第6話

「そんなわけでさ、仕事しばらく受けらんねえんだわ」


朝から電話。相手はたまに仕事を頼んでくる友人コウ、宮村幸之助だ。


「別にかまわんぞ。頼んでるのはオメーの顔見るためみてえなもんだからな(笑)」


「わりーな」


「いいって。そんで?その同居する女の子ってかわいいのか?」


「超絶にかわいい。手ぇ出すなよ?」


「カミさんいるのに出すかよ(笑) でも一度会ってみてえな、オマエのカミさんになるかもしれんのだろ?」


「はあ?誰もそんなことはひとっことも言ってないんだが?」


「オマエの話し方でわかるっての!何年付き合ってると思ってんだ?オマエその子に惚れてんだろ?」


「アホか!会ったばかりでまだお互いのこと何も知らねーんだぞ?」


「誰かを好きになるのに時間なんて関係ねえよ。俺がそうだったからな(笑)」


そうだった。コイツは今のカミさんと、出会って三日で付き合い始めたんだった。

コウとカミさんの育美と俺は高校の同級生だ。


「一緒にすんな!」


「育美ー!ユウジにも春が来たみたいだぞ!」


育美にまでからかわれたんじゃたまらんわ!


「じゃあな!ちゃんと仕事しろよコウ」


「おう!近いうちに顔出すわ」


「はぁ・・・・いいけど前もって連絡しろよ?」


耳くらい隠しておかねーとだからな。


「わかってるって。じゃあな」


そう言いながら突然来たりする奴なんだよなあ。

でも育美も一緒に来そうだし、なら大丈夫か?


「おはよ!友達?楽しそうだったね、ユウジ」


「おはよー。って今のがどうやりゃ楽しそうに見えんだよ?」


「んー、なんて言うかなあ?ユウジがイヤだって気を発してなかったから?」


「ファニアって気とかもわかるの?」


「なんとなくって程度だけどね」


「そっか。でさ、今の友達、そのうち家に来るかもしれないから、その時は耳隠してくれな?」


「友達にも内緒にするの?」


「信用出来る奴だけど、異世界から来たエルフって話は、信じてくれるかわからん」


「その友達は内緒にしてくれる?」


「それは大丈夫だ。付き合い長いからどんな奴かよく知ってる」


「じゃあ話してみようよ。わたしもユウジ以外の友達欲しいし」


「まあエルフってのを信じてくれなくても、あまり大っぴらに出来ないのはわかってくれるだろ。で、ベッドどうだった?ちゃんと眠れた?」


「眠れたー!ユウジが添い寝してくれたらもっとよかったんだけどね(笑)」


またこのエルフは・・・


「出会ったばかりの男にそーゆーこと言わないの!変な気起こされたら困るだろ?」


「出会ったばかりとか関係ないよ。ユウジだから言ってるんだけどなあ」


「ハイハイ、料理覚えるんだろ?一緒に朝飯つくろ?」


「ほんとだぞー?」


「わかったから料理・・・」


「顔赤いよ」


「オマッ!!」


「ゴメンゴメン、じゃあ料理おしえて?」


ヤバいなあ、余裕あるフリも出来なくなってきた。

かわいすぎるんよ、このエルフ。




今朝は豆腐とわかめの味噌汁を教えた。


「ユウジって料理上手だね」


「そんなに難しくねーだろ、これ(笑) まあ25の時に親父とおふくろが死んじまって、それ以来一人暮らしだからな。それに料理つくるの結構好きだし」


昨日はファニアのベッドを組み立てるのに時間かかったのでピザ頼んだから、ちゃんと料理したのはファニアが来てから初めてだった。

なおファニアは箸使えないからスプーン。


「ゆうべのピザも美味しかったけど、味噌汁?これもおいしい!でも全然違う感じだね?」


「ああ、ピザは別の国の料理なんだ。これは日本の料理」


「そうなんだね。それでこれ・・・・」


「生卵だねえ(笑)」


「ほんとに食べるの?これ」


「無理に食べなくていいぞ。俺が今食べるから、生でも大丈夫なのだけわかってもらえりゃいいさ」


そう言ってご飯に生卵、しょうゆをドバッと。俺はしょうゆ多めが好きなのだ。


「これを混ぜて、と・・・うん、うまい!」


ファニアはうえぇーって顔してる。

コイツ、こんな顔でもかわいいのは反則だと思う。


「うー・・・食べてみる」


「ほんとに無理しなくていいんだぞ?」


「がんばる」


俺と同じようにして、ぎゅっと目を閉じて一口。


「あ、おいしい!でもおなか壊さないかな?」


「そんなもの食わせるわけないだろ?(笑)」


「そうだよね!」


「明日は納豆という食べ物を教えよう(笑)」


「(笑)って何よ(笑)って?」


「楽しみにしとけって(笑)」


「また変な食べ物でしょ?」


「多少クセはあるけどね(笑)」


「なんで全部最後に(笑)なのよ?」


「無理に食べさせたりはしないからさ、こんなのもあるってことだけ覚えておいてもらえればいいよ。ほら、食っちまおうぜ」


「不安だなぁ・・・」


いつもからかわれてばかりなので、食事で仕返しをする俺だった。




「それでは今日はパソコンを教えようと思う。これです」


普段はデスクトップを使ってるんだが、使ってないノートパソコンがあったので、ファニアに使い方を教えて活用してもらおうと思ったのだ。

これでこっちの世界のことを知ってもらおうってわけ。


「これは何をするものなの?」


「いろいろ。見た方がわかるだろうからやってみせるよ」


そう言って、音楽かけたり、絵を描いてみたり、それとおそらく一番使うであろうインターネット。


「こっちの世界はすごいんだね!こんな便利なものが普通の家で使えちゃうんだ!」


「俺もこっちの世界の事教えるけど、ずっとつきっきりってわけにいかないからね。これ使ってファニアが知りたいことを調べてもらおうってわけ。これは使ってないからファニアにあげるよ」


「いいの?」


「俺のは別にあるからね。気にしないでいいぞ」


「ありがとーユウジ!大事に使うね。あ、そうだ!ちょっと待ってて」


そう言って自分の部屋に行くファニア。

なんだろ?


魔導士のローブを着て戻ってきた。あ、もしかして・・・


「昨日は結局見せられなかったからねー。この下はこんな感じなんだよ」


そう言ってローブの前を広げて見せるファニアさん。

それだと夜道でコートの前を広げる変態みたいだぞファニアさん。

そして実際、ファニアが着てた服の面積はすっごく少ない。

下はショートパンツだからいいとして、上はマイクロビキニみたいな感じ。

エロすぎですファニアさん!


「おまっ!それっ!!」


うまく言葉にならん俺。


「どうユウジ?興奮しちゃう?(笑)」


「前閉めろバカ!」


「はーい」


「はあー・・・あっちじゃどうだか知らんけど、こっちじゃ着るなよ、それ」


「なんで?」


「変な男がよってくるだろ」


「家の中ならいいよね」


「なんでだよ!」


「ユウジだったらよってきてもいいもん」


「またオマエはそーゆーことを・・・」


俺だって男なんだが?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る