第145話 レセプションで豪華なご飯を食べる伝説

 そのままビクトリアを連れ帰ろうとしたら待ったが掛かった。


「ちょっと待ってはづきさん! あなたがいるのはとても好都合だわ。何度誘ってもイカルガさん側で断られていたのに」


「あーっ、あ、あなたは風街さん!」


 意外というか当然というか、風街さんがいたので私は捕まってしまったのだった。

 そのまま、日米間の路線再開を喜ぶレセプションに連れて行かれてしまった。


 わ、私もシカコ氏もちょっといい普段着なのに!

 ……と思ったら。


「ドレスを貸してくれる……? そんなことあるんだ……」


 レセプション会場には貸衣装屋さんが来ていて、ドレスを選ばせてくれることになった。


「かなりメリハリがきいた体型ですね……。だとすると、肩を丸出しにするこのドレスが一番いいですね」


「あひー! 年齢制限付きそう!」


「はづき先輩なら似合いますよ! こぼれちゃいそうですけど」


「そこはギリギリ引っかかるようにできてるのよ」


「リーダー絶対似合う!」


「あーひー」


 寄ってたかって着替えさせられてしまった。

 白色とピンクの布で作られた、両肩むき出しのドレス。

 なんかアメリカの映画の授賞式で女優さんが着てるみたいなやつ!


 髪の毛もアップにまとめられてしまった。


「あひー」


「こうして見ると、めちゃくちゃ映えるわよねはづきさん。背も低くないし、体型はメリハリがあるし、足も思ったより長い……」


「先輩かっこいい……! うちはなんか子どもドレスみたいな」


「フフフ……リーダーは凄いんだから」


 みんな好き勝手言うなあ……。

 だけどレセプション会場ではいいお料理食べ放題らしいので、私は寛大な心で許そうと思う。


 さて、会場に行く前にバーチャライズ。

 顔かたちをきら星はづきモードにする。


 目の色とか肌のハイライトがCG風に変わるから、かなり印象も変化するのだ!

 ま、急遽呼ばれた私に重要な役割なんか来るわけないでしょ……。


 私はそう思いながら会場に向かった。

 なんか心の中のたこやきが、フラグですよとか言ってそうな気がした。


 フラグだった。


 会場入りした瞬間、周囲の注目が集まる!

 フラッシュが焚かれる、カメラが回る!


「あひー」


 私はあまりのことに小さく悲鳴を上げたが、びっくりしすぎて表情がうっすらとした微笑み状態で固まってしまった。


「きら星はづきさんだ!」


「綺麗……」


「普段はジャージで前髪おろしてるけど、本気になるとこんなに綺麗だなんて……!!」


「高スペック過ぎる……!」


 き、聞いてないぞ!

 私が注目されることになるなんて!


 ブルーのドレスの風街さんも横から現れて注目を浴びていた。

 よし、ちょっと注目度が減って安心……。


 と思ったのもつかの間!


 ようやく飲み物にありつけたところで、会場に拍手が起こる。

 州知事が見たことのあるおばさんと握手してる。

 あ、都知事か!


 あとえらい政治家みたいな人も出てきて笑顔で握手した。

 みんなムニャムニャとお祝いの言葉とかを述べる。

 私はこの隙に飲み食いした。


「では最後に! 色欲のマリリーヌを倒し、両国の交流を再開させた最大の功労者である、きら星はづきさんがこちらにいらしています! きら星はづきさん、壇上へどうぞ!」


「あひー!!」


 あまりのことに私はまた固まってしまった。


「あの鳴き声だ!」「本当にはづきっちがいる!」「えっ、じゃあさっきの爆美女が本当に本物はづきっちなの!?」「高校一年生の色気ではない……」「はづきっちの本物はあんなにかっこいいなんて……」


 なんか好き勝手言われつつ、私はふらふら壇上へ向かった。

 後ろを風街さんがぐいぐい押してくる。


 あひい、きら星はづきに逃げ場なし!


 壇上では満面にほほえみをたたえて州知事が待っていた。

 彼は私と力強く握手をした後、正面を向こう、と促した。


「あ、は、はい」


「美しい君のシャッターチャンスを、みんな伺っているんだ。誰もが君のファンなんだぞ。最高の絵をくれてやるのもヒーローの大事な仕事だ」


「は、はい~」


 なんか流されて、私は州知事と握手したまま笑顔のまま固まった顔で会場を向いたのだった。

 うわーっ!!

 目も眩むようなフラッシュー!! 動画回りまくってるー!!


「きら星はづきさん、ありがとうございました!」


 一言どうぞはなかった!

 良かった!

 司会の人の横で兄がうんうん頷いて目頭をハンカチで拭っている。

 何してるんだあの人。


「先輩お疲れ様です! 社長が、お腹の減ったはづき先輩に喋らせると何を言うかわからないから、スピーチは割愛させるって言ってました」


「ほんと!? ファインプレーだった……」


「リーダーは本当にかっこよかった! 私いっぱいムービー撮っちゃった!」


 ビクトリアがめちゃくちゃ嬉しそう。

 シカコ氏と二人で並んで、私の写真や動画をずっと撮ってたらしい。


「その映像は恥ずかしいので消していただくわけには」


「「ダメ~」」


 笑顔でお断りされてしまった!

 くそう、やってられるか!


 私はご飯を食べるぞ!

 立食形式の会場で、私はお皿を持って歩き回った。


「おほー、いいローストビーフ! いいスパゲッティ! 生ハムサラダ! キッシュ色々! 炊き込みご飯! オムレツ! エビチリ!」


 なんか無国籍な感じで色々な料理が出ている。

 ビュッフェスタイル大好き!


 両手のお皿に山盛り持ってきて、これをオレンジジュースをのみながらパクパクやる。


「めちゃくちゃ食べてる……」「はづきっち本当に健啖なんだな」「あれだけ食べてあのプロポーションはおかしい」「暴食の力か」「暴食は完全にはづきっちに支配されたってこの間考察動画でな」


 外野の声も聞こえない。

 食べている瞬間は本当に幸せなのだ……。

 ああ、来て良かったレセプション……。


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