第15話

夕食後


「俺、ガキの頃から、他人との付き合い方がよくわからなくってさ、友達とかあまりいないんだ。それでもそれなりにやれてたんだけど、高2の時、完全にクラスで浮いちゃって・・・」


高校に入ってコウと育美と同じクラスになった。1年の時はそれなりに普通だったと思う。けど2年に上がったときに俺だけ別のクラスになってしまった。


俺なりに話しかけてもうまくいかなくて、もともと感じてた他人とのズレをすごく感じてしまって、2学期からは不登校になってしまった。

俺が行っても迷惑なだけ。だったらもうこの先一人でいいやって。


他人とかかわるのが苦痛でまともに就職なんて出来そうも無かったから、他人と関わることがなるべく少ないバイトを選んで金貯めて、株やFXなんかの勉強を始めた。


一度だけ自殺未遂した。酒飲んで橋から飛び降りた。夜中、真っ暗で下が見えなくって、飛んだ場所が低いとこだったんだ。草地に落ちて腰を痛めた程度で済んだ。誰にも知られず、今まで話したのはコウと育美だけだったな。

その後は死ぬことは考えなくなった。


結局高校は退学した。その後はバイトと投資の勉強だけやってた。


時々コウと育美が来た。はじめはほっといてくれって相手にしなかったんだけど、それでもあいつら来るもんだからさ、部屋にあげて話するようになって。そのうち他の奴もつれてきたりして。


話の内容なんて普通のことだよ。この前こんなことがあったとか、今度出る誰の何て曲がいいとか。ようするに変わらず接してくれたんだ。俺みたいな奴に。


卒業して、コウは運送会社で働いてた。同じとこで育美は事務。

26の時かな?自分で会社起こしたのは。


俺は22か3くらいにあいつらのおかげで少しはマシになって、バイクと車の免許とって一人で出かけるようになった。バイクはコウの影響だな。そのうちコウやコウの仲間とツーリング行くようになった。投資を始めたのもこのころ。最初は増えなくってさ(笑) でも勉強のおかげか、大きく減ることも無かったな。


バイクに乗ってる連中とは違和感なく接することが出来た。あいつ等もズレてるってわけじゃなくって、他人なんだから違って当たり前じゃんって考えてる連中ばかりだったから、俺みたいなのでも一緒にいれたんだろうな。こいつらに出会えたことで、他人と接する恐怖が無くなった。まあそれでも30過ぎまではかかったけどね。


親父とおふくろには心配かけっぱなしだった。親孝行する前に死んじまったって後悔はあるよ。でも今更どうしようもないよな。


「まあこんな感じだ。コウと育美がいなかったら、俺は今も他人と関わることなく、一人で引きこもってたんだと思うよ。」


ファニアを見ると涙目になってる。


「ファニアが泣くこっちゃねえだろ?(笑) それに今はもう大丈夫だからさ」


そう言って頭を撫でてやる。


「あなたが苦しいときにそばにいれなくてごめんね」


「しょうがないだろ?知り合う前だもん」


「それでも・・・いれなかったのが悔しい」


「いいって(笑) この先、もし苦しいことがあったら、その時は頼む」


そう言って抱きしめた。


「・・・それじゃ辛気臭え話は終わり。酒飲もうか」


「今日はあなたと同じお酒が飲みたいな」


「今日はお姫様抱っこできる程度にしておかないとな。その分ファニアに飲んでもらおう」


「醜態はさらさないよぉ(笑)」


「いいよ、そんなの。俺がお姫様抱っこしたいだけだから」


「その前にお風呂入るね。お酒飲んだら入るのおっくうになっちゃう」


「たまには一緒に入ろうか?」


「えー?・・・・・・いいよぉ?ちょっと恥ずかしいけど」


「それじゃあ風呂までお運びいたします、姫(笑)」


「なんかいつもより照れくさいなぁ・・・・」


ファニアを抱き上げる。


「そのうちファニアのことももっと教えて?」


「そうだね。わたしのことも、もっと知ってほしい」


「男の話聞かないで済みそうなのは救いだな(笑)」


「あなただって女っけ無かったじゃない(笑)」


「そりゃあファニアに出会うためだけに生まれたからね」


「わたしだってあなたと結ばれるために生まれたのよ(笑)」


「君とは結ばれる運命だったんだね」


「ユウジ、そうだけどね、セリフ似合わないから(爆笑)」



こんなバカ話でもいいから、ずっと笑いあえる二人でいたいな。

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