第102話 釧路探訪伝説

 空から!

 やってきました北海道。

 釧路。


 私は初北海道なのだ。


「どこまでも続く緑と思ったら、なんか街が出てきましたー」


※『解像度の低いレポで草』『はづきっち北海道上陸かあ』『ようこそはづきっち! 楽しんでいってね!!』『現地民おった』


 そう、私は家族連れで、北海道は釧路にやってきました!

 で、せっかくなんで配信を繋いで、私が釧路の地に降り立つまでレポートしている。


 金曜の夜に迷宮省指定の場所まで移動して、早朝に飛行機でひとっ飛びしてきた。


 早い時間なのに、沢山の人が配信を見てるなあ。


「事前に調べてきました。阿寒湖行きたい」


※『遠いぞ』『北海道を舐めるな』『クソ遠い』


「なんですって」


※『月曜からもう学校でしょ』『釧路湿原とか海産物を楽しんで、どうぞ』


「な、なるほどー。あ、ちなみに今回なんですけど、その釧路湿原の一部がダンジョン化してるみたいで」


※『なにーっ』『うおおおはづきっち北海道の観光資源を守ってくれええ』『まさか釧路まで来てくれるとは思わなかったよな……』


「えへへ、お邪魔します」


※『かわいい』『かわいい』『礼儀ができてるかわいい』


 大いに盛り上がっている。

 ちなみに私の隣には風街さんが座っていて、彼女も配信にずーっと映り込んでる。


※『流星ちゃん寝てて草』『当たり前みたいにはづきっちの横にいるじゃん』『ってことはライブダンジョンか国案件か』


「もともとはリスナーさんのタレコミなんですけどー」


※『タレコミ言うなw』


「お話したら、国の方でも大問題だからお手伝いするって言ってくれたんです。それにハロウィン前くらいにアメリカ行かないといけないっぽいから、練習でちょうどいいかなって」


※『あー』『なるほど』『フライトに慣れておくと』


 ご理解いただけたみたいだ。

 なお、Aフォンを使った配信は、フライト中だろうが地球の裏側だろうが、タイムラグ無しで行うことができるらしい。

 魔法と科学技術の組み合わせだからできるんだとか?


 弱点はアワチューブからセンシティブでBANされることだけ!

 でも、私はネチョネチョ動画でも同時配信してるので、ちゃんと保険がかけてあるのだ!

 成長したのだ。


「あ、空港つくみたいなのでこれで終わりです。終わり、終わりー」


※『了解』『釧路楽しんでらー』『レポート期待』


「了解! あと、ダンジョン配信はちゃんとやるんで待っててくださーい」


 リスナーに連絡をした後、私は配信を終えた。

 そして飛行機が着陸……いや、着水に入る。


 水陸両用機であるこの飛行機が、ザパーンと着水すると、スイーっと滑りながら港の方に行った。

 漁師の人たちにはあらかじめ話をつけてあるらしい。


 まさか飛行機から降りて港に立つとは……。

 注目を集めつつ、私たち一行は……。


「朝食が機内食というのも悪くなかったが、もっとしっかりと食べたいものだ」


 父の一声に、私と母が頷く。


「お腹すいたわ」


「海鮮食べよう!」


 あとに続く、兄と受付さん。

 風街さんと迷宮省の職員さんたちも一緒なのだ。


 私たちはワイワイと団体行動して、市場に入った。

 目指すは、勝手丼!


 市場で色々なものを買ってご飯に乗せて食べるやつ。

 豪快~。


 ご飯を山盛りにしてもらった丼を片手に、母と風街さんと三人で市場をうろつく。


「サーモン! うに! いくら! かに!」


 ほほほほほ、丼の上がどんどん華やかになっていくわあ。


「はづきさん、生き生きとしてますね」


「この子、食べ物が絡むと人見知りが軽くなるんです。配信を始めたら社交的にもなってきたみたいで」


「知らない人たちとコミュニケーションを取りますからねえ」


 なんか後ろで二人が会話してる。

 だが、私は究極の勝手丼を目指すため、それを気にしている暇などないのだった。


 ひとまず、海鮮が山盛りになった丼が完成した。

 これは……もっと研究のしがいがあるかもしれない。


 本当ならしばらく滞在して勝手丼を極めたい……。

 だが二日間しか釧路にいられない……。


 悲しい……。

 私はしょんぼりしながら海鮮を口にした。


「おぉぉいしぃぃぃぃ」


「パッと顔が明るくなったわね」


「新鮮な海鮮は美味しいですからねえ……。あ、本当に美味しい」


 父と兄と受付さんもやってきて、六人でテーブルを囲んでガツガツ食べた。

 満足満足。


 その後、炭鉱博物館を見たり市内をぶらついたりしつつ、お昼すぎにザンギのお店でランチをいただき。


「ここからは、はづきさんは我々と一緒に行動ですね。ふふふ、職務権限で観光を楽しんでしまった」


 妙に満足げな風街さんと一緒に、車に乗り込む私なのだった。


「どこ行くんです?」


「湿原公園よ。本来の目的。距離があるしこれに巻き込んでしまうと、ご家族は観光できないでしょ?」


「なるほどー」


 街中を抜けて郊外へ。


「今回の件なんだけど、特殊な点があるの」


「特殊な?」


「今までのダンジョンは、どれも人間が関わってたでしょう? 人間の恨みとか妬みとか、そういうものを媒介にして彼らをデーモン化し、ダンジョンを形作っていた。今回は違うの。言うなれば……ほら、はづきさんが殺虫剤の企業案件をやってた村みたいな」


「あっ、そういう……」


 たまーにあるのだ。

 突然自然環境がダンジョン化すること。


 多分何かのきっかけはあるんだろうけど、モンスターが大量に発生して、なし崩しでそこがダンジョンになってしまう的な?

 ほとんどは人間絡みらしいけど、その痕跡が確認されないパターンが今回ということ。


「ということで、まずは前哨戦行ってみましょう! はづきさんにはちょうどいい腹ごなしね!」


「ふひひ……、お、お手柔らかにお願いします」


 ここからは私もお仕事なのだった。


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