。
トマホークが孤を描いて、物陰にいたデーモンに突き刺さる。
『ウグワーッ!!』
銃撃が止まったら、チャラウェイさんが素早く物陰まで走って行って斧でデーモンを仕留めたみたいだ。
まあ、人間に戻って助けられるようになるんだけど。
「みんなつよーい」
※『はづきっち棒立ちで草』『真打ちは最後に登場するんだもんな』『はよ行けw』
「はぁい」
私もトテトテと小走りで動いた。
『FPSだとはづきっちの姿が見えないなw』『だけど普段の視界を共有できるのか』『これがはづきっちの視界……。正面突破じゃんw』
あっ、光の銃弾。
私は慌ててレーザーブレードを振った。
銃弾が弾かれる。
※『ビームみたいなのを視認して弾いとるw』『見えない見えないw なんで見えてるのw』『何気に動体視力やばいんだよな』『弾かれた攻撃が跳弾して、敵も動けなくなると言うな』『あっ、敵が逃げるぞはづきっち!』
「はぁい! じゃあマジックハンドでですねー。こうやって」
マジックハンドが伸びた。
思った以上にかなり伸びた。
それが遮蔽物をむんずと掴むと、私が動かす方向に放り投げる。
逃げようとしていたデーモンがむき出しになった。
『えっ!? 何だそれ!?』
※『地形を破壊するやつだw!』『いきなりゲームの枠を超えるなw』『はづきっちはいつもながら身も蓋もないw』『レーザーブレードで攻撃弾きながら小走りで近づいてるぞ』『速い速い速いw』
「あちょっ」
『ウグワーッ!? こんなんFPSじゃねえー』
人に戻ってしまった。
「はづきちゃん、FPSで近接スタイルかあ! やるねえ!」
「うんうん。回避ではなく防御しながら接敵するスタイル……! いいねいいね」
「あひ、お褒めいただき恐悦至極……」
私は照れた。
というか、ずっしり重くて中にLEDが仕込まれてるレーザーブレードを振り回しても、全然腕がだるくならない。
配信生活の中で鍛えられたんだなあ。
そしてなんかお互いを褒め合うの、いい感じ。
ニヤニヤしちゃう。
「八咫烏さんもナイス、です……。チャラウェイさんもトマホーク凄い……」
「ありがとう!」
「サンキュー! この調子で行こうぜ!」
三人で盛り上がって、次のステージに向かうのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます