第123話 【緊急配信】きら星はづきの軌跡伝説

~冒険配信者うぉっちチャンネル~


 ─こんにちはなのだ!

 ─今日も冒険配信者うぉっちチャンネルをやっていくのだ!


 おなじみの合成音声が流れる。

 様々な冒険配信者を紹介し、彼らの来歴や、関わった人々からのインタビューを伝える、人気まとめチャンネル。

 アワチューブにおいて、冒険配信者系まとめ動画のトップランクに君臨している。


 ─みんなは、今アメリカで猛威を振るっているきら星はづきさんの情報を追っているのだ?


※『猛威www』『天災みたいに言うなw』『でも空からやって来てアメリカでモンスターを蹴散らしてるよな』『見方によっちゃー天災か』『デーモン視点なw』


 ─突然の、ハイジャックデーモン蹂躙配信から始まり、そこからノンストップで機内食を貪り、ついでに機長さんたちに挨拶したら向こうから総攻撃が来たのだ!

 ─この切り抜きを見てほしいのだ。

 ─きら星はづきさんは操縦室で配信をしているのだ。

 ─ぐっと指を立てたところから、このカウンターの回転をご確認いただきたいのだ。


※『カウンターの動きまで切り抜かれてる』『あ、これたこやき切り抜きちゃんねるのやつじゃん』


 ─動画主のたこやき氏からは転載の許可をもらっているのだ。

 ─ぜひ、この動画も見て凄まじさを確認してほしいのだ。


※『これってつまり……同接が一気に増えてるってこと?』『この時、ツブヤキックスのトレンドもヤバかったよな』『上位をはづきっちが独占したからな』


 ─一気に一千万人もの同接が集まったきら星はづきさん、あろうことか、このジャンボジェットを自分の武器にしてしまったのだ。

 ─言うなれば巨大なゴボウなのだ。


※『空飛ぶ巨大なゴボウwww』『あ、なーるほど! だからジャンボが光ってめちゃくちゃなことになったんだ!』


 ─空に突如発生したダンジョンは、きら星はづきジェットによって粉砕されたのだ!

 ─ダンジョンそのものを一瞬で破壊するシーンは、世界で初めて撮影されたのだ。

 ─そして空港に着陸したきら星はづきジェットは、その場で発生したダンジョンハザードをやっぱり一瞬で粉砕したのだ!


※『あれなー。空港降りたら終わりだろって思ったら全然終わりじゃなくて焦ったよな』『隙を見せぬ二段構えだったんだな』『アリを踏み潰す象のように攻略したけどな』


 ─色欲のマリリーヌは、明らかにきら星はづきさんを意識していたのだ。

 ─積極的に排除しようとしていたと考えて間違いないのだ。

 ─その点では、真に警戒すべき敵が誰なのか分かっている、冷静で恐ろしいデーモンだと言えるのだ!

 ─この冷静さと知性があるからこそ、マリリーヌは発生からわずか三ヶ月で西アメリカの全てのダンジョンを手中に収めたと言われているのだ!

 ─今は、西アメリカと他のアメリカの連絡は寸断され、車での行き来が不可能な状態になっているのだ。


※『すげえヤバいことになってるじゃん』『はづきっちはまさに最後の希望だったんだな』


 ─恐らく、きら星はづきさんの到着が一ヶ月遅れていれば西アメリカはマリリーヌによって完全に支配されていたと考えられるのだ!

 ─だけど、そうはならなかったのだ。


 きら星はづきのアイコンが出現し、「私が来た!」と吹き出しが飛び出す。


※『はづきっちはそんなこと言わないw』『解釈違いやめろw』『そうか、アメリカからするとこう見えるのか』


 ─きら星はづきさんは、彼女を出迎えるために危険を押してやってきた州知事を陰キャムーブで対応、ここで評価されているのだ。


※『陰キャムーブw』『あのおっさん州知事だったのかw』『まさか半年で州知事と握手するまで行くとはなあ』


 ─その後、きら星はづきさんは潰れるところだったハンバーガー屋を救い、バズらせたのだ。

 ─ここで食レポの才能を見せつけるあたり、配信において飽きさせるということを知らない天性のものを感じるのだ!


※『あの後ハンバーガー食いたくなったわ。明け方で助かった』『朝バーガー捗ったよな』『うちらみたいなのがたくさんバーガー屋にいて草だった』


 ─そこからの流れはみんなも知っての通りなのだ!

 ─色欲のマリリーヌは相手の性欲に訴えかけて支配してくる恐ろしいデーモンなのだ!

 ─まっとうな性癖の配信者では対抗できないのだ!

 ─だが……マイナーな性癖の配信者ならどうなのだ?


※『変なの三銃士が揃っちまったな……』『汚いリベンジャーズw』『このちゃんねる、ちゃんと言葉を選んでてえらいなw』


 ─キャプテン・カイワレ。一見して緑の全身タイツを着ただけのひょろい男性なのだ。

 ─その実態は、緑の全身タイツを着ただけのひょろい男性なのだ。

 ─日本旅行をした時に食べたかいわれ大根に感動し……というかその名前の響きが気に入り、配信者ネームにしたのだ。

 ─全身緑色だからカイワレというかオクラなのだなー。


※『やめてあげてw』『そんなエピソードまで掘ってくるのかw』


 ─ビクトリア。ゴス姿でバールのようなものを武器にしている女の子なのだな。

 ─陰キャっぽくて、多分きら星はづきさんと一番近いタイプの女子なのだ。

 ─この娘はもう日本でも人気が出ていて、登録者数が1万に届きそうなのだなー。

 ─多分その大半が日本人なのだ。


※『彼女カワイイよな……』『光の陰キャがはづきっちなら、闇の陰キャがビクトリアちゃんだ』『この間はづきっちと日本語で会話してたぞ』『日本語喋れるのマ!?』


 ─最後にカーネル・インフェルノなのだ。

 ─カリフォルニアで行われたボディビルコンテストで、上位入賞を果たした実力派なのだ!

 ─本業はコミックライターなのだ。


※『意外過ぎる本業w』『そうか、三人ともオタクなんだこいつらw』『はづきっちと合うわけだよ』


 ─この濃すぎる三人に、濃厚なきら星はづきさんを加えた特濃四人衆で、ラストバスターズと呼ばれているのだ。

 ─彼らは結成翌日に、色欲のマリリーヌ最強の部下と呼ばれるインキュバス、女殺しのレオニードをそうとは知らずに粉砕したのだ。

 ─巨大なビルのダンジョンが、46分間のRTAで踏破されたのは前代未聞だったのだなー。

 ─その時の配信で、同接数の力は現代兵器やセキュリティすら容易に凌駕することが証明されたのだ。

 ─各国のセキュリティ部門はきっと頭を抱えただろう、なのだ!


※『うんうん、俺たちの睡眠時間を気遣ってスパッと終わらせてくれたんだよな』『気持ちは分かるけど実行できるのがやべえよw』『現地ではどうにもならなかったダンジョンなんだろ?』『純粋に相性だろうな……』


 ─初回から敵の二番目に強力なダンジョンを踏破したので、後はちょっと弱いところばかりになったのだ!

 ─今日も日付が変わる辺りで、きら星はづきさんの配信が始まると思うのだ。

 ─彼女のアメリカ滞在は一週間。

 ─恐らく明日辺りでマリリーヌと対決すると思われるのだ!


※『濃い三人もどんどん強くなってるよな』『すげえレベリングされてるもんな』『ビクトリアちゃんがめっちゃ強くなった』『カイワレは割りとずっと弱いなw』『インフェルノは……語らんとこう』


 ─ちなみに……。

 ─これでマリリーヌが倒されると、世界で二体目のシン・シリーズ撃破となるのだ!

 ─そうなると残りは五体……と行きたいのだけど、実は残りは四体なのだ。

 ─全世界で、暴食のシン・シリーズだけが確認されていないのだ!

 ─これは今、世界中で研究されている大いなる謎と言われているのだが……。


※『そりゃまあ、なあ』『適格者がなあw』


 ─まあ、僕らはもうなんで暴食が誕生しないのか知っているのだ!

 ─全世界に向けて食べるの大好きを発信してる女の子が、光のオーラバリバリなのだ!

 ─暴食の大罪は生まれること無く、美味しく消化……いや昇華されてしまったのだ。


※『だれうまw』


 ─そんなところで今日の動画は終わりなのだ!

 ─きら星はづきさん、なかなか謎に包まれた、そしてとても魅力的な冒険配信者なのだ!


 ─これからも、きら星はづきさんを応援して行こうなのだ!

 ─以上、冒険配信者うぉっちチャンネルでしたのだ!

 ─この動画を面白いと思ってもらえたなら、高評価とチャンネル登録を────


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る