第56話 テスト後が忙しい伝説

 期末テストは無事終わった……。

 成績は、文系と暗記系は赤点を回避!

 理数系は普通にクラスでトップ。


 だけど、順位が張り出されたりするわけでもないから私の順位を誰も知るまい……。

 フフフフフ……。


 先生から呼ばれて、


「このままの成績で行けるなら、工学系の大学に推薦出せるね。二年からは理系でしょ?」


「あ、は、はい」


「あとは英語ね。悪くない成績だけど、もう少し伸ばせば二年の終わりには推薦確実いけるかも。あなた、内申悪くないし」


 よしよし……。

 文系を切り捨てられる……!


 私は内心でガッツポーズをした。

 だけどこれは、大学進学したら配信者活動は終了だな。

 絶対に実験とかで忙しくなるし。


 将来の計画を立てていたところで、兄からザッコで連絡があった。


『コラボカフェが始まった』


「は、早い!!」


『本番は八月だが、まずはテストケースでやってみる形だ。一店舗で展開されるから、これは広報を行って一週間。その後、店舗を変えてまたテストを行う』


「なるほどー」


『明後日からだ』


「は、早い!!」


 さらに本日からは委員長主催のクイズ大会の司会進行練習もあるし……。

 忙しい……忙しい……!!


 テスト休み期間なのに、テスト勉強期間よりも忙しい……!!


 私は最近通学で使うようになった自転車にまたがり、自宅までダッシュした。


「……あれ? あの走り方ってはづきっちに似てる……」


「まっさか」


 いかん!!

 思わぬところから身バレしそう。

 私はお上品に背筋を伸ばして自転車を走らせた。


 自宅に戻り、ザッコで委員長さんに連絡する。


「い、今から行きます!」


『はい! スタッフさんが迎えの車出しましたから、少ししたら到着すると思います!』


「あひー! ありがとうございます!」


『それと、しばらく配信はできなさそうですか? でしたらリスナーさんに話をしておいた方がいいかと思います』


「な、なるほどー!!」


 慌てて私は、ツブヤキッターで『テスト終わりました! これから新しい仕事で超忙しいです! あひー!』と呟いた。

 リスナーはとても物分りがいいので、『ええんやで』『がんばってや』『無理せんでな』『テスト終えられて偉い』『追試回避したんだな』などなど。


 ……親目線……?

 うちのリスナー、みんな私よりも年上っぽいし。


 今度、ショート動画でも上げておこう……。

 今月は全然配信できてないものね。


 まとめサイトでは、


【ついに引退!? 配信しないきら星はづき!】

【きら星はづき、いきなり配信しなくなっててワロタ】


 などなど不穏な情報が……。

 なお、そこコメントでも『リアル女子高生なんだから普通にテスト期間やろなあ』『配信する時間からも門限が何時頃かよく分かるもんな』『設定だとしてもここまで作り込んでくれてるとありがたい。推せる』とか。


 あったけえなあ……。

 もちろん、アンチみたいなのもいるけど。


『あの女本当に男性配信者に媚売ってて嫌い』『自分のこと可愛いと思ってるだろあいつ』『あひーって何だよ狙ってる』


 すまんアンチたちよ……。

 邪推される内容、全て思い当たらない……!


 ついにはコメント欄で、アンチと擁護勢が争い始めていた。

 あひー、私のために争うのはやめて!

 いや、本当にこの言葉のまんまの状況に自分がなるなんてねえ……。


 感慨にふけっていたら、外に車が到着したようだ。

 母が応対して、「スタッフさん来たわよー」と呼んだ。


 いかーん!

 私は慌てて制服を脱ぎ捨て、超高速でシャワーを浴びた。

 髪を亜音速で乾かして、Tシャツにホットパンツを着込んで、Aフォンをリュックに放り込み、ゴボウを突き刺して……。

 よし!


「お、お待たせしました!」


「いえいえ! お疲れ様です!」


 迎えに来たスタッフさんは、会ったことがある人だった。

 安心~!


「やっぱりゴボウ完備なんですね……」


「あっはい、やっぱりキャラとして……」


「プロですねー。それと、時間を守ってくれてありがたいです! じゃあ行きましょう!」


「はい!」


 今日の兄は、バンダースナッチ株式会社で仕事をしている。

 こっちは私が一人で頑張る……!


 兄妹二人だけでやるのは結構厳しくなってきたなあ!

 知らない人は苦手だけど、新しいスタッフを雇ったほうがいいんじゃないかな……。


 車が走り出すと、世間話などを振られる。


「最近活躍されてますね! 忙しいでしょう」


「あ、は、はい! 忙しいです!」


「斑鳩さんは凄い方ですけど、それでもはづきさんと二人だと大忙しですよねえ……。しかもデビューから三ヶ月でここまで……今登録者数って」


「え、えっと、えっと、70万人です! ちょっと緩やかになってきました!」


「いやあ、凄いですよそれ! 三ヶ月で70万人なんて、普通できっこないですからね! やっぱりはづきさんは色々持ってるなあ……」


「あ、あ、ありがとうございます」


 おお、私、世間話ができちゃってるじゃないか。

 コミュ強の仲間入りだな……フフフフフ。


 そんなくだらないことを考えていたら、あっという間に都心のスタジオです。

 委員長にキャプテンにピョンパルさん、そして久しぶりのバトラさん。


 錚々たるメンツに何故か私が加わってリハーサル!

 本番もすぐなのだった……!

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