第87話 空港ダンジョンコラボ伝説
メイユーさんの戦い方は、本当にサイバー!とかサイボーグ!っていう感じ。
手足のアーマーが展開してブレードが出てきたり、ガトリングガンに変形して制圧射撃をしたりする。
「すげー」
※『うちの姫はゴボウ一本持って棒立ちなのに相手の火力が凄まじい』もんじゃ『向こうはアバター技術をダンジョンで実体化させるやり方だからな。あらゆる状況に対応可能だが、問題はさほど強く伝説の力を帯びないことなのだそうだ』『はえー有識者』
「はえ~」
※『はづきっちずっと棒立ちしてて草』『動け』『戦場に紛れ込んだジャージのJK』
「いやいや、私の出番なんて早々……」
楽できちゃうなー、私なんかまだまだだなー、という妙な安心感を覚えつつ、メイユーの後ろをてくてくついていった。
「この辺りのモンスターはまだ弱いわね。日本に来たら妖怪が出ると思ってたけど、どうして西洋のモンスターが出てきてるの? うちはちょこちょこ現地の妖怪が紛れ込んでるわよ」
「さあ……?」
これには、メイユーのコメント欄の人たちがわあわあと色々教えてくれる。
なんと向こうのコメントも、その気になればAフォンが翻訳してくれるのだった。
※変態機人一号『その土地の人間の認識によると言われています。信仰が深い人が多ければ妖怪が出ます。少なければダンジョンにいるデフォルトのモンスターが出力されます』『有識者!』『はえ~』
※もんじゃ『なるほど。だからはづきっちが山梨に行った時にフンババが一本だたら化したのか。謎が解けた』『有識者同士は惹かれ合う』『チャットが知的になる~』
※変態機人一号『妖怪化したモンスターを屠る動画は私も見ました。下級のデーモンを凌ぐ上位モンスターを子供扱い。あなた方の姫は凄いです』
※もんじゃ『ああ、凄い。そしてメイユーも凄い。アバター技術を手足の延長線のごとく使うには高い認識力が必要だ。それを実際にあるもののように扱っている。素晴らしい技量だ』
なんかうちとメイユーのリスナー同士でエールを交わし合ってる!
で、お互いのコメント欄がウワーッと盛り上がっているではないか。
※『我会为您加油的!』『あひー加油!』『加油!!』
※『いけーメイユー!』『がんばれー!』『はづきっち棒立ちするなー!』
ひい、向こうは応援してくれるのに身内からダメ出しが!
「仕方ないなあ……」
メイユーがワンマンズアーミー化して、なんかミサイルとかアサルトライフルまで転送してきてぶっ放している派手な戦場。
そこにゴボウ一本ぶら下げた私が加わった。
「やっと来たわね。結構危ないところなんだから」
「へ? 圧倒的ではないか我が軍はとか思ってました……」
※『フラグやめろw』『どこでそんなミーム覚えたんだw』
実際、メイユーの攻撃では倒しきれない強力なモンスターがこっちに迫ってきている。
空を飛ぶ大きな首とか、一本足の巨人とか。
※『噂をすれば中国妖怪じゃん!』『飛頭蛮おる』
「頭でっかー! あひー、こっちにくるぅ」
空飛ぶ大きな首こと飛頭蛮は、空港の天井まで飛び上がり、一気に私たち目掛けて落ちてきた。
大きな口で私を一呑みにするつもりだ。
「たすけてー」
「ハヅキの実力、見せてもらうわ」
「たすけてくれないー」
メイユーは一本足の巨人とやり合うので手一杯らしい。
私は仕方ないので、ゴボウをぶんぶん振って迎え撃った。
飛頭蛮の歯にゴボウが当たる。
ゴボウがブオオオオオンッと音を立てて唸り、飛頭蛮の突撃を完全に受け止めたっぽい。
なんだなんだ……!?
『!?!?!?!』
飛頭蛮がなんか中国語で叫んでる。
※『ありえない! なんだこの力は!! と言ってるな』『中国語話者ニキ!!』『お前ら、なんでもいるな』
「はえー、お喋りしてたんですか。じゃあちょっと強いってこと?」
私はなんか、飛頭蛮の重みを全然感じないので普通に雑談してしまっている。
※『はづきっちがそっぽ見てお喋りしてるから、飛頭蛮めちゃくちゃ驚いてて草』『未体験の相手だろうな……。鍔迫り合いしながらよそ見する』『心ここにあらずがはづきっちの真髄だからな』『常在戦場ならぬ常不在戦場』
「褒められてないのは分かるぞお前らー!」
私がゴボウでコメント欄を指し示したら、その動きが飛頭蛮を受け流す感じになってしまったらしい。
でっかい首が真横にふっとばされて、床に激突した。
『~~~~~~!!』
瓦礫があちこちに突き刺さり、どす黒い血を流しながら再び浮かび上がる飛頭蛮。
で、怒りながら弾んでこっちに戻ってくるんだけど……。
そこにはまだ、突っ込むためにコメント欄を叩いている私のゴボウが!
飛頭蛮、自分から叩かれに来た感じになった。
ぺちぺちぺちっとゴボウで額を打たれて、
『ウ、ウグワーッ!?』
飛頭蛮が光になって粉砕された。
「あっ。ゴ、ゴボウは急に止まらないので。気をつけてくださーい」
※『俺たちがはづきっちに分からされているところへ突っ込んでくるとは愚かな』『訓練されたお前らでなければこのゴボウは受け止められない』
なんかリスナーが勝ち誇っている。
そして向こうでは、召喚した中国っぽい剣で一本足巨人を切り捨てているメイユーがいた。
つよーい。
※たこやき『圧倒的手数と汎用性、そして決める時は古来の武器を召喚する。システマティックで映える戦い方だなあ』いももち『はづきちゃんはいつもどおりで可愛いね!』
うーむ!
お互い、スタイルが対局過ぎる。
というか私のスタイルって何だ。
「やるわねハヅキ。最小の手数で上位モンスターを仕留めるなんて。それじゃあ、ここからは競争よ! どちらが先にダンジョンを作り出したデーモンを倒すか!」
「えっ、ゴボウ一本でワンマンズアーミーかつサイボーグな人と競争を!?」
※おこのみ『できらあ!』
「勝手に答えないで下さーい!?」
※『待て待てはづきっち。ゴボウ一本と思うからいけない』『もう一本買えばいいじゃないか』
「あ、なるほど……」
言われてみればその通りだ。
私はスパチャを使って、買い物をした。
なんか新たなモンスターが押し寄せてきてる前で、虚空からもう一本のゴボウを引き抜く。
※『ゴボウ二天一流キター!』『ゴボウが二本で戦力も二倍だな』
「私は一人なんですけど!」
メイユーはもう、空港の一階を殲滅に行ってしまった。
ガンガンにサイバーパンクな武器を召喚して使っては消して、消しては呼び出して、とやってる。
凄いなああれ。
私もああいうカッコいい戦い方がしたいものだ。
近寄るモンスターをゴボウでぺちぺちやりながら、
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』『ウグワーッ!』
私はエスカレーターを使って二階に上がっていった。
※『はづきっちが通ったところに道ができるな』『モンスターの数半端ねえのに』『これ、何気に国のインフラの危機だったんじゃないのか?』『はづきち、またとんでもないところに居合わせたか……』
「平和に生きたい」
※『またまた』『抜かしおる』
本気なんだが!
こうして二階に降り立った私。
明らかに中国妖怪っぽいのが何体も私を待ち受けている。
こ、これは当たりを引いてしまったのでは?
「えっと、気合を入れるためにバーチャルアップします」
※『体操着来た!』『いけーはづきっち!』『俺たちのボルテージが上がるぞ!』
「じゃ、じゃあ、バーチャルアップ!」
私のジャージが光に包まれ、変化する。
そして感じる……素足で冷たい床を踏んづけている感触。
「……!?」
※『う……』『うおおおおおおおおおおおお』『うおわあああああああ』『ぬおおおおおお』『水着だああああああ』『空港に水着の美少女があああああ』
「な、な、なんだってー!! バーチャルアップする先、設定間違えてるー!!」
私はさらに軽装になってしまったのだった……!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます