第5話


 土塀に挟まれた道を抜け、暗くて細い道を抜け、バラック小屋の立ち並んだところを走り過ぎ、どこをどう走ったか、やがて廃ビルの密集地帯に出てきた。ビルとビルの間からは、明るい光がちらほらと見えていた。どうやらこのビルの群れを抜けた向こう側は大通りになっているらしく、明るい屋台が連なっているようだった。かすかに大通りをゆく者たちの声が聞こえてくる。

 鬼たちは時折罵声を飛ばしながら、蛇のようにしつこくエマ達を追ってきていた。なんとも執念深い奴らだ。とりあえずエマは一番近くで口を開けている路地に飛び込んだ。

「ここ……知ってる」

 突然少女が呟いた。

「知ってるのか?じゃあこれから、どこへ行けばいい!?」

 エマは前だけを見て聞いた。息は既に切れているし、激しく呼吸し続けたせいで喉も肺も焼けるように痛む。が、鬼は三人とも疲れた様子もなく追ってきている。体力無尽蔵なのだろうか。

「そこを左、曲がったら三つ目の角を右」

 言われた通りに角を曲がり、三つ目の路地にさしかかる。そこはとても暗かった。入ってくる光はほとんど遮断されてしまっていて、前方がよく見えない。竦みかけた足を自分の意思の力で無理矢理に動かす。

「もうすぐ階段がある。見つけたら、上って」

 右腕で少女の身体を落ちないように支え、左腕を突き出した。前が暗すぎて見えないのだから手に触れたものしか信用できない。これがもし明るいところで、誰かがエマの走る姿を見たとしたら間違いなく吹き出しただろう。腰を折り、片腕を突き出して危なっかしくよろよろと走る姿ほど滑稽なものはない。つくづく暗いところでよかったと思うエマであった。

 と、そこで自分自身に疑問を感じた。己の立ち居振る舞いの善し悪しを鑑みるほどに今の自分は落ち着いているのか。いまだに現実を受け止めきれていないはずの困惑しきった精神面は、しかし、度を越す非現実的な世界を前に『身の安全を確保する』という理性に押し殺されてしまったようである。そう思えば、たしかに当初ほどの戸惑い、焦りはもう無かった。

(────まじか)

 緊急事態を前にした人間は強いものである。

 左手が硬い棒状の物に触れた。慌てて急停止する。周辺をまさぐると、どうもその棒は角度がついているらしく、表面はまるで鉄が錆びたようにざらざらとしていた。あくまで憶測だが屋外用の階段の手すりそっくりだ。

 エマはおそるおそる脚を曲げ、踏み出してみた。と、足は曲げたまま、カツン、と靴底が固く平らな物に当たる音がした。エマは内心、ほくそ笑んだ。これはもう階段の踏み板と考えて良いだろう。

「……見つけた」

 これは鬼がエマたちを見つけたわけではなく、エマが階段を見つけて発した言葉だ。

 上り切ったそこは、完全に闇に沈んでいる。エマはその闇を睨み、一瞬だけ脚を竦ませた。本能的な恐怖がそうさせたのだ。どんなに超人的な動きができるエマとて人間なのだ、そして人間は情報が少ないことを極度に恐れる生き物だ。怪談話が恐ろしく感じるのは、その話の中で開示される情報の少なさゆえである。そしてそれは何も見えない暗闇においても同じである。エマが本能に従って行くのを躊躇したのもそれゆえだった。

 が、その時。

「待ちやがれゴラァ!!」

「どこ行きやがったあのクソガキ!!」

 鬼たちの罵声が響き渡ってきた。エマは身を震わせた。

「やば……」

 そこからの彼の行動は素早かった。本能を意思の力で押し殺した彼は、一段目と二段目に脚をかけることで段の高さを瞬時に把握し、転ぶことなく一息に駆け上がった。上り切ったそこは鼻先すら見えない闇だ。しかしエマはもう躊躇などしなかった。鬼に捕まるより、果敢にも闇に呑まれる方を選んだ。

 そんな勇気を出せた自分を、我ながら褒めてやりたい気分だ。

「ここは、もう使われていないマンションの二階の廊下」

 突然、今まで押し黙っていた少女が言った。

「一番奥の部屋まで行って。着いたら中に入ってドアを閉めて。部屋は、全てあなたの左側にある」

「わかった」

 あの滑稽走り再開だ。このマンションはそれなりの金持ちが建てたようで、廊下は長かった。走るうちに伸ばした左手が壁らしき物に触れた。そのままその手を左にスライドすると、細長い切れ込みのようなものを指に感じ、すぐにドアと壁の隙間だと悟った。取手はすぐに見つかった。鍵はもちろんのこと空いている。ドアを開けるなりカビ臭い匂いが鼻をついたが、構わず土足のまま侵入し、音が出ないよう丁寧にドアを閉めた。

「……、…………」

 しばらくの間、しゃべれなかった。暗闇に自分の激しい呼吸の音だけが反響する。何度も何度も息を吸って吐き出す。心臓が耳の中にあるようで、ドクドクといううるさい音が絶え間なく響くせいで耳の奥が痛かった。それだけではない。肺も喉も、鼻の奥までヒリヒリと痛んだ。口の中に血のような味さえ覚えた。普段アクロバットの方はよくやるからそちらの方での体力の使い方は慣れているが、こんなに走ったのは久しぶりであり、いつもは使わない体力・筋肉までふんだんに使わされた。エマはため息を吐いた。

「明日は筋肉痛か……」

 呟いて、ハッとする。そもそも自分に明日はあるのか?明日って来るのか?今この瞬間でさえ、鬼たちが追ってきているというのに。理由もなしに追ってくることはないだろうから、何か訳があるのだろう。まさか、自分たちの姿を見られたから殺す、とか?だとしたら随分と自分勝手な理由だ。少なくとも歓迎されているような気配はない。ミジンも。

「ここまで来れば、安全なのか?」

 今まで少女を背負いっぱなしだったことに気づき、肩から下ろしてやりながらエマは聞いた。少女はエマの足元に軽い音を立てて降り立った。

「分からない。ここしか隠れ場所を思いつくことが出来なかった……でも、時間稼ぎくらいにはなると思う。体力が戻り次第、逃げられるなら逃げる、それまでの仮の拠点。……着いてきて」

 感情のほぼこもっていない声だった。良く言えば、冷静。追われているにも関わらず、ひどく落ち着いている。エマの指先に柔らかいものがちょんと触れた。少女の手だった。彼女は手を伸ばし、エマの手をしっかり握ると彼の手を引いて歩き出した。温かく、小さな手だった。程なくして戸が開くような音がし、かすかな光が流れ込んできた。そして、その光とともに外の音までがはっきりと聞こえるようになった。

「ここは……」

 エマは呟いた。入ってくる光のおかげで部屋の中が見渡せる。ガランとした、何もない部屋だった。家具の破片のようなものが散乱し、床に雪のように積もったふわふわとした埃に埋まっている。その部屋にはなんと、大通りを見渡せる窓がついていた。マンションの中でも家賃の高い部屋だったのだろう。

「この部屋にいても安全とは言い切れない……鬼たちは鼻が効く。匂いをたどることができたら、この部屋もすぐに見つかってしまう」

 薄暗がりに沈んだ彼女が言った。エマは大通りに面している窓まで歩いて行って、窓枠に手をかけて下を見た。突然、目に流れ込んできた強い光に、エマは目を窄めた。

 見下ろす大通りは昼間のような明るさだった。まるで祭りだ。色鮮やかに飾り立てられた屋台や提灯が連なり、道々を大勢の者達が征く。いくつもの出店の強い光が、のっぺりとした夜空を焦がしていた。賑やかな談笑、それに時折混ざる喧騒、笛やら太鼓やらを使った音楽、それに合わせて響く歌声。食べ歩き用の料理を売っているところからは、白く大量の煙がもうもうと上がっていた。エマが下を覗くこの窓の下にも、大きな屋台が建てられていた。大きな布のようなものが屋根代わりにされており、その布が邪魔をして真下の屋台に何が売られているのかは分からなかった。が、独特な匂いが鼻をついた。何かを焼いた匂いだろうか?まるで肉を焼いたような匂いに混じって、香ばしいような苦っぽいような、どこか異国の香辛料を思わせる不思議な香りがした。

「……」

 しばし下を眺めていたエマはため息をついた。

 薄々感づいてはいたが、やはり、だ。賑やかな列をなす者達は皆、異形だった。人間など一人もおらず、歩くのがほとんどだったが、ある者は飛び、ある者は這い、ある者は透けたり現れたりしながら進んでいた。しかもその一人一人は(やはり数え方が一人、二人であっているのか不明だったが)馬面だったり、犬面だったり、鬼だったりした。それなのに人間よろしく二本足で歩いている。もはや人間の形を成していない者までいた。特に目を引いたのは、地面をゴロゴロと転がるように移動している毛玉の塊だった。どうも意思があるように感じるので異形の一種なのだろう。

 この世界に人間はいないのだろうか。いや、十人くらいこのパレードに混じっていると言われても、異形の者どもに完全に埋もれてしまって見つけられない。

 エマはこの光景を見て驚きはしたが、驚いたという感情を脳内に残しただけで、心は逆に静まり返っていた。最初に鬼を見た時からなんとなく分かっていた。

 この世界に、人間はいない。

「この世界に、人間はいない」

 少女が、エマが思っていたことと全く同じことを言った。エマは俯いた。どうして自分はここにきてしまったのだろう。数時間前まで、夕方前の廃ビル街にいた。そこで、無法の輩に絡まれて、傷ついたハイネを庇って自分も怪我を負った。そこで気を失い、気づいたらあの場所に倒れていた。何が起こったのかさっぱり分からない。分からないが、一つだけ分かっていることがある。

 この世界に於いて、自分は明らかに異質な者だ。それなら先ほどの鬼達の反応も納得できる。追ってきた定かな理由は分からないが、好意を向けられているとは思えなかったし、少女があの場にいなかったとしても追われていたのではないだろうか。異質なものを排除しようと行動する、それは人間においても異形にとっても変わらないことのようだ。異質な分子であるエマはいずれ、ほぼ確実に排除される。ましてや守ろうとしたその対象物であるハイネと、その仲間たちがいないのだから、エマがこの世界にとどまっていなければならない理由など一つもない。おとなしく、煮るなり焼くなり好きにされるしか残された道はないのだろう。────エマがその運命を素直に受け入れれば、の話ではあるが。

 そして、エマは冷静すぎた。全ての事実を知ってもなお、心は完全に凪いでしまっている。有り余る衝撃的な事実に晒されたからだろうか?なんとなく、そうではないと分かっていた。

「……人間がこの世界に堕ちて来るのも、珍しいことじゃない」

 少女が言う。あいも変わらず、感情を押し殺したような声だった。

「でも本当に、あなたは人間なの?」

「……、……」

 当たり前だ。あえて声には出さず、エマは少女を睨みつけた。エマの立っている方が光源に近く、逆光になってしまっているので彼女に彼の表情は見えなかったかもしれない。

「……あだ名は、白狼、だった」

 低い声で言う。あだ名がなんだ、ただ動物の名前が入っているだけじゃないか。しかし、何となく言わずにはいられなかった。そこでふと疑問が湧き起こる。では、目の前の彼女は何者なのだろう。ずっと人間だと思っていたが、まさか、違うのだろうか。

「お前は人間じゃないのか?」

 エマは聞いた。彼女が人間だったところで、喜ぶべきか安堵すべきか、それともこの世界に馴染みすぎている彼女に敵意を抱くか、半々の気持ちだった。対して彼女の答えは。

「わたしは、人間じゃない」

 そういうとおもむろに両手で前髪の一部ずつをつまみ上げた。それを見ていたエマは息を呑んだ。

 引っ張り上げられた前髪は、いや、今まで前髪の一部だと思っていたところは、獣の耳だったのだ。大きな耳。先の少し尖った、三角形の耳。さながら肉食獣のような。彼女こそ、まごうことなき人外であったのだ。

「そういえば……あなた、名前は?」

 少女は聞いた。

「ずっとあなた、と呼ぶわけにもいかない」

 エマから目を逸らしながらそう言う。確かにそうだ。夫婦でもないのに、女性が男性を「あなた」呼ばわりするのは少なからず抵抗があることなのではないか?漫画やアニメの世界ではないのだ。しかも年端もいかぬ少女だ。エマは素直に名前を名乗った。

「俺の名前は、エマだ。……タカギ・エマ。これが俺の本名だ」

 クチマ・エマではない。タカギこそが、エマの本当の苗字であった。

「……どうして、そんな風に本名を強調するの?」

 少女が不審そうにエマに尋ねた。エマはハッとした。理由を話すと言うことは、自分自身の生い立ちを話すことと同等だ。エマは、本当のことを言うべきか逡巡した。

「……これ、が、俺の本当の名前だから……」

「どういうこと?」

「学校じゃ、時々だけど、他の名前を名乗ることがあって……」

「……」

 エマを訝しむような、疑問の絡んだ視線が送られてくる。

「……俺さ、親がいないんだ」

 そう言うと、目線が自ずと下を向いてしまった。このことを言うと大体、皆、同情の視線を向けてくる。この話をすること自体に嫌悪など無いが、エマはそれらの視線を心地よいと思ったことなど一度もなかった。むしろ不快感だけを常に感じていた。親がいないからといって、決して寂しい思いをしたり、惨めな思いをしたりしたわけではないのに。

「親の顔は、見たこともない。だからもちろん、声も知らないしどんな顔してたのかも分からない。俺が、捨てられてたってことくらいしか……」

 言って、下唇を噛んだ。かつての言葉の羅列が、脳内で自動再生される。

 「辛かったね」「悲しかったでしょう」「かわいそうに」「酷い親だね」「ほら、こっちにおいで。温めてあげるよ」……何も、知らないくせに。何も僕のことを知らないくせに、どうしてそんな目で見るの?どうしてそんな言葉をかけるの?嬉しくないよ。むしろ……気持ち悪い。

 いつから一人称が「俺」になったのだろう。ただ単にかっこよかったから?いいや違う。そうやって強そうに見せかければ、そんな同情の視線なんてへっちゃらだと思ったから。「俺」って、なんだか強そうじゃないか?そう思った、そう思っていた。幼い、くだらない理由だ。

「親がいないから、気づいたら、施設に……孤児院に預けられてて。入所者はみんな、施設長の苗字を名乗ることになってて……でも俺は、自分の苗字を知ってた。施設長が、俺がまだ小さかった時、教えてくれたんだ」

 エマはまだ赤ん坊の時、おくるみに包まれたまま今の施設の前に置かれていたのだ。冬だった。施設長が見つけてくれなければ、エマはあの時あの場で凍え死んでいた。そのおくるみに、エマの本名が書かれたネームプレートが付けられていたのだ。

「施設長には感謝してるさ。俺の……いや、俺たちの父親、母親代わりに育ててくれたんだから。でも俺は、施設長の苗字を名乗ることがどうしても嫌だった」

 親不孝とでも言うのかな、これって。

 エマはボソリと呟いた。

「……そう、だったんだ」

 少女の静かな声が響いた。エマは彼女の顔を見た。視線と視線がぶつかる。無表情。同情の視線も、憐れむような視線も、逆に嘲るような視線も、彼女の大きな瞳からは送られてこなかった。

「あなたはあなたの名前を大事にすればいい。エマは、エマだもの」

「…………」

「あなたは、タカギ・エマ。世界に一人しかいない、何者にも代え難い尊い存在。……話してくれて、ありがとう」

 エマは目を開き、軽く息を吸い込んだ。

「……あ」

 初めてだ。初めて、自分の境遇を話しても嫌な気分にならなかった。それが、嬉しかった。彼女の無表情が、今は心地良い。エマは緩みかけた頬を引き締めた。

「お前の名前は?俺も、お前のことをずっとお前って呼びたくない」

 その後の、お前のことをよく知りもしないのにこうやって馴れ馴れしく呼ぶのは申し訳ないし、という言葉は呑み込んだ。なんだか恥ずかしかったからだ。少女はエマから視線を逸らさぬまま、

「ミチュリーシュカ」

 短く答えた。

「……ミチュリーシュカ」

「エマ」

 口を慣らすためにつぶやいただけだったが、ミチュリーシュカはエマの名をきちんと呼んだ。

「やっぱり、いい響きだね、エマ」

 ミチュリーシュカが無表情のうちに言う。しかし、その声にいくらか親しみが込められているように聞こえたので、お世辞で言ったわけではないのだろう。一方エマは、内心慌てていた。

 ミチュリーシュカとは、なんとも呼び慣れないものだ。思っていたよりも長い。言えないことはないが、毎度となると少し大変だ。危険を知らせる時など緊急事態の時に、名前をしっかり呼んでいる間にやられでもしたら元も子もない。もとよりそんなシチュエーションはこれっぽっちも望んでいないが。

「ミチュリーシュカ」

 エマはもう一度言った。なんとか噛まずに言えた。不甲斐ないが、やはり呼びづらい。名を呼ばれた彼女は「ん?」とでも言うようにその顔をエマに向けてくる。

「ミチュリーシュカ……あだ名、つけていいか?」

「え?」

「あだ名っていうか……ニックネーム、か?」

「……いいの?あなたが、わたしに?」

 嫌がられるかとも思ったが、ミチュリーシュカの反応は思ってもみないものだった。むしろ喜んでいる。その顔が、期待に満ちている。逆に期待させてしまっている、と言ったほうが良いかもしれない。エマはしばし考え込んだ。考えて、言った。

「ミチュリーシュカ……ミチル、なんてどう?」

 ただ単にミチュリーシュカに近い発音で、かつミチュリーシュカを彷彿とさせるような名前にしただけだ。呼びやすさも考慮した。カスってないと言われればそれまでだが。こちらのいわば勝手な都合でニックネームを付けただけなのに、しかし、彼女の反応はいっそう明るいものになった。

「ミチル……すごく良い、すごくかわいい。嬉しい……エマ、ありがとう」

 顔は無表情に近かったが、目は輝いていた。まるで、本当に欲しいものを手に入れた子供のように。実際、子供なのだが。

「わたしに名前をくれて、ありがとう」

「名前……?ミチルの名前は、ミチュリーシュカ、だろう?」

 エマは不審に思って言った。それに、ミチュリーシュカ改めミチルの、今までの少女にしては年相応の表情の豊かさがないことがエマは気になりはじめていた。

「ミチルは本名じゃなくて、ニックネーム……」

「ミチュリーシュカは、嫌い」

 エマの声に被せるように、語気を強めてミチルが言った。

「ミチュリーシュカは、わたしの父親がつけた名前。そんなの嫌だ」

 ミチルは顔を伏せた。その肩が震えている。

「その……エマには、失礼な話かもしれないけど……」

 エマは首を振った。

「大丈夫だよ……もしかして、追われていたことと何か関係があるのか?」

 ミチルは返事をすべきかどうか迷っていたようだが、やがて、頷いた。

「わたしは家から、父親のところから逃げてきた」

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