第17話
「そんな世界にいた割には、ファニアっていい子だよな?」
「いい子じゃないよ。わたしのせいで沢山の人が死んだし」
わたしの生まれた国って、戦争ばかりやってる国だったんだ。
それでもそこそこ強くて、国内に攻め込まれることって無くてね。
大人になると何年かは兵役につかなきゃならないけれど、それでも国内は殺伐とした感じは無かったね。
わたし、子供の頃から勉強が好きだったし、魔法の才能もあったんだ。
大人になったら国の役にたちたいってずっと思ってた。
自分が役に立つのは兵士としてじゃなく、魔法を使うことだろうなって思って、勉強して魔導士になったの。
そして国の魔道研究開発局ってところで、沢山の兵器を開発したり、魔法の強化や効率化の研究をしてた。
わたしたちが開発した兵器や魔法のおかげか、国は更に強くなって、他の国を併合して大きくなっていった。
兵器や魔法って、実際に現場で使用した結果を調べて、それを生かして次の開発につなげるの。
わたしたちが出ていくのは安全が確保されている場合だけなんだけどね。
それでいつものように調査をしていたんだ。
敵兵の死体なんて見慣れたもの。でも、その日そこにあったのは民間人の死体ばかりだった。
あとから知ったのは、軍が新兵器の威力や人体への影響を調べるために、小さな町を一つこの世から消し去ったってこと。
敵軍に使うのならまだ理解できても、実験で民間人に使うなんて許せなかった。
でもね、それを周囲の人に言っても誰もわかってくれなかった。
敵の人間が死のうがどうでもいい。
自国が良ければそれ以外はどうなろうが気にしない。
そんな人しかいなかった。
わたしは口を噤むしかなかった。
いかにわたしが大魔導士と呼ばれるくらい強い魔法を使えるとしても、一人で国に逆らえるはずもない。
反逆罪で死刑なんてごめんだしね。
出来ることは研究開発を遅らせるくらい。
その後、国はどんどん他国を併合していったの。
併合すればするほど、民間人の犠牲者は増えていった。
わたしが携わらなくても変わらなかったとは思うよ?
それでもそこに携わっているという事実に苛まれ続けた。
周囲に合わせながら、心はずっと独りだったんだ。
異世界転移も、逃げ出すための研究。
あの世界から逃げ出したかったんだよ。
そして同じ魂の話を見つけたの。
もし本当ならば、その人ならわかってくれるかもしれないって思ったんだ。
「そして出会ったのがあなただったってわけ。わたしは世界に絶望して、変える努力もしないで逃げ出してきたんだよ。ゴメンね、いい子じゃなくって」
「・・・ありがとうな、話してくれて」
「ちゃんとわたしのこと知ってほしかったからね。少し怖かったけど」
「怖いよな?俺もそうだったよ。嫌われるんじゃないかって」
「わたしが嫌うわけないじゃない」
「俺だって嫌うわけないだろ?ファニア・・・ありがとうな」
「ユウジ?」
「ファニアが逃げ出してくれたおかげで、俺は君に出会えたんだからね」
「ユウジ・・・・ユウジぃ・・・・」
「泣かないで。俺がもう独りにさせないから」
「ユウジ・・・ずっと・・・一緒にいてね?」
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