第7話
昼飯はご飯が残ってたので、俺の家でチャーハンと呼ばれていたものにする。
世の中のチャーハンを知り、家で食べてるのがチャーハンじゃないことを知った。それでも好きなのでたまに食べたくなる。
作り方は簡単。ご飯をしょうゆで炒めて、チーズを好きな量入れ、溶けたら完成。
「そんなわけで、この食べ物に名前は無い。おふくろがチャーハンと偽って俺に食べさせてたんだが、不味くはないだろ?」
「おいしい!すっごく簡単なのにね」
「食事作るのが面倒な時なんかよく食べてるよ。もっと面倒になるとインスタント麺とかカップ麺とかになる」
「それってどんなの?」
「お湯を入れて3分で出来上がり」
「へー、食べてみたい!」
「じゃあ晩飯で食ってみるか?」
「うん!楽しみー」
「普通はあまり喜ぶような食べ物じゃないんだけどな(笑)」
「だってこっちの世界って何食べても美味しいんだもん。生卵まで!」
「こっちの世界って言うより、日本の食べ物がおいしいみたいだよ。俺は外国に行った事無いからよくわからないんだけど」
「そうなんだ。いい国に転移出来て良かった!ユウジもいるしね!」
「そーゆーの照れくさいからヤメテクダサイ」
「そーゆーとこかわいいからやっちゃうの(笑)」
ホントにこのエルフは!
でもからかわれるのがイヤじゃない俺もいるんだよな。
とりあえず明日の朝は納豆だ。
「それでは午後はスマホを買いに行こうと思います」
「スマホって朝にユウジが友達と話すのに使ってた?」
「そうそう。あんな風に直接話したり、文字や絵なんかを送ったりできるんだ。他にもパソコンみたいにいろいろできるぞ」
「へー、こっちの世界って面白いものいっぱいあるね!ほんと来て良かった!」
「帰れなくなってるけどな(笑)」
「帰れる気無いからずっと面倒みてね!」
「不老不死のエルフの面倒見るなんて金続かねーよ(笑)」
そう言いながら面倒見るつもりになってるんだけどね。
てか俺の方がずっと一緒にいたいって思ってる。コウの言うように惚れてんだろか?
「へー、スマホもいっぱい種類あるんだね」
「俺のも少し前のだから機種変更、新しいのに買い替えるわ。ファニアはどんなのが・・・って言ってもわかんないよな」
「ユウジにお任せ!」
「じゃあ同じので色違いにしよう。同じだと教えやすいしな」
俺はいつもの黒。ファニアは赤を選んだ。
帰宅して設定。昔よりは楽になったけど、それでも面倒なことに変わりはない。
「ねえ、カメラって何?」
「そっか、それも教えないとな。他と同じようにタップして起動。ここのレンズで見えてるのが画面に映ってるんだ。で、ここをタップすると・・・」
「えーおもしろーい!なんでも絵になっちゃうの?」
「ここをこうすると・・・」
「すごい!動いてる」
「とった写真は誰かに送ったり、あと待ち受け画面なんかに使えるんだ」
「ユウジ、一緒に撮ろ!」
「いいよ。こうすると画面で見ながら撮れるぞ」
「撮るよー!ユウジ表情かたいー!」
「そうか?いつもこんなもんじゃね?」
「それともっとくっつく!!」
「ちょ!くっつきすぎ!」
パシャッ
困り顔の俺の頬にピッタリ頬をくっつけてニッコニコのファニア。
「うん、ボツだな」
「えー、いいと思うけど?」
「・・・・・人には見せるなよ?」
消せとは言えない俺だった。
あとで送ってもらおう。
「すっげー今更なこと聞いていいか?」
「いいよー。何かな?」
「ファニアってなんで日本語話せるん?」
「話してないよ?」
「は?」
「『言玉』って魔道具を使ってるの」
そう言ってショートパンツのポケットから出したのはビー玉みたいな石。
「これを持ってると、相手の話す言葉がわかるし、相手にも自分の言葉が伝わるの。知らない文字でも読めちゃうんだよ」
「魔法すげえな。こんなもの作れるのかよ」
「作れないよ」
「どういうこと?」
「今では作り方は誰も知らないんだ。でも古代の遺跡でよく出てくるの。昔はありふれた物だったんだろうね、もう沢山!だからあっちではだれでも持ってるんだよ。おかげであっちの世界は言葉が通じないってことが無いの」
「こんな小さい物でそんなことが可能とはねえ・・・」
「前にユウジの考えてること読んだでしょ?あの魔法に似た波動が常に出てるってことはわかってるんだけど、それ以外は全然。割ってみてもただの石だし」
「エルフ以外でも使える?」
「あっちだと誰でも。こっちの人はどうだろうね?やってみる?」
「やるやる!」
「わたしが玉を置いて話してみるね。その後ユウジが持ったらもう一度話すから」
ファニアがテーブルに玉を置く。
「ファンブリュッテ、エムナスフェミネース、ユウジ」
ほんとに知らない言葉話してる。面白いことに声は同じなんだな。
それじゃ玉を持って・・・・
「どう?わたしの話してることわかる?」
「すげえ、持っただけで聞き取れるようになった!」
「こっちの人でも大丈夫みたいね」
「ところで玉置いた時ってなんて言ってたの?」
「・・・・・ナイショ」
「なんで赤くなってんだよ?」
「ナイショ!いいでしょ、もう・・・」
どうせ聞き取れてないんだから適当にごまかせばいいのに。
でもほんとに何喋ってたんだろう?
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