第21話
三内丸山遺跡。
縄文時代前期の集落跡だ。
他の遺跡とともに世界文化遺産に登録されている。
「まあ大昔の遺跡だ。俺が説明するより中で展示見た方が早いだろ(笑)」
「歴史とか好きなの?」
「歴史ってよりも不思議なことなんかが好きなんだ。縄文時代は、俺が学校で習った時よりも最近の研究だとずっと進んだ文化、人によっては縄文文明なんて呼ぶ人もいるくらいに進んでたってのが面白いね。それでもまだ謎は多いし」
「5900年前かぁ」
「エルフで長く生きてるのって何歳ぐらい?」
「それがさ、1600歳ちょっと。それ以上はいないの」
「寿命が無いならもっと年上がいるんじゃないのか?」
「んー、わたしが疑ってるだけなんだけどね、1600年以上前には、あの世界にエルフっていなかったんじゃないかなって」
「ほう、なんでそう思った?」
「一番生きてるエルフの記憶だと、空から大岩がいくつも降ってきて、大地震が起きた。気候の変動なんかも起きて、子供たちが集められ、数人の大人に先導されて逃げてきた。気候変動なんかが収まったら帰る予定で、そこで生活していた。数年おきに大人が様子を見に帰るんだけど、皆戻ってこない。そのうち最初からいた大人はいなくなって、避難してきた時に子供だった者だけが残った」
「岩が降ったって隕石のことかな?」
「隕石?岩ってほんとに降るの?」
「ああ、空のもっと上、宇宙って言うんだが、そこに浮いてる岩が落ちてくることはある。でもいくつもなんて滅多に無いし、それに加えて地震と気候変動なんて、大変なことだぞ」
「そう。世界の終わりってくらいのね」
「もしかして異世界に逃げてきた?」
「そうかもしれないって思ってる。実際人間側の記録にそんな災害は出てこないの。まともに残ってる記録って1200年前くらいまでってのもあるけどね。でもエルフにも故郷を探した人がいるけど、今も見つからない。わたしの両親が探検してたのも、目的の一つはそれだったし」
「異世界転移したらわかるんじゃないか?」
「そうなんだけどねー、やっぱり故郷が見つからないってのは異世界転移って思っちゃうよ」
「実は俺もエルフはそっちの世界出身じゃないんじゃないかって思ったんだよね」
「おー、ユウジも何か感じたことあるんだ?」
「エルフって自分で魔素つくれるだろ?そっちの世界ってそこら中に魔素あるだろ?」
「だから?」
「魔素がある世界で進化した生物なら、魔素をつくるようには進化しないんじゃないかな?進化するとすれば、体内に周囲の魔素をとりこんで貯めるように進化するんじゃないかなって思ってさ。もしかしたらエルフが住んでいた地域だけ魔素が少なくなった時期があったとかで、自前でつくるように進化したって可能性もあるけどな」
「なるほどねぇ。まだ何かあるって顔だよ(笑)」
「あるけどな、せっかくここ入ったのに、閉館時間までもう一時間無い。もったいないからその話は後にしようぜ(笑)」
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