第20話

「前に来た時、ここで写真撮ったの憶えてるよ」


辰子姫の像だ。


「美しい姫が永遠の命を欲し、それはかなったが竜になってしまったって伝説だな」


「わたしからすると死なないの普通なんだけどね」


「この世界には不老不死の種族はいないからな。昔から不老不死になろうとする人は多いんだよ。それがかなったって話は聞いたことないけどね」


「じゃあユウジが初の不老不死になるんだね」


「ファニアとずっと一緒にいたいからな」


「そんなふうに思ってくれるの、すごく嬉しいよ」


よく限りある命だからこそ尊いとか言われるがクソくらえだ。ならファニアの命は尊くないのかよ!ってことになるからな。


「でもファニアじゃなきゃ出来ないって、難しいのか?」


「全然。時々ヒールかけるだけだもん」


「それだけ?それじゃああっちの世界ってみんな不老不死にならないか?」


「ヒールって結構魔力使うんだよ。だから普通は自信の魔力だけじゃ足りなくて、周囲の魔素も使うんだけど、それだと傷や病気を治すだけなのね?わたしは自分の魔力だけでヒールを発動できるんだけど、その場合、プラスαの効果があるって気がついたの」


「プラスα?」


「若返り。一度のヒールで半年くらい」


「魔法自体は同じなのに?」


「何が違うのかはまだわからないんだけど、動物で実験して確認した」


「他に自分の魔力だけでヒールを発動できる人っていたのか?」


「魔力量から察するに何人かはいるよ。でもわざわざ自分の魔力だけでヒールを発動させるってことは普通しないからね。周囲の魔素使った方が楽だもの。だから誰も気がついてないでしょうね」


「なんかファニアって普通やらないことばかりやってたみたいだな(笑)」


「そのおかげでいろんなことがわかったんだけどね。ユウジにも出会えたしー」


「そうだね。変な子でありがとう(笑)」


「言い方酷いー!」


ファニアが体をぶつけてくる。


「写真撮ろ?」


スマホを出すファニア。

像をバックに一枚。


「ユウジはもう少し笑顔の練習した方がいいかもね」


「やっぱりそう思う?」


「得意じゃなさそうかな?って思ってたよ。でも無理しないでちょっとずつでいいからね」


こんなことちゃんと言ってくれる奴ってコウたち以外いなかったな。

気を使ってるのかもしれないが、それが相手のためになるとは限らない。

少なくとも、今ファニアが言ってくれたのは嬉しかった。


「今まで自分の写真撮られることなんてほとんど無かったからさ」


「これからはいーっぱい撮るからね!ほらもう一枚!」


一枚目よりはマシな顔になったかな?




さて、この後はどうしよう?


俺って観光地とか全く興味が無いからな。


「次はどこに行くの?」


「そうだなあ・・・行ってみたい遺跡あるんだけど?」


「いいよ。それじゃ・・・の前にぃ、この車ってオープンカーって言うんでしょ?」


「そうだけど・・・開ける?」


「その方が気持ちよさそうだなぁって思って」


「耳、大丈夫?」


髪型乱れて耳が見えたらマズいかなと思って、今まで開けなかったのだ。

まあこの手の車はあまり風を巻き込まないような設計されてるんだけどね。


「心配してくれてたんだ。大丈夫だよ」


心配したのはそれだけじゃないんだけどな。

まあいいか・・・・



オープンにして走り出す。

なんでこの車にしたかってのは、マニュアル、スポーツ、そしてオープン。

どっちかって言えばバイクの方が好きだから、風を感じていたいからだ。

やっぱり開けると気持ちいい。



途中から高速使って青森方面へ。

開けるとやっぱり目立つんだよな、ファニアが。

だから開けなかったんだけどね。

自慢の彼女だけど、見せびらかす趣味は無いし。

まあしょうがないか。



青森はコウの会社の仕事で何度か行ってるが、いつも配送終わったらすぐ帰ってたから、あまり詳しくはない。

行ってみたいとこは何か所かあったのだが、今回は三内丸山遺跡へ向かう。

ちょっとだけ縄文時代に興味があったからなんだが・・・




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