第16話

今日は朝からファニアが調べものしたいってことで、ノーパソでネット中。

なんだが・・・


「そのカッコするなって言ったろ?」


「家でならいいよねって言ったじゃん」


ファニア、こっち来た時の魔導士のローブを脱いだ格好なのだ。

まあいいか。俺しかいないから。


「じゃあ俺ちょっとコンビニ行ってくるけど、何か欲しいものあるか?」


「甘いお菓子買ってきてー」


「りょーかーい」


ファニアはまだ詳しくないので、買うものは俺におまかせだ。まだ好みがわからないので種類多めに買っていく。調べものって書くものあった方いいよな。多分使うだろうから、ノートとシャーペン、消しゴムも。


「ただいま。苦手なのあったら残していいからね。俺食べるから。あとこれ」


「ありがと!これは何?」


「ノートとシャープペン、消しゴム。何か書くものあった方いいかなと思って」


「わあ、ありがとう!ホントユウジって気が利くよね」


「使い方は・・・・」


使ってみせる。簡単だからすぐ覚えるだろう。


「太さが変わらないとか消せるとか、すごく便利!」


「あっちは羽ペンとインクって感じかな?」


「なんでわかるの?あ、昔はそうだったとか?」


「日本は違うけどな。他の国にあったんだよ。で?何調べてるの?」


「こっちのエルフのこと。なんであっちと名前が一緒なのかなって思って」


「『言霊』の翻訳じゃないの?」


「わたしも最初そう思ったんだけどね、違うの。単語も発音もエルフなんだよ」


「そうなのか。昔こっちに来たエルフがいたのかな?」


「起源を調べたら神話が元みたいなんだけどね。見た目とかも似てるし・・・まあいいや、これはついでに見てただけだから。休憩しよっと。お菓子ちょうだい!」


「それじゃあ・・・・これにすっか。シュークリームだ。中身出るから、力入れないで持つようにな。中身はクリームだよ」


「そのクリームがよくわかんないんだけど・・・あまーい!おいしいね!」


ファニアの喜ぶ顔を見られるだけで、俺も幸せな気分になる。


「それでこの後は何調べるの?」


「何って言うか、こっちのこともっといろいろと知っておきたいから、特に決めずに見ていこうって感じかな?」


「そうか。何かあったら声かけてくれ。車洗ってるから。お菓子置いとくぞ」


「わかった。ありがとうね、ユウジ!」


そういやまだファニアを俺の車に乗せてないなあ。今度ドライブにでも行こうかな?

そんなことを考えながら洗車してた。


洗車が終わって昼をちょっと過ぎたくらい。

まだ頑張ってるのかな?


「ファニア?お、すげえな、ずいぶんノートに書きこんでんじゃん」


「わたしって知りたい欲が強いんだろうね。やってて楽しいし」


「もうお昼だよ。食べたいものある?俺が何かつくるよ」


「チャーハンって出来る?お菓子食べてたから少なめで」


「おっけー、待っててな」


台所に行ったらネギが無かった。本格的なのじゃなくてもいいか。

ミックスベジタブルとベーコンでつくる。


「ゴメン、材料無くてチャーハンもどきになっちまった」


「おいしければいいよ。ありがとうね、ユウジ」


「いえいえ。何か面白いのあった?」


「んー、こっちの世界ってすごいなあって・・・」


「例えば?」


「国連?こんなのあっちには無いもん」


「役立たずって言われること多いけどな」


「それでも世界を良くしようと考えてる人はいるわけじゃない?無い世界から来たわたしとしては、あっちの世界よりも希望があるなって思うの。あっちは自国のことばかり・・・と言うか自分が良ければいいって人が多いんだよね」


「こっちだって似たようなものって気がするけどな」


「そんなことない。日本で地震があったとき、世界中が支援してくれたでしょ?それも日本に恩を売るためっていうのはあるんだろうけど、実際に現地で動いてた人の動画を見たら、少なくともその人たちは本気で助けようとしてるのがわかった。わたしそれ見て感動しちゃったもん」


「ああ、それは俺も思った」


「あっちじゃまず考えられないことなんだよ、そんなこと。だからね、わたしはこっちの世界がもっと好きになったよ」


「今戦争してる国もあるけどな」


「あっちは戦争してる国の方が多いんだよ」


「そんなに酷いのか?向こうは」


「そうだよ。だから力は無いかもしれないけれど、良くしようとする組織があって、現地で動く人たちが本気でやってるこの世界は、わたしにはとてもステキに思えるんだ」



そんな酷い世界で、よくこんなにいい子になったな、ファニアは。

もっとファニアのことを知りたい。

あっちじゃどんな生活してたんだろう?

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