第146話 我が家にビクトリアが来た伝説
我が家にビクトリアがやって来た。
なんか、母がバーっと登場してビクトリアを熱くハグして、
「ここを自分の家だと思ってね!」
とかやったので、大層感激したようだった。
「最近はうちのママもああいうことしないのに」
「アメリカン過ぎたかー」
母がアメリカのホームドラマを見て研究していたのは覚えている。
そして父は、食卓に年頃の女子が一人増えたのでちょっとドギマギしていた。
この人、何気に純情だからなあー。
さて、ビクトリアの部屋は私の部屋の隣。
元々兄が住んでいたところだ。
我が家は父が35年ローンで建てた一軒家なので、間取りにも余裕がある。
二階は私と兄の部屋しかないので、広々使えるのだ!
で、兄が引っ越したので私が一人で住んでいる。
最近はリスナーが怖い話をするので、寝るときもキョロキョロしたり耳栓したりしながら寝ていたところ。
ビクトリアの参戦はとても嬉しい!
あ、ところでローンはこの半年間の私の稼ぎで一瞬で返しきったらしいです。
家を建ててから二十年で完済……!
「リーダーのおうちは小さいけど、きちんとしてて好きだわ」
私の部屋のベッドに腰掛けて、ビクトリアがニコニコしている。
自室は持ってきた服とちょっとのペーパーバックしか置いてないそうだから、こっちにいる方が落ち着くのかも知れない。
「そうだねー。お父さんもお母さんも掃除大好きだからねえ。あ、私の本も好きに読んでいいよ! それと文庫の奥側の蔵書はエッチな本なので好みに合わないかもしれない……」
「エッチな本!?」
ビクトリアの鼻息が荒くなった。
「リーダー、自分のセクシャルなイラストにハート付けてるって思ってたけど、やっぱりそういうのが好き……?」
「ひ、人並みですー!」
今朝も私のえっちな絵をエゴサで発見し、いいねを押したのだった。
そうしたら絵師さんが、『オギャーッ!! はづきっちがいいねをくれたー!!』とスクショを晒したので大変なことになってしまっった。
DMでちょっと注意しておいたのだ……。
『ヒェッすみません』って謝ってくれたので良かった。
人は分かりあえる!
ということで、食事の後は私の部屋で二人で本を読み、日本式のお風呂が分からんというビクトリアのためにお風呂の入り方を伝授したのだった。
ふ、二人で入ると狭い……!
「リーダーが結構ボリュームあるから……」
「ふ、太ってません! ビクトリアももうちょっと食べたほうが……」
「よく読書に夢中でランチを抜いちゃうから」
「よくない! 三食ちゃんと食べよう!!」
日に当たってないので、めちゃくちゃ白いし細いし。
私が鍛えねばならない、と責任感を新たにした。
風呂上がり、ビクトリアが「リーダーが圧倒的柔らかさだった……すごい」とかぶつぶつ言っている。
のぼせたかな?
その後、ビクトリアは実家とネットでおしゃべり。
ビクトリア母に挨拶をするなどした。
向こうは朝なんだなあー。
そしてお互いの部屋で寝る……と思ったがせっかくなので私の部屋に招いて一緒に寝た!
目覚めると、ビクトリアが私の抱きまくらになっているではないか。
「ごめんごめん」
「信じられないくらい熟睡した……。温かかった」
「なんですって」
私は柔らかくて温かいらしい。
発熱機能付きの抱きまくらみたいなものかな?
さて!
本日は新人さん二人のレッスンと、彼女たちのマネージャーさんとの顔合わせです!
私はビクトリアを連れて電車に乗り、イカルガエンターテイメントの事務所に向かった。
先にシカコ氏も来てる。
彼女はビクトリアを見て、ペコッと会釈した。
ビクトリアは私の後ろにスッと隠れる。
陰の者!
「コ、コミュニケーションの主導権を渡されると困る……。私は人と喋るの得意じゃない……」
「分かる~」
ビクトリアの反応の何もかもが分かる。
「でも一歩踏み出さないといけないよビクトリア! 私はなんか何もかも手探りで突き進んだらなんとかなった……。私の後をついてくるといい」
「は、はいリーダー! 頼りになる……」
「うんうん、はづき先輩って学校だと挙動不審な謎の人だけど、打って変わって配信者モードは本当に頼りになるんだよねー」
挙動不審な謎の人!?
「学校? あなた、リーダーのクラスメイト? オー!」
おっ、ちょっとビクトリアが打ち解けてきたかな。
その後、マネージャーさんとして雇われたという女の人が出てきたら、また私の後ろに隠れたけど。
マネージャーさんは私も知っている人で、母の友人だ。
子育てが一段落したので働く先を探してたらしい。
元々は優秀なキャリアウーマンだった人だとか。
「人見知りする娘がいんですね。任せてください。PTA役員や学童保育の管理役もやって来たから、こういうのは慣れてますから!!」
「強い……」
剛腕マネージャーが加わってしまったな。
この人が、ビクトリアとシカコ氏の担当になる。
なお、子育て中に子どもと一緒に配信を見まくっていたので、そういう世界にも詳しくなったそうだ。頼もしい……。
「私のマネージャーは?」
受付さんに問うと、彼女はにっこり笑った。
「はづきちゃんはなんだかんだで全部自力で行けちゃうから、しばらくは現状維持で……」
「ひええ、投げっぱなし」
こ、こんな横暴が許されていいのかー。
いや、よく知らない人が出てきても困るんだけど。
こうしてうちの新人二人の活動がスタートすることになるのだ。
まずは色々なレッスンだ。
「はづきちゃん、とりあえず二人を連れて手近なダンジョン行ってきてもらっていい?」
受付さんから無茶振りが来たぞ……!
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