第19話

最初の目的地は田沢湖にした。

中学の頃に同級生と旅行に行った場所だ。

矢巾でもう一度休憩し、盛岡で降りて下道。


ファニアは走ってる間も常に俺の手に触れていた。

頻繁にシフトチェンジするような場所でもないので好きにさせているが、そんなファニアがとてもかわいい。


高速を降りた後は一気に田沢湖まで走る。

車で来たのは初めてだけど、家から3時間ちょっとでついた。

レストハウスがあったので、そこで昼食にする。


「ユウジはどれにする?」


「そうだな・・・地鶏の親子丼」


「じゃあわたしも!」


「同じでいいの?」


「ユウジと同じのがいいの」


いちいちかわいいっすよファニア。


「あ、あとコイツ箸使えないのでスプーンお願いします」


「ありがとユウジ。日本人ってみんな箸使うの?」


「そうだな。まあ俺のはちゃんとした持ち方じゃないんだけどな。子供の頃両親がちゃんと教えなかったみたいでさ。大人になってから気が付いたけど、不便に感じてないからいいやって思って直してないんだ。」


「そうなの?全然わかんないけど。わたしもおぼえようかなあ?」


「じゃあ・・・・俺が教えたんじゃ変な癖付くから帰ってからな」


窓の外には田沢湖。

なかなかに眺めがいい席だ。


「きれいな湖だねぇ」


「日本の湖の中で一番深いんだ」


「そうなの?」


「確か400m以上あったはずだよ」


「ほえー」


「大昔の火山の火口って言われてる。でも実際のところハッキリしないみたい。火山だとして、湖分の土砂がどこに行ったのかわからないんだって。湖底に溶岩ドームがあるから火山に間違いは無さそうだけどね」


「今は全然そんな感じしないのにね」


そう言って湖を見るファニア。


「あとで車で一周しよう」


「来た事あるんだよね?その時はどうだった?」


「20年以上前だからね。綺麗なとこだったって記憶しかない」


「そう。子供の頃だもんね」


「ファニアは子供の頃のこと憶えてる?」


「わたしもあまり(笑) だって、ユウジよりもずーっと前だもの」


「エルフでもそうなのか?」


「大事なこと以外は忘れてっちゃうね」


「そんなもんだよな」


「ユウジとのことは大事だから忘れないけどね(笑)」


「俺だってそうさ。思い出にいっぱい写真撮っておこうな」


「いっぱいいっぱい思い出つくろうね!」


料理が運ばれてきた。


「おいしそー!」


「そうだな!いただきます」


「写真撮っておこうっと。ユウジ、こっち向いて」


撮られ慣れてないからどんな顔すりゃいいかわからん。


「はい、いくよー」


ファニアは日本人じゃないからチーズとは言わない。

まああれは俺も言わないけど。なんか変じゃない?


「じゃあ俺も。こっち向いて」


ファニアは何をやっても絵になる。

笑顔でこっちを見るファニア。かわいすぎだろ。


ファニアが来てから食事の時間が、いや時間もだな。楽しい。

一人で今日みたいに遠出したとしても、俺だけなら絶対コンビニだったもんな。

ファニアと一緒の楽しさを知ってしまうと、それは少し寂しいような気がする。



おいしい昼食の後は、また車を走らせる。


「ユウジ、タバコ吸っていいよ。わたし気にしないから」


「ああ、やめようと思ってさ。と言うかもうファニアが来てからずっと吸ってないけどね」


「いいの?」


「その分お金使わないで済むしな。何より俺がタバコの匂いさせてファニアとキスしたくない」


「んー!ユウジ・・」


「運転中だから抱きつくなよ!」


「ちぇっ。でもいちいちかわいいなぁ、ユウジは!」


「それ、俺がファニアに思ってることだぞ」


「わたしに?」


「一緒にいると、ファニアがかわいい瞬間がいっぱいあって抱きしめたくなるのを我慢してるんだ」


「我慢しないで抱きしめてくれていいのにぃ(笑)」


「そうすると抱きしめっぱなしになるから(笑) そのくらいしょっちゅう思ってる」


「じゃあ今度家で一日中抱き合って過ごそうか?」


「俺ほんとにやっちゃいそうで怖い(笑)」


「じゃあけってー!」


「マジでやるの?」


「帰ったらしよ?わたしが抱きつきたいから(笑) でも今は思い出作りだよ!そうだ、運転してるとこも撮っておかないと!」


「ファニアはどこでも抱きついてくるくせに(笑)」


「それだけでは全然足りないのですよ(笑)」

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