「わたくしはあんまり自分の空洞がこたえるので」
この一行目から目を奪われました。
高い地点から、存在しない風景を眺めている。
それは存在しないからこそ美しく見える。
嘘だと知っていながら美しいものと思いこもうとする。
でもその幻想は破れざるを得ない。
結局は空洞の充たされない自分に帰らざるを得ない。
そのことを知っているしなやかな剄さ(つよさ)が、余計な言葉を排した簡潔な詩行に昇華していると思います。
これは声に出して読み、一つ一つの言葉が紡ぐ風景が心の底に沈んでいくのを眺めるようにして味わう作品です。