第2話
「本当にエルフ?」
「先ほどから言っている通り、わたしは正真正銘のエルフです」
「それが何故こんなところに?」
「魔術について研究していくうちに、自分が住んでいる他にも世界があるのでは?という疑問が出てきたんです。その世界、異世界について研究していくと、いくつもの異世界にも人がいるらしいとわかってきて・・・それを知ってしまったら、わたしはどうしても行ってみたくなって、今ここにいる、というわけなんです。」
後先考えなかったのかな、この人・・・じゃなくエルフ。
「あー、そうなんだ・・・帰れるの?」
「魔法には魔素というものが必要になります。先ほどのような心を読んだり、火や氷をつくりだす程度なら、わたしの体内にある器官で作られる魔素で十分なのですが、異世界に転移するほどの大魔法となると、大量の魔素を消費します。元の世界と違って、この世界には魔素が無いようですので、すぐには帰れませんね」
言ってる割には悲壮感が無い。何とか出来る自信があるってことなんだろうな。
「じゃあどうするの?」
「帰る方法を見つけるか、こちらにずっと住むか。正直に言いますと、あまり帰りたくはないです」
「帰りたくないって・・・何かから逃げてるってこと?」
「逃げ出したと言えばそうかもしれません。あちらの世界がイヤになったんです」
「犯罪を犯して逃げて来たってわけじゃないんだね?」
「そのようなことは誓ってありませんので安心してください」
「それで?こっちの世界に知り合いとかいるわけもないよね?これからどうするの?」
「先ほどお会いしたばかりの方に頼むのも恐縮なのですが、しばらくの間ユウジさんの家に住まわせていただけないでしょうか?」
俺は一軒家に一人暮らしだ。
両親は既に他界して部屋は余っている。
異世界や魔法には興味がある。
何より彼女、ものすごく美人(笑)
だが信用しちまっていいのだろうか?
「掃除や洗濯、料理など、家事は何でもやりますのでお願いします!」
悩んだが、困っている人・・・いやエルフを見捨てる気にはなれなかった。
「わかった!ウチに来ていいよ。幸い俺一人暮らしで使ってない部屋もあるからね」
「ありがとうございます!家事、がんばりますね!」
「それは別に押し付けるつもりは無いよ。俺もやるから。それよりもそちらの世界のことや、魔法について、いろいろ話聞いてみたいな」
「勿論かまいませんよ。本当にありがとうございます。良かった、最初に出会った人がいい人で」
「自分でいい人とは思わないけど、こっちの世界にも悪人はいるからね。出会ったのが悪人じゃなくて良かったね。
で、俺の家、ここから遠いんだよ。時間かかるから、すぐ出発しよう。眠かったら寝てていいからね」
「大丈夫です。あちらは昼間だったので」
「そっか。話し相手がいた方が眠くならずにすむから、俺としてもありがたいよ」
「そんでさ、君、こっちの世界で身分の証明が出来ないだろ?それだと警察・・・警察はわかる?」
「ごめんなさい、わかりません」
「そちらの世界で治安を守っていた組織は?」
「騎士団ですね。そのような組織ですか?」
「そうだね。君がその警察に見つかった場合、身分証明が出来なくて面倒なことになる。まぁ殺されたりはしないけど」
「それでは姿を見えなくしておいた方がいいですか?」
「そんな魔法もあるの?」
「こちらの世界では魔素が無いので、夜ならば大丈夫だと思いますが、昼間みたいに光が強いと、完全には無理でしょうね。姿が薄くなる程度でしょう」
「滅多に無いことだけど、もしヤバそうなら俺が言うから姿見えなくして。今はいいよ。姿見えないと話しづらいから(笑)」
「(笑) わかりました。」
「ただ、ずっと住むのならその辺もちゃんとしなきゃいけないと思う。どうすればいいかはあとで考えるとして、しばらくはこっちの世界に慣れることからかな。大丈夫。ちゃんと面倒見るから」
「すいません、面倒なことに巻き込んでしまったみたいで」
「気にしなくていいよ」
幸い警察に止められることもなく、早朝に家に着いた。めっちゃ眠い!
「申し訳ないけど、昨日からずっと仕事で車走らせてたから眠いんだ。話は少し寝た後でもいいかな?」
「勿論です。わたしは起きてますね。こちらの世界の時間に合わせないと。何かこちらの世界のことがわかる本とかありませんか?」
「本ならたくさんあるけれど、こっちの事わかるようなのあるかなあ?
ああ、TVなんかいいんじゃないかな?」
「それはどんなものなのですか?」
「これだよ」
そう言ってスイッチを入れる。
「すごいですね!どんな仕組みなんだろう?」
「仕組みはわからないな。使い方だけ。これを使うんだ」
リモコンで使い方を教える。
「そうだ!トイレと風呂も教えておかないとね。おなか空いたら困るだろうから台所も」
「お風呂あるんですか!あっちではお金持ちの家にしかないのに」
「こっちじゃ無い家の方が珍しいよ。風呂は入りたかったら入っていいからね。台所も好きに使っていい」
彼女に台所などの使い方を教えた。
普段から綺麗にしておいて良かったと思った(笑)
使い方、紙に書いた方がいいかと思ったら大丈夫だって。
彼女、記憶力いいんだな。
「じゃあ少し寝させてもらうよ。何か困ったら遠慮しないで起こしてくれていいからね」
眠気が限界まできていた俺は、そう言って昼まで眠ることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます